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新世界の神になろう――「小説家になろう」はあきらめました――勇者パーティーを追放されたけど可愛い女の娘getして勇者ざまぁする俺。おーぃ帰ってこいと言われてももう手遅れです  作者: 夢之崎ベル
勇者ざまぁされたのでキョーの都を灰にして大炎上させて見た。もちろん背景の山には「大」の文字を書きたい編
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悪役令嬢ティアラの思惑――

 貴族の学園において食堂というのは何かと問題が発生する場所である。

 そのため、問題が起きないように貴族の階級によっておおよその座る座席が決まっているものだ。しかし問題を起きないように座席が決まっているにも関わらず、場違いな座席に座ったとしたらどうだろう?

 一種の定番として、座る席を気にせずにブラックロータスが第二王子と同席して悪役令嬢が咎められる。というのは、乙女ゲームでありがちなネタであろう。西鳩(セイ・ハートオフラインでもそれは同じだ。


 だが、そのブラックロータスを咎めるような貴族はいなかった。相対しているのが第二王子、ではなく隣国の姫であったからである。

 そして、一応隣国の姫とかいっているが、実態は魔王リナだということは貴族の子息の間でまことしやかに噂されている。というか、あからさまであった。


 なにしろ、その貫禄が違うのだ。その格というものが違うのだ。圧倒的な武と魔力の気配――


 その周囲にいる娘2人は平民であるが、いっそ取り巻きとしていてもらった方が自身の身が安全――という意味で、誰も指摘をしようという者がいなかったのだ。



 そう、その時までは――



「ごきげんよう。リナさま。ブラックロータスさま。そしてラララさまでしょうか?」


 声を掛けてきたのは勇名高き悪役令嬢、ティアラである。

 彼女は男勝りに社会進出し、農商ギルドに頼らずにロジスティックスを構築し、自領の商品を流通させていることで勇名を馳せている。

 彼女は神童などと言われ、ロングステート公爵家を5歳の頃から発展させた、などという、本当か嘘か分からない噂もあったりもする。その名を人呼んでイモ姫――。当時救済植物であるイモを昇華させ、主食の一つとして選ばれるようになるまでした女傑であった。



「あら? イベントですの? 悪役令嬢さん?」


「そういえば、イベントにもこういうシーンがありましたわね。もしかして貴方は――」


「はい。メインヒロインです。まさか――、あなたも異世界転生者ですの?」


「えぇそうですわ。しかし声まで同じですのね。メインヒロインさんは」


「ははは。そりゃ中身とCVも同じですから――。ボイチェンはスキルでなんとか」


「あらら? もしかしてイラストレーターの? わたくし、貴方の西方(にしがた)の時からのファンでしてよ。あのマリンさんが『やったれ☆やったれ☆』と声援するやつが好きでして――。ぜひとも一筆描いていただくわけには――」


「いやはや懐かしい――。でも最近描いていないからどうかな? 簡単で良ければスケブとかあるなら描きはしますが――」


「まぁ! 嬉しいですわ」


「――でも、よく私と話す気になれたわね?」


「よくある乙女ゲー風のヒロインと悪役令嬢が異世界転生する小説って、異世界転生者通しは中々話さないでしょう? アレはどうかと思って……。転生者と確信できた段階で、情報共有するのなら早めにと思いまして」


「なるほどねぇ――」


 一体どんな修羅場が見られるのか、食道周囲にいた学生の面々はひそひと話をするが、しかし、ブラックロータスとティアラが何を話しているのかまったく分からなかった。



 それもそのはず。ブラックロータスとティアラは日本語でしゃべっているのだ。



 ブラックロータスとティアラ以外には、外国語にしか聞こえない言葉である。そしてもし分かったとしても理解しがたい内容にあるに違いなかった。なにしろ異世界のことなのだから。


「――ではお近づきの印に本日の放課後、個室のある喫茶店で簡単なお茶会などいかがかしら?」


「それは良いですね――」


 話はこれまでと去っていくティアラを眺めるブラックロータスに、今度は魔王リナが話しかける。


「なんだ? 今の言葉? もしかして異世界(かがわ)の言葉か? もしかして凄いんだな。黒ちゃん。てっきり黒ちゃんはラララの取り巻き程度の認識だったのだけど」


「ふふふ。乙女には秘密が多いのですよ」


 中身は男だけどね。ブラックロータスは心の中で付け加える。


「――で、そのお茶会には私たちも参加可能ですよね?」


 どこか期待に満ちたラララの声に、ブラックロータスは戸惑った。


「あれ? もしかして日本語が分かるのか?」


「そりゃ、全言語理解はお約束スキルでしょう? ねぇリナちゃん」


 当然のように言うラララにリナは頷いた。


 《全言語理解》《アイテムボックス》《ステータス表示》は、魔王と勇者、そして異世界転生者が基本的に保有する小説家になろうお約束スキルセットであったのだ――






 ◆   ◆   ◆   ◆






 サウスフィールド王国の王都キョーの都の一角。

 実際に高級なその喫茶店では個室があり、今回予約した個室には約10人くらいが余裕で入れる貴族向けのものであった。


 当然のように防諜対策も取られているものである。


 そんな場所にいるのは美しい4人の美少女たち、ブラックロータス、ラララ、リナ、そして、ティアラであった。


 簡単な自己紹介を済ませたティアラは早速本題に入る。


 本来なら、「ラララが魔王だったなんて!」のような驚きのシーンがあることが想定されたが、西鳩(セイ・ハートオフラインで彼女はお助けキャラとして登場しており、魔王であることは既に分かっていたので、適当にそのあたりはスルーされた。主にバッドエンドのシーンでは大抵道場に登場するので西鳩(セイ・ハートオフラインをプレーしていたプレイヤーが知らないはずもない。


「それで? 黒ちゃんの押しは誰なの? 性癖というか? 同郷のよしみでサポートはしますけど?」


 ティアラの物言いはいきなり確信を突いてきた。


「いないよ。だって中身男の子だもの」


 だが、ブラックロータスの中身の人はBL断固拒否であった。


「あら、香川さんってバ美肉だからてっきり男好きだと思っていましたのに?」


「いやいや! 中身は極めてノンケなNL派です。女の子大好きです!」


「あららぁ。そうなると誰かに嫁ぐのは嫌ってことになるのかしら? それならどうするつもり?」


「闇落ちルートに行こうと思っています。あれは我ながら良く描けたと思うしね。実はもう魔王ベルとは交渉を始めているの」


 ブラックロータスのいう闇オチルートとは、魔王側に(くみ)して四天王の一人となり、人類の敵として人々を苦しめるバッドエンドのことである。


 ちなみに、その騒然なバットエンドには無駄なスチールがあり、その時の恰好はレオタードでムチを持ち、かつ目にはパピヨンのマスクをつけるという、ある種倒錯的な趣味全開のイラストであった。



「あぁ。その手があったのね。たしかにあれだと――。死んだ描写は無かったはずだし」


「魔王ベルの配下的にはあの『四天王の中では最弱』というセリフが言いたい連中が多いからね」


 ブラックロータスは、一発で就職採用されると自身満々のようだ。

 おそらく魔王ベルとの感触も良かったのだろう。


「あれは『なんで最初四天王なのに3人しかいないんだ、ネタか?』とかいう話が飛び交ったけど、結局極めてシナリオ的な話だったんだよねぇ」


「そうです。そのためです」


 そこまで一気に話したあと、ティアラはお茶を一口すする。



「それで――、これからのシナリオはどうしていくつもり?」



 彼女にとってはここからが本題だからだ。

 周囲の雰囲気が明るいものから重苦しいものに変わる。


 開国エンドの場合、これから魔王ベルを亡き者にしようと攘夷派の支援を受けた勇者が暴れ、国中を巻き込む動乱が始まる、というのが西鳩(セイ・ハートオフラインのシナリオだったのだ。


「このままいくと、このキョーの都は火の海になるのでしょう? 大勢の人が死ぬのよ。速くなんとかしないと――」


 キョーの都が攘夷派の勇者によって火の海になり、第二王子とブラックロータスは、第二王子の故郷であるサツマ伯爵領に逃げることになる。そこで二人は愛し合い、再び王都に戻って勇者を倒し、再びサウスフィールド王国を破壊の中から復興されるという、ある種の王道のストーリーであった。

 その他の攻略ルートでもたいたい同じだ。推しキャラと共に王都をいったん離れ、そして舞い戻って復興――というのが基本線になる。1周目エンドなど、例外はもちろんがあるが。


「いやー。キョーの街が火の海になるのは、フランスのパリみたいなものだから――」


「そんな、他人事のような――」


「だって実際他人事だもの。いま言ったようにこれから私は魔王ベルに付くのよ。そのくらいの覚悟は既にしているわ」


「そ、それはそうかもしれないけど……」


 ティアラはブラックロータスへの説得を諦めて、他の二人の魔王に期待をかけた。


「リナさまは助けてくれないのでの?」


「私が勇者と戦ったら、それこそこのキョーの街はまっ平の更地になるわよ?」


 至極当然であった。


 魔王リナは聖ピーチ魔王国が保有する最高戦力であり、暴力発生装置だ。

 地元勇者と戦えば間違いなく魔王リナの方が勝つであろうが、その戦った大地がどうなるかは想像に固くない。一面の平野ができても可笑しくはなかった。


「それは……。そうかも? なら、ラララ様は?」


 魔王リナの戦闘様式は悪くも豪快すぎた。


「え? 私? 私は無理よ? ティアラちゃん。勇者に合うことはハンスくんから止められているから」


「ハンスくん? 誰よそれ?」


 そこで、ティアラが知らない名前がでてきて戸惑う。

 ブラックロータスが捕捉を入れた。


「あぁ。私が学園来た時に最初に絡まれたときに出てくるチンピラ貴族よ。ティアラのシナリオでも国外追放されてたきには出てくるわよ。ティアラの馬車を襲撃する盗賊役として――」


「――。なぜにそんなのにラララさまは従っているのよ?」


 それに対して少しだけラララの声がトーンダウンする。


「えーっと人の婚約者に何を言っているのかな? ティアラさん?」


「あー。ハンスくんってカッコいいよねー。(知らんけど……)」


「でしょう! それでハンスくんってば――」







(えー。ラララ女史よるハンスくんへの惚気がここから小一時間始まるので省略させていただきます)








「こほん。そのハンスくんの男前っぷりは分かったから。もう十分分かったからねッ」


「うんうん。よろしい。今度あなたも一緒にどう? 一緒に寝ない?」


「それはさすがに……」


「――といわけで暗部のハンスくん的な立場だと、国の膿を出し切るには勇者に群がる蟲どもを集めてまとめて叩いた方が良いという意見らしいわね」


「それ本当に国王が認めたの?」


「さぁ? ティアラちゃんが聞いてみたら? 貴方のところの勇者が街を燃やそうとしているのですが? って。忘れているかもしれないけど私、世間的には平民だからね」


「魔王ラララが平民って――、確かに制度上はそうかもしれないけど謎すぎるわね」


「――で、ティアラちゃん。平民は普通、国王様には簡単に会えないものなの。分かる?」


 ラララは、すっかり平民女子になり切っていた。

 しばらくは学生気分を満喫するつもりなのだろう。


 魔王リナが続ける。


「それに――、私が勇者をヤると外交問題になりそうだからパスね。特に本国から止められてはいないけど、普通にダメでしょ」


 確かに魔王リナなら些細なことでも外交問題になりそうだった。

 というか、なぜ聖ピーチ魔王国はなぜこの即戦力をこのサウスフィールド王国に簡単に放ったままにしておくのだろうか。

 聖ピーチ魔王国的には、魔王リナを怒らせてサウスフィールド王国が滅んだ方が国益に叶うから放置してるのではないか、などと不謹慎なことをティアラは考えたが、あながち間違いでもなさそうなのが笑えないところであった。


「じゃぁここには誰もキョーの都を守ろうという人はいない訳? 私以外に?」


「少なくともこの中には?」


 ラララは周囲を見渡す。ティアラ以外にはいないようだった。


「なら私の領軍を出すしかないの?」


 

「なるほど。ティアラさんのところのロングステート公爵軍を? 勇者と禁門をめぐって? それこそキョーの街が焼かれない?」答えたのはブラックロータスだ。


「でも――、そうでもしないと勇者は――」


「ロングステート公爵家だけだと厳しいとして、さらにサツマ公爵家と合わせて戦えばいいんじゃないの?」


「あの第二王子の所の……」


 ティアラは言われて顔を曇らせる。

 どうやら第二王子とティアラの仲は良くはなさそうだ。


「あれ? 私はそこまであの第二王子との友好度は高くないから、まだティアラと第二王子のルートはあったと思うのだけれど? 第二王子が推しなら応援するけど?」


 西鳩(セイ・ハートオフラインではブラックロータスが別の男性推しキャラに付く場合がある。ブラックロータスが闇落ちする場合、第二王子はティアラとくっつくストーリーになるはずであった。


「それがどうにも。私が異世界内政チートで流通とか改革とかやりすぎてしまって……。第二王子が拗ねていてねぇ……」


「なるほど。こじらしたか。優秀な悪役令嬢と比較され続けた第二王子は劣等感に苛まれて悪役令嬢を疎むようになると……。かー、第二王子はこんなに美人なのに持ったいない。私ならイラストレータとかやめてすぐにカモメになる自信があるよ」


 もともとのストーリーとしても「優秀な悪役令嬢」はキーワードであり、第二王子は悪役令嬢に嫉妬の心がある。さらに現代知識(かがわのちしき)を用いて内政チートを行えばさらにそれが悪化するというのは、ブラックロータスにも容易に想像できた。


「はいそこ。そこ。地がでてますよ、地が」


「おーほほ。私! 清楚で正統派の美少女ヒロイン! ブラックロータスですわよ!」


 ブラックロータスは清楚で正統派を取り繕ろう。

 確かに外見だけを見ると非常に可愛い。


 ちなみに中身はバ美肉である。


「それに忘れているかもしれないけど、第一王子の勇者とも比較されいるからね。可哀そうだよねぇ。そこに女にまで、それも婚約者の――、って思いはあるでしょうけどね。そりゃーこじらせるわよ。でも――、領民のために改革はやめられないし――」


「そこに脳の足らない私が出てきてちょっと慰めたら真実の愛を見つけるって? いやぁ、さすがは第二王子。王道すぎて初回1周目以外は基本スルーされる存在だよなぁ」


「ともかく説得してみるしかないわね」


「はいはい頑張って、――って。ああああぁぁ!」


「どうしたのよ急に?」


 急にブラックロータスは立ち上がった。

 その顔は真っ青であり、汗が滝のように流れ始めている。


「あなたの所のロングステート公爵家って、開国したら密輸していた魔王領との交流や取引を本格化させてますよね? エンディング後の話だったから、そのあたりの細かい話は本編じゃやらなかったけど――」


 そのあたりの細かい話はエンドロールに数行でてくる内容である。しかも復興エンド後の話であり、恋愛とは直接絡まないためプレーヤー側が覚えておくというのは困難であった。

 しかし、ブラックロータスは制作側だ。ストーリーに厚みを持たせるため、一緒に参加した歴女――魔王ベル役のCVの人――とともに趣味全開で適当に歴史と絡めようといろいろ無駄な設定をてんこ盛りにしていたのである。


「それが何か?」


「では、これは知っているかな? 魔王領との交流や取引を本格化させた時に使う港に設定された名前を」


「さすがに知らないわよ。そんな土地の名前までは――」


「あー。私はなんて名前に設定してしまったんだ! あのときは遊び半分だったのに! 名前の通りのイベントがもしも発生したら、このままではエンディングの後に人類滅亡ルートになってしまう!」


「だから何よ? なんて名前にしたの?」


真珠(パール)よ?」


「え? 今なんて……」


「だから、真珠湾よ……」


「あぁぁぁ! あ、あなた! なんて名前を付けるのよ――」



 真珠湾――それは1941年に第二次世界大戦において日本海軍がアメリカ合衆国のこの港を奇襲し、日本敗戦のきっかけとなった湾の名前であった――


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