世界の魔王たちの反応①
「俺たちは何を見せられているのだ――」
旧南部魔王国のルーミートたちが、ついに動く――
魔王国が滅んでから一度もまとまった動きを見せなかった《怠惰之魔王たる》魔王ラララから送られてきた映像器――要はビデオ――はその内容を何度も繰り返し表示し続けていた。
集まった四天王のうち3人が、あぁだこうだと議論しているが、一向に収まる気配は無い。
何しろ魔王ラララによる世界征服宣言である。議論が止まる方がおかしいだろう。
ちなみに、その四天王とは――
・馬の娘のような被り物を被り、カモシカのような足はまさに容姿端麗――《趙高由来》四天王が一人、馬鹿野郎。
・こだわりの素材がいきている。みんな元気に成るごはんにしてしまえ――《中心の卵》四天王が一人、ミドルエッグ。
・そのルビを振ることさえ憚られし、恐れを知らぬ黒き鼠の魔獣――《魔獣先生》四天王が一人、三つ鬼鼠。
――全員がボケキャラである。
そして、四天王なのになぜか3人であった。
「これは――、ついにラララさまが世界を征服しようと動き始めたのでは? 世界征服、人類抹殺はまさに我々の悲願!」
「だがこれはどういうことだ? 勇者と手を結んでいる? 勇者はニンゲンではないのか?」
「そうだそうだ。世の中は鼠が支配するべきだ」
「いや、そこは馬がッ いや鹿がッ」
そんな四天王を制するのはもちろんこの人。
四天王を制御する上司たるは魔王。
美しき麗人、≪暴食之魔王たる魔王≫ベルである。
「まぁ、まて――」
その一言で黙る3人の四天王たち。
艶めかしい紫のドレスを身に纏う彼女は、その映像を見ながら語るのだった。
「うむ。ラララちゃんが、男と共に世界征服宣言とはな――。男と共にだって! 男と! これは負けられないわ! 戦争よ!」
そして魔王ベルは四天王それぞれに宣言する。
「《魔獣先生》四天王が一人、《趙高由来》四天王が一人、馬鹿野郎!」
「はっ!」
「貴様は聖ピーチ魔王国に行き、駆逐級飛空艦、奇城 茨魏魏ヶ島を取り返してこい!」
馬鹿野郎は頷いた。
その馬の耳には念仏である。
「《魔獣先生》四天王が一人、三つ鬼鼠」
「はっ!」
「貴様は茨魏魏ヶ島に括りつける、タケをT字型に組んで頭にぶっさして回す、ヘリコプターを製造するのだ!」
三つ鬼はしかし、それの意味が分からなかった。
「ヘリコプターなど作ってなんの意味があるのでしょうか?」
「もちろん、人類侵攻の狼煙といえば『へりーのご来光』であろう! 有名な話ではないか。『へりーのご来光』などとすれば、日本に関連するものは≪どくしゃー≫からのお喜びの補正が付くのだ! すぐさまやれ!」
一体、《どくしゃー》とは何者なのだろうか?
三つ鬼はなぜもちろん、なのかとも疑問に思いつつも頷いた。
その頭が黒く光る。
「そして《中心の卵》四天王が一人、ミドルエッグ!!」
「ははっ!」
「貴様はこの平地にある魔王城――通称灰かぶり殿の周囲一帯を水で満たし水田とせよ――」
「謹んでお受けいたします。おいしい晩御飯でみんなを元気にして見せます!」
ミドルエッグは謹んで魔王ベルの言葉を拝命した。
彼からは硫黄の良い臭いがした。
「作戦に伴い。これから我が国の名前を『ライス国』とする」
「「ははー」」
「これからオペレーション『ともだち作戦』を決行するのだ!!」
「おぉ! 武力による世界征服ですか!」
馬鹿野郎は喜んだ。
のらりくらりと人国を殲滅するようなことなく、基本的に平和を愛する主義だった魔王ベルが、ついに動くことに歓喜の涙したのだった。なお、基本的にであってたまには殲滅する。
「あはははははははは! 我らの武力により世界を征服し、世界中のすべての人々をともだちにしてくれるわ! しかしあのラララが男とだなんて!」
――その行動が、単に男を魔王ラララが得たことによる嫉妬によるものだったというのは、その後も四天王たちが知ることはなかった。