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勇者は暗殺者ギルドに魔王ラララの殺害を依頼した

 スラムの一角、薄暗い部屋――


「この度は我らをご指名いただき、ありがとうございます」


 勇者は暗殺者ギルドに接触を図っていた。

 確かに、第二王子やハンスは憎らしい。

 だが、まさか勇者自信がハンスを呼び出して斬り殺すわけにはいかない。

 そのような醜聞が世に出たら勇者自信にも、自分がどうなるか分からなかった。

 最低限でも取り繕う必要はあるだろう。


 そこで勇者が目をつけたのが暗殺者ギルドであったのだ。



 説明しよう。

 暗殺者ギルドとは、そのままズバリ暗殺者たちの集団で成り立っているギルドである。


 その業務はつまるところ暗殺であった。


 しかしその暗殺の成功率は非常に高い。

 もしも失敗した場合、暗殺者ギルドは消滅するのだ。

 したがってその暗殺者ギルドが生存している=成功率は常に100%なのである。


 その他にも貴族の娘を傷ものにするとか、その程度の嫌がらせなども実行可能だ。

 後は――いやがらせか。

 温泉地にいって猛毒を流したり、「セカンドレイプの町」とかいった醜聞を流して温泉産業に打撃を与えることなども得意分野の一つだ。

 観光客が減れば暗殺はよりしやすくなるので、暗殺者ギルド的にはその前段の悪行という扱いではあるが。その時の依頼主は最終的には乗っ取って町の長になるのであった。


 だが、今回の件は本当の意味での本業である。

 暗殺者ギルドの面々は気を引き締めた。




「それで? 相手は?」




 マスクを被った暗殺者ギルドの長は慎重に尋ねる。

 そう、勇者と暗殺者ギルドの暗殺者は互いにマスクを被っており、一見誰か分からないようになっていた。

 だが暗殺者ギルドの長はこのクライアントが誰かは分かっている。

 とにもかくにも勇者は目立つ存在だった。


「まずはサウスフィールドのハンス伯爵だな」


「伯爵級ですか、それは――それはお高いですぞ?」


「なぜだ? なぜ高い? 伯爵級とはいえ所詮は用務員のおっさんだぞ?」


 勇者の減額を求めるような言葉に、暗殺者ギルドの長はむっとした。


「はい。分かっております。用務員のおっさんでもありますな。しかしそれは擬態」


「擬態? ふざけているのか?」


 勇者はハンスのことをどうしてもただのおっさんのようにしか思えなかった。


「えぇ、ヤツはいつもはふざけております。しかしその実、王国きっての暗部武闘派ですからな。裏手を用いる暗殺者ギルドとはなにしろ相性が悪い」


 うさんくさい態度で相性が悪いと口走る男を、勇者は嘲笑った。


「あいつが武闘派ねぇ……」


 確かにハンスは小ズルいところがある印象の男であった。

 清廉潔白とは言い難いだろう。

 勇者パーティを追放するきっかけとなったのもその小ズルさだ。


 その無能を装う実力は、勇者をも騙しきるその実力は、高いと言わざるを得ない。

 だが、勇者はそのまま騙されたままであり、いまいちハンスの能力を理解できない。


「あー。これはご存知かもしれませんが、ヤツはかの勇者パーティに属していたくらいの実力派でしたからな! しかも、そんな彼を追放してからの勇者パーティは没落したとかなんとか――」


「貴様――」


 勇者の素性は暗殺者ギルドには知られている。

 勇者は自分がからかわれていることに、明らかに不満の表情を返した。


(――が、背に腹は代えられない――)


 しかし勇者は睨みつけるだけで押し黙る。


「それで? ヤツを殺すには幾らかかる?」


「金貨20枚ほどでいかがでしょうか?」


「なんだ。意外と安いな――」


「我にも暗部と相対したことがあり、貴方さま同様に恨みがありますれば――」


 勇者はうなずくと、アイテムボックスから金貨を取り出し、投げ渡す。

 暗殺者ギルドの長はほくそ笑むのが止められなかった。


(それにアメジスト王国からも金が入っているからな――)


 片手で金を受け取ると、暗殺者ギルドの長は立ち上がった。


「あなたさまの恨み、我々ヤマザキ家の仕事人が請け負い晴らしてあげましょう」


「それで――、どやって殺すんだ?」


「なるべく手の内はあかしたくはないのですが……。クライアントの要望であれば話しましょうか。ハンスに対していきなりの直接攻撃は厳しいため、まずは無難な『絡め手』を使おうかと」


「絡め手? 何をしようというんだ?」


「あの暗部には平民の婚約者がいましてな。それもかなり可愛い。そんな娘が酷い目にあえば動揺を誘えるというもの。そこを誘き出して罠で仕留めます」


 勇者はその平民に心当たりがあった。


(あの女だ――)


 あのハンスに抵抗もせず、むしろ喜んでいるようなそぶりを見せていたあの女――


「ほほう。かなり可愛いと。その娘――会うことはできるか?」


 彼女が絶望に触れたとき、どのような悲鳴をあげることだろうか?

 それを見ればハンスに「ざまぁ」と言ってやることができるだろう。


「もちろん会うことは可能です。四肢がなかったり、薬漬けになっていたりしてもよろしければですが。もちろん追加料金はいただきますがね。あぁなるほど! ハンスの目の前で味見をしたいとかですか。貴方さまもお人が悪い――」


「ははは――、そちも悪よのぉーー」


 季節は秋に掛かり――


 だんだんと日差しが弱まった季節。



 秋の真っ赤な血のフェスティバルが始まろうとしていた――


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