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新世界の神になろう――「小説家になろう」はあきらめました――勇者パーティーを追放されたけど可愛い女の娘getして勇者ざまぁする俺。おーぃ帰ってこいと言われてももう手遅れです  作者: 夢之崎ベル
勇者パーティーから追放されたけど女の子捕まえて幸せになりざまあする俺。戻ってこいと言われてももう手遅れです編
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「世界の半分どころか全部くれてやろう」「OK!」

 ――ここは旧南部魔王城――


 彼女の白い息が示すように、高い位置にあるその場所は寒く、軽く白い雪が積もっていた。


 その廃虚の多くが雪に覆われる中、それでも威容を示す旧魔王城は確かに存在していた。


 かつては栄華を誇っていたのだろうが、略奪されたそこには壁と瓦礫しか残ってはいない。


 多くの魔族は押し倒され、またはその地を離れて、ここに住む魔族は魔王ただ一人となってしまった。



 勇者に追放されたハンスが望むのは――栄光。



 その栄光を再び掴むには、このいるともいないとも分からない魔王ラララを勇者よりも先に倒し、栄誉を掴むしかない。


 幸いにしてハンスが≪成人の儀式≫で得た≪庭師≫クラスは、こういった廃虚を進むにはお誂え向きのスキルが揃っている。


 《園芸》の金スキルであれば各庭の構造など一目瞭然であり、どこにどのようなものが備わっているのかだいたい分かるのである。



(外はいまは雪が被ってはいるがここは麦畑だ)



 高所であるがゆえに育ちにくいとは思われるが、そこで育てられた麦がどう城に運ばれるかを推察できるのであれば、その道をたどれば自然と内部まで侵入することは可能だ。



 その内部の最深部に、場違いな少女がいた。


 おそらく少女は魔族なのであろう。


 こんな場所に人が住むなどありえないからだ。


 そしてあのように壮絶なまでに美しい少女が――、朽ち果てた王座と思わしき椅子に座りゆったりとハンスを見定めるようにしている少女が――、強大な黒い闇の魔力を放ち続ける少女が――、およそ人であるとは思えなかった。


「ほほう。庭師(おにわばん)か――、確かに配下の魔物には庭の管理をさせていたこともあったからな。この付近一帯を自分の庭と見なして侵入でもしたのか――。罠と魔物だらけのこの場所を攻略するために、そんな手もあるのだな――」


「貴様は何者だ!」


「くくく。そうだな。我が名はラララ――、深淵之魔王(みつをけいしょうする)たる≪思念魔法≫の魔王ラララ・ベルフェと言えばわかりが良いかな? 今時の魔王たちからは、《怠惰之魔王たる》魔王ラララなどと呼ばれているが――」


「お、お前は――、まさか旧南部魔王国(オージス)を支配したという初代魔王なのか?」


 にやりと魔王ラララは赤く薄い笑みを浮かべた。

 それは苦笑か、それは嘲笑か、それとも――


「さては貴様。クラスから察するにサウスフィールド王国の暗部か何かか? なるほど。さしずめ勇者の手柄にするために放たれた刺客とでも言うのだろうか?」


「ふん……。魔王ラララ、貴様にはこの俺に倒されてもらおうか!」


「ほう。倒してなんとする! 望みは世界の名声と富か? それともこの世界で覇でも唱えるか? どうせたとえ倒してもサウスフィールルドの暗部とすれば手柄は勇者のもの。可哀そうに……」


「さて、どうするかな――」


 見つめ合う両者は、何かことが起きれば一瞬で倒し倒される距離にまで近づいている。

 それは間合いを図っているのか、それとも――


(ふふふ。倒すと言っても押し倒すんだけどね)


(どうせハンスくんってば、絶対押し倒す気まんまんだよね)


 ――心の中の描写まで入れると、かなり残念になるのはご愛敬というものだろう。



「そうだ! ならば我がモノとなれ勇者よ! この世界の半分をくれてやろう」


 ラララのそのセリフは、古典とも言える有名なセリフだった。

 さすが初代魔王である。言っていることが古めかしい。


 両手を広げ、尊大な態度を示す魔王ラララ。

 だが少女だ。可愛らしいと感じこそすれ、尊大もなにもない。

 ――きっと後でルーミートたちが映像器の映像を集中線とかで加工してかっこよくしてくれることだろう。

 その暁には本当にかっこよくなっていることだろう。切り抜き職人万歳である。



(――確か、この意見に同意した勇者は、そのまま騙されてレベルを1に戻され追放されるのだっただろうか)


 俺は考えた。


「いや、だから俺は勇者じゃないんだが……」


「ほらそこ! (こんな幼女体系の少女に手を出したある意味)勇者よ!」


「あ、はい」


「だからほら! 我がモノとなれ勇者よ! この世界の半分をくれてやろう」


 ラララは繰り返した。

 先ほどの部分は切り抜き職人によってカットされるに違いない。

 半分棒読みになっているが大丈夫なのだろうか。


「(そうだな――) そこは半分じゃ足りないだろう。どうせなら世界の全部をくれ! であればキミのモノになっても良いだろう。はははは――、さすがに魔王ラララにはできまい!」


 挑発気味に俺は言い切った。

 ノリノリだった。


「(うわそう来たか! 突然アドリブやられても困っちゃうんだよねぇ)ははは――。なかなかのゲスな勇者だな。いや庭師(おにわばん)か――。ならばこの世界の全てをくれてやろうではないか。だが()は今はまだ世界を全てを持っておらぬ。一緒に世界征服を目指すというのであればそれに乗ってやろうではないか――」


「ならば。交渉成立だな――」


 そう言うと、ハンスは手を差し出した。

 しっかりと握手を交わすハンスとラララ。


 今、ここに交渉は成立した。

 完全にハンスの悪乗りである。


 ハンスはラララを抱きしめた。そして右手を天に向ける。

 それは、まるで有名な少年漫画雑誌の唄の一説のようであった。



「さぁ! 俺たちの世界征服はこれからだ!」



 きらーん。

 周囲に隠れ潜むルーミートたちがレフ板で光を集中させる。


(あれ? これで良かったんだったっけ?)


 ノリノリの俺であったが、何か大事なことを忘れている気がする。


 魔王城の廃虚は思いのほか白く、そして寒かった――











 ~~ Fin ~~


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