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ワルプルギスの夜


 俺はなんでこんなところにいるのだろうか?


 その学園の寮の一室に4人の女性、そして俺ことハンスがいた。


 ちなみに女子寮なのに俺がいること自体、かなりやばい。


 学園職員で補修に来たかなんとかいえば、ごまかしが聞くだろうか?

 その前に婚約者に合いに来たでもOKかもしれない。だいぶ綱渡りではあるが。


 そしてメンツもかなりやばいものがあった。

 なぜなら一人をのぞき、みんな魔王なのだもの。


・一人は、いままさに駆逐艦でサウスフィールドを侵攻しようとする魔王ベル。

・一人は、我が嫁さんにして強い味方の魔王ラララ。

・一人は、聖ピーチ魔王国のお姫様ということになっているが、設定にかなり無理があるんじゃないかと思わないでもない、魔王リナ。

・一人は、どっかそこらへんの市民であるブラックロータス嬢。


 魔王ベルは《扉》でラララが連れてきたらしい。

 というか、魔王ベルって! どこからどうみてもラスボスじゃねぇか。


 俺からの見た目は紫のドレスを着た、おねぇさん美魔女王、魔王ベル!

 どうしてみんな魔王なのに彼女だけ貫禄がありまくるの?

 彼女意外はみんなセーラー服で、部屋の中はとても良い匂いがする気がする。俺のために台無しだが。




 そんなことはさておき。




 だがしかし2人だけ場違いなやつがいないだろうか。

 それは人類側の俺とブラックロータス嬢だ。


 俺はブラックロータス嬢に目配せして、一緒に退室することを促したが、なぜか彼女は興奮しており目配せが通じなかった。


 確かにラスボスがいたら興奮もするわな。

 だがしかし、彼女は目の前のこの美魔女が魔王ベルであることを分かっているのだろうか?


 俺はラララに教えてもらえるまで、さっぱり分からなかったわけだが。


 そもそも、そんな魔王ベルがなぜここにおわす?

 はい。答えはラララのお友達だからです。


 話によれば、かつて魔王ベルはラララの部下だったそうだ。

 え? そんな関係だったの?


「えーっと、お日柄もよろしく。ベル様はなぜこのような場所へ――」


 とりあえず、俺はYouは何しに日本に来たと言わんばかりのノリで魔王ベルに聞いてみた。


「それはもちろん! ラララちゃんの支援のためよ! たくさんの人類とトモダチになって、一緒に世界を征服するのよ!」


(うんわー。この女、力こそパワーなヒトじゃないか……)


 その言葉にうんうんと頷くその他魔王2人。

 そう、ラララが世界征服をしようなどと言ったので、魔王ベルは手伝い来たのだ。


 いらん! そんな手伝いはいらん!

 このままではノリで世界が征服されてしまうだろうが。


 主神だけではなく、物理的に世界征服なんてしたら俺はどうなってしまうのだろうか?



 ――うん。どうにもならない気もするなぁ。



「あのぉ。ベル様は世界征服がお望みなのでしょうか? 私はてっきり開国を迫ってくると思ったのですが――」


 意気投合する魔王たちに水を差すのはブラックロータス嬢だ。

 ラララと同室だからって、部屋に入れたままだったのがまずかったか。

 空気が読めていない。空気が読めてなさすぎるぞキミぃ。

 しかし魔王たちに向かって恐れを知らない発言だな。

 下手すれば即死だというのに大丈夫なのだろうか?


「え? そうねぇ。初めは開国を迫ろうと思ったのだけれど、ほらさぁ。ラララちゃんが世界征服しようとかいいだすじゃない。なら一気に逝っちゃった方が良いかと思って――」


 いやいやいや、思うな!


「な、なんですって! ラララちゃんが世界征服だなんて、どうして!」


 そこで本気で驚いた様子のブラックロータス嬢である。

 ブラックロータスはラララが世界征服を言い出した張本人だとは思っていなかったようだ。


「えーっと、黒ちゃん。ほらノリと勢いで! だって私、魔王じゃん? 『我がものとなれ勇者よ! さすれば世界の半分をくれてやろう』って魔王が言いたい憧れのセリフナンバーワンとは思わない? そこで相手に『いや全部くれ』なんて言われたら、そりゃぁもう、きゅーん☆ ってなって、一緒に世界征服しようッ。ってなるのは当然の成り行きよ! そして彼は私のモノ。彼氏Get! いえぇーい!」


「誰だよ! そんなことを言う人は!」


 一斉に視線が俺に集まる。

 一体なぜだろう?


「誰だそんなことを言ったやつは! あ、俺やったぁぁ!?」


「あなた――、まさか勇者だったの? ステータス偽造とか持っていたりする?」


 解答を言ったのはラララだった。


「ふふふ黒ちゃん。ハンスくんはね、この幼気な少女の私を手籠めにした、ある意味勇者よ!」


 こらそこ! 言い方! それじゃぁまるで、俺が勇者パーティを追放されたことにむしゃくしゃして、夜中の街でふらふら歩いていた女の子を無理やり手籠めにした悪人みたいじゃないか――




 ……。悪人でしたぁぁぁ。ごめんなさぁぁぁい。




 突き刺さる視線を感じながら、俺はラララ以外の周囲に謝った。

 ラララに対しては? 我が一片の悔いなし!


 ステータス偽装していなければ俺のラララに対する好感度はとっくに100になっていることだろう。


「とはいえ、いきなり世界征服とか言ってもサウスフィールド側はどうにもならないのでないか?」


 魔王ベルはうなずく。

 まるで花が咲いたような笑顔だ。


「よーし、じゃぁ蹂躙させちゃうぞ☆」


 魔王ベルが言うとしゃれになっていない。あんた人類何人倒してきた。

 だからその、世界人類が滅亡したらトモダチ率100%みたいな発言はやめなさい。

 誰もいなくなればトモダチ率は0%なんじゃないだろうか。


「あー。そこの魔王リナさんや。あなたの国でも侵略戦争とかされたら困るでしょう?」


 俺は助けになりそうな人に声を掛けた。


 《強欲之魔王たる》魔王リナだ。


 魔王リナは聖ピーチ魔王国の姫としてこのサウスフィールド王国に転入学してきたのである。聖ピーチ魔王国も魔王ベルに侵攻されたとしたら困るに決まっている。


「え? 魔王ベルとは秘密同盟結んでいるから後何されようが平気ぃ☆」


 おいおい。外堀埋めてきやがったよ、どうしよう。


 というか、そんな重要なこと、なぜ外部に公表していないのだ。

 あ、重要だからこそ秘匿されていたんですね。分かります。


「じゃぁうちも同盟から! 同盟からとかで手を打ちませんか?」


「んー。同盟ねぇ。それはサウスフィールドとしての意思なの?」


 確かに、そんな重大なことを俺が決めていいことだろうか。いやそんなことはない。

 ここは上司に丸なげ――上司にお伺いを立てるべきだろう。


「何をするにしても、とりあえず国家運営となったら国王に話を持って行くのが筋だな」


「よーし! じゃぁ国王と相談だ! ラララちゃん、ささっと《扉》で繋いじゃって!」


 どこまでも魔王ベルのノリは軽かった。


「はーぃ。ベルちゃんの申し出とあれば! 私いっきまーす!」


 ラララが立ち上がり、部屋の扉が開かれる。


「あ。ちょっ」


 そこは御所の風呂場に繋がっており、そこには――裸の王様がいた。

 俺と国王は自然と目があってしまう。


「なんだ? 最近は女性の裸だけでなく、儂のモノにも需要があるのかね?」





 国王は何がとはいわないが、黒く(たくま)しかった――


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