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他国からの留学生! その名はリナ!



 季節は夏から秋に変わろうとしていた。



 そんな中、貴族の学園に2学期から1年に編入をする3人の女性の姿があった。





 一人はラララであり、もう一人はブラックロータスである。





 途中編入というのは特別珍しいものではない。

 貴族の学園なのだ。貴族の子女は貴族であり入学はかなり自由であった。

 特に留学生に対しては移動等あるため寛容だ。

 そんな留学生を含む貴族に対する編入試験であれば、言ってしまえば形ばかりのガバガバものになってしまう。



 ――が、名目上2人は平民の扱いである。



 両名とも国王からの後押しがあったとはいえ、編入試験は厳格に行われた。


 その結果は――、合格であった。


 ラララは《鑑定》スキルを持っているため、どんな問題であっても《鑑定》で答えることができたし、ブラックロータスに至ってはなんと、この世界の設定を知っている人間であり、異世界の一般的な知識を知っているため簡単であることこの上なかったのだ。


 なんちゃってファンタジーであるこの世界では、複雑とされる計算問題であったとしてもせいぜいが中学卒業レベルなのである。

 これが、錬金術師の学科の場合「識別法として、過マンガン酸カリウムを還元し、過クロム酸を酸化する。また、ヨード亜鉛からヨードを析出する薬剤は何か?(*1)」「淡黄色の結晶で苦みがある。冷水には溶けにくいが、熱湯、アルコール、ベンゼン、クロロホルムには溶ける。アルコール溶液は、白色の羊毛または絹糸を鮮黄色に染める薬剤は何か?(*2)」みたいなガチの錬金知識が必要になるわけだが、一般の学科でそのようなものが出るわけでもないので落ちようが無い。


 そんなこんなで入学し、めでたく同室の寮に入れたわけだが、その話題をさらったのは編入した2人ではなかった。


 学園に秋期に編入した最後の一人は、外国からの王族であったのだ。

 王族が短期留学ともなれば、2人の話題が霞むのも当然といえよう。


 その外国とは『聖ピーチ魔王国』であり、その名前を『リナ』と言った。

 そのことに貴族の子女たちの話題は持ちきりだ。


「聖ピーチ魔王国で名前がリナってもしかして――」


「いやまさか――、でもそんなことってありなの? でも王族ってことは?」


「確かに魔王も王族といえば王族なんでしょうけれども? そんなのって?」


「近寄って大丈夫なものなのかしら?」


 王族のカウンターパートナーとして駆り出さている第二王子が若干引いているのが遠くから見ても手に取るように分かる。


 そう、聖ピーチ魔王国のリナとは魔王リナその人であった。



 確かに身長も低く、見た目的には学生の子供といって良いだろうが、それでも反則だろうと貴族の学生たちは思った。


 もちろん箝口令が敷かれる。


 こんなことが学園の外に漏れて粗暴な勇者なぞに知られたら、学園の中で勇者と魔王の直接大戦争が起こることが必須なのだ。学園どころかキョ―の都が灰になるだろう。


 逆言えばその陰に隠れる形でラララとブラックロータスは入学を果たせるというこでもあり、感謝すべきところであると言っても良いだろう。



 ――その魔王リナが、魔王ラララのところに突撃してくることを知らないつかの間の間だけであろうが。



 そんな外野での争いはともかく、ここで魔王ラララとブラックロータスは同室として初めて顔を合わせることになる。

 しかし部屋に入る前からブラックロータスは魔王ラララのことは知っていた。


 なぜならラララは、西鳩(セイ・ハートオフラインの主要人物の一人なのだから。


 ラララの西鳩(セイ・ハートオフラインでの立ち位置はいわゆるお助けキャラである。


 その他では、ブラックロータスが何らかの原因で殺されたときに発生する『ラララー道場』のMCとして、あーだこーだとご高説を述べる役を担っているのだ。魔王ベルと一緒にである。


 さて、西鳩(セイ・ハートオフラインでのお助けキャラとはどのようなものだろうか?


 よくあるのは、劇場や植物園などのフリーチケットをくれたり、赤い糸の結ばれた主要推しキャラとの友好度をポイントとして教えてくれたりである。いわゆるフラグ管理者みたいな立ち位置だろうか。

 しかし、現実となった今、そのようなことができるのか? ブラックロータスとしてはかなり疑問だった。特に好感度表示がナゾである。

 そんな異性関係の有効度が数字で見えるとか、普通に考えておかしいだろう。乙女ゲームでもあるまいし。しかも他人同士のものである。


「こんにちは! ブラックロータスちゃん。長いから黒ちゃんでいいかなぁ? 私の名前はラララ! この学園を卒業したら婚約者と結婚するのぉ。よろしくねっ」


 寮の同室でラララが明るく声を掛けてくる。

 そしてラララが手を差し出してきたので、そのまま握手を交わした。


 そのセリフは西鳩(セイ・ハートオフラインのものとほとんど同じだった。

 だが、最後の一文だけは違っていた。




(おや?)




 ラララに婚約者などいただろうか?

 隠し設定としてのフレーバーテキストにもそのような記述は無かったはずだ。


「こんにちは。私はブラックロータスです。ラララさんよね。えーっと、婚約者?」


「そうだよ黒ちゃん! お相手はなんと伯爵さまだよ! だから平民だけどこの学園に入学できたんだ! 卒業したら伯爵夫人なのぉ! いいでしょう」


 確かに中身が魔王だとはいえ、(おおやけ)の身分としては平民の彼女がいきなり貴族が多い学園に、しかも転入とかは難しいだろう。


 シナリオの強制力が現実と辻褄を合わせるために設定を追加したのだろうか。


「でも黒ちゃんも凄いよね! 王子さまを助けたんでしょう! 相当な剣か魔法の使い手だったりするの?」

「いえ、全然……」


 このセリフは実は選択肢だったりする。

 ここで「使い手だ」というと、後のシーンで戦闘をやらさせてある死にゲーとなるのだ。これに気づかない人はかなり多く、発売当初wik〇を見ない人はかなりの阿鼻叫喚を起こしてSNSを荒らすという事態が発生していた。


「それで――、今日はどっちにする? 上になるぅ?/それとも下ぁ?」


 ラララはベットを指さしながら更なる質問をしてくる。


 さて、どうするか――

 ブラックロータスは微妙な選択肢の連続に気が抜けないのであった――

*1:過酸化水素水、*2:ピクリン酸

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