魔王ベルvsハンスくん
「えー。ハンスくん。私は言いたいことがあります」
ラララ魔伯国――要は南の大陸でのんびりしていた俺ことハンスの元にはその日、魔王ベルがやってきていた。
その声は怒りに満ちていた。
「な、な、な、なんでしょう? 魔王ベルさん?」
俺はラララを膝の上に乗せ、絶賛いちゃいちゃ中であったため、突然やってきた魔王ベルの所業に若干声が低くなっている。
せっかくラララといちゃついているの所に来られてもなぁ。
ここは一応ラララの領地であるのだから。魔王ベルもそこにわざわざ来て怒らなくても。
さんさんと太陽が輝く海辺である。遠くにカモメの声がする。
ビーチチェアにビーチパラソル。
完全にサマーなタイムであろう。
白毛豪牛はドナドナとないていた。
日光浴には絶好の日よりであった。
サンオイルもばっちり塗ってある。というか、ラララに手ずから塗った。
そんな中、一人、魔王ベルだけがフル装備で怒りに震えている。
「貴方――、なぜあそこまで勇者を強くしたの?」
本当は、単に異世界の勇者召喚陣を壊すだけで良かったのだ。
さらに水晶球まで破壊してまで地元の勇者に魔力を注いのに魔王ベルは怒っているのだろう。
「えーと、だって勇者を強くした方が魔王ベルの方に行きやすいかと思ってですね。強さが足りないとか言い出して、例えばサツマ伯国やロングステート公爵国をゆっくり経由して人殺しやられまくったら厄介じゃないですか」
暗部としては当然の言いようだろう。
俺のふてぶてしい態度に魔王ベルはさらに怒り出してしまう。
「それでも限度というものがあります! 我が四天王が一人、《人類の大敵》ブラックロータスが機転を働かせなかったら、うちらだって死んでたわよ?」
「(えぇ、そして魔王ベルがもしも倒されたら、対決で弱っている勇者を漁夫って暗殺すれば良いとか思っていませんよ)」
「何か言った?」
「いえ何も?」
俺は口笛を吹いた。
「本当は、あわよくば私も屠ろうとか思っていたのではないでしょうね? 味方もいつか敵になるんだ理論で――」
「なにその理論……」
図星である。
潜在的に敵になるのであれば、今回葬りさった勇者同様に消えて貰えるならありがたい。
なぜなら確実にラララより魔王ベルの方が、単純な地力では上だろうから。あわよくば――
「(むかッ……)やっぱりハンスくんは一発殴らないと分からないみたいね」
「やりますか? やるのであれば相手になりますぜ! 俺とラララの2人で」
俺は膝に乗るラララの両手首を背後から握り、ファイティングポーズを取らせる。
ラララは戸惑いながらもやる気のようだ。
「なぁに? ベルちゃん私とヤル気なのぉ? 全力でヤっちゃうぞぉ」
ラララはダブルピースで魔王ベルに立ち向かっている。
「ちょ。ラララを出すのは卑怯でしょう! 《鑑定》スキルで弱点見つけられて、《魔物の支配者》スキルを発動されたら、私にだってキツいんだから」
忘れられているかもしれないが、ラララは魔王の一人だ。
それなりに戦闘力はあるほうだろう。
「そこは愛の共同作業と言ってくれたまえ! 愛のなせる技さ」
「くっ。これだからバカップルは……」
魔王ベルの怒りは収まらないどころか、さらに燃え上がったようだ。
「ふん。物理的/魔力的なことならば人が魔王に勝てるわけがないからな」
「もう。ハンスくんてば卑屈すぎ!」
ラララは笑いながら指摘をしてくるが、あえてムシした。
「ラララを倒した方法でなら魔王ベルとも良い勝負ができるのだがなぁ……。それだったらうちのラララを介入せずに戦ってあげよう」
「あぁ! あれねっ」
なぜかラララは吹き出しそうになっている。とても楽しそうだ。
楽しそうで何よりである。
「えぇ! その方法だったら、ハンスくん。私は介入したりはしないわ」
その様子はまさに周囲に草が生えたかのようである。
そのラララの様子を、魔王ベルは挑発と受け取ったようだ。
そして、俺がラララを手にした方法にうっすらと興味が出たのかもしれない。
「なにその人間なのに超上から目線は――。そんなに自信があるわけ?」
「ふっ。もちろんだとも!」
「よし! それでは受けて立とうではないか! ラララを倒したその技! この魔王ベルに見せてみるが良い!」
魔王ベルが承諾したその瞬間――俺は無言で《感度3,〇〇〇倍》スキルを発動させた(※注:〇は伏字です)
「は? なによそれ?」
「まるで2コマ漫画のように俺は勝ってみせてやろうではないか!」
「はぁ? 私は負けないし!」
俺は全力で――、魔王ベルを押し倒した。
およそ2時間後――
「くっ。〇〇〇〇には勝てなかったよ――」
そこには敗北する魔王ベルの姿があった――




