私だけのヒーロー……ではいてほしくない、あの人。
あの人は何故、人気がないんだろう?
分かってる。
人気がどうのなんて、あの人には何も関係ない。
人気がなかったからって、あの人のカッコ良さは一切揺るがない。
私は知っている。あの人がどれだけカッコ良かったかを。
親友を助ける為に一人で悩み苦しみ、世界に抗ってでもその意思を貫き続けた愚直さを。
友達と恋人に裏切られ、力の差を思い知らされ、それでも仲間を支えて頑張っていた優しさを。
現実と理想の狭間であがき、駄目な自分を捨てようとして抗い続けた苦悩を。
通りすがりの人間であっても迷わず手を差し伸べ、どこまでも守る為に戦い続ける勇気を。
底抜けに明るい性格の中に隠された、とてつもない根性を。
私は知っている。
でも――
みんなは知らない。
同じようにあの人を見ているはずなのに、知らない。
みんなにはあの人の何が見えてるの?
みんなにはあの人のカッコ良さ、何も見えていないの?
みんなはこう言う。
「あんな地味なの、どこがいいの?」
「聖人君子なだけじゃ、つまんないよ」
「キャラが薄い」
「顔が無理」
こういう人もいる。
「あなただけが彼の良さを知っているなら、それはそれでいいじゃない。
彼は、あなただけのヒーローってことなんだから」
そういう考え方も、確かにある。
あの人の良さは、世界中で私しか知らない。
それは、私が彼を独占出来るということでもある。
でも――
それは、自分の中で何かが許せない。
多分私は、あの人の良さを無視し続ける世界が許せないんだ。
あの人を無視し続け、いじめっ子のクズや顔がいいだけの悪魔がもてはやされる世界なんて、滅んでしまえばいいとさえ思う。
でも多分、向こうも同じように思ってるんだよね。
あのいじめっ子の良さを知らないなんて、私は人生を半分損してるって。
いじめっ子の良さなんて、知りたくもないけれど。
いつも思う。
あの人のカッコ良さ、私しか知らないなんて――もったいないよ。
あの人の良さが分からないのなら、人生を半分以上損しているのは、きっとみんなの方だからね。