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こちら、ラララ魔伯国


「せ、せやル!(どうやら魔王ラララが復活したらしい)」


「せ、せやろかラー?(それは本当なのかい?)」


「せ、せやろラー (ほんとうだとも)」


「せ、せやラー!(それは凄い)」


「せ、せやかてルー (よく分からないけども)」



 ここは旧南部魔王国――



 豪州ともよばれるその大陸では、屈強な筋肉を有するルーミートや、木にぶら下がるラーミートと呼ばれる恐るべき凶悪な魔獣たちが全土に住んでいた。


 その魔獣たちが、口々に話し合っていることが、魔王復活の報道であった。



 その名をラララ魔伯国――



 名前から分かる通り魔王ラララの本格的な復活を告げる報道に、ルーミートやラーミートたち魔獣は喜びの声をあげた。

 ホルスタイン級の白毛豪牛などは草を見つけてはむしゃむしゃと反芻するほどである。




 そんな中、この大陸に密航しようとしてくる男たちがいた――

 軍艦に乗った100名近い海軍人たちである。


 その軍艦が掲げる旗はアメジスト王国の軍旗だ。

 白地にアメジストで王国を示す文字が書かれたその旗は外からもはっきりと見て取れた。


 その軍艦の水平が望遠鏡を片手に、その新大陸を眺めている。


「指令! あそこに見えるのが旧南部魔王国領――豪州と思われます」


「おぉあれがか。望遠鏡がなくともはっきり分かるな」


 あれが隣国がラララ魔伯国とか名乗っている場所であるのであろう。


(だがそうはいかん。まずは我が国が突撃し、大陸に旗を立てることで占有権を主張してくれる!)


 司令官は意気込むが、その障害となるのは土着の魔獣たちであった。


「指令! 11時の方向、距離2000! あれは――、ルーミートたちでしょうか?」


 水兵が危険を告げてきた。


「あはははは! 何だあれは! ルーミートどもめ。原始的にもほどがあるだろうが」


 そこには丸太によってイカダが組まれ、ルーミートと呼ばれる凶悪な魔獣がそのイカダにしがみついている様子が見てとれた。

 どうやら、ルーミートたちは泳ぎながらキック力で推進しているようだ。

 まるで犬かきのようだが、その速度は異様に速い。



 ――とはいえ、アメジスト王国が誇る軍船と比べてしまえばその速度には差があった。

 軍船には魔石推進のスクリューが備わっていたのだ。




「距離はまだ遠いな。飛び道具がなければなんともない。

 そしてこちらには魔法による砲撃が可能だ。

 さぁいでよ我らが誇る魔砲部隊よ! そしてやつらを殲滅するのだ!」


「まってください! 指令! 奴らから何かが射出されました」


 水兵が叫ぶ。


「対閃光! 対魔法防御! まさかルーミートたちが魔法を使ってくるとは――」


「いいえ違います――、あれは! 豪州に住むといわれる幻の魔獣! キウィフルーツぅぅ!」


 バレーボールほどの大きさ、薄茶色の凶弾のような物体が多数、ルーミートたちによってその軍船に撃ちだされていた。


 その名を――キウィフルーツと言った。


「「キウィ――(大物いただき――)!」」


 キウィフルーツたちが叫ぶ。



「す、すぐさま対物理防御魔法へ切り替えろ!」


「ま、間に合いませぇぇん!」


「全員! ショック体勢!」


 ドーン!


 ドーン!


 ドーン!


 キゥイフルーツたちが丸い弾丸のようにその軍艦を突き抜ける。

 その(くちばし)はまるでキツツキと呼ばれる鳥のような鋭さがあった。


 その軍艦はまるで豆腐かなにかのように一直線に貫かれ、一筋の穴が穿たれる。

 穴をあけられた軍艦は、その穴から大量の海水の侵入を余儀なくされた。


「たたた退避ぃぃ!」


 その一撃により大破して沈んでいく軍艦――実にあっけないものである。

 一部には炎まであがっていた。


 大破した軍艦から放り出される人々――、そこに到着したルーミートの魔物たち。

 彼らがルーミートの捕虜にされるのは、時間の問題であった――






 ◆ ◆ ◆




「せ、せやラー(こいつらどうしてくれようか?)」


「せ、せやなぁラー(どうしたらいいのだろうか?)」


「せ、せやろかラー(どうしたらいいのだろうねぇ?)」


 アメジスト王国の海兵たちはルーミートたちに捕虜にされていた。

 彼らは海難に対して魔物に救出されたのだ。


 彼らはなぜこんなに好戦的なのかに疑問を持っていた。

 さらには交戦しておきながら、なぜに救出するのかも謎めいている。


 本来ルーミートたちはこんなに好戦的ではなかったはずだ。


 内向的であるはずだったルーミートたち。

 本来は人を襲うようなこともめったにないと聞く。

 ましてはキウィフルーツなんて、その姿から文献では単なる食べ物ではないかとまで言われていたほどだ。


 だいたい、ルーミートが捕虜を取るといった組織的な動きをするのもおかしい。

 これは何か統率する固体が出てきたと考えて良いのではないだろうか?



(一体何が起こっているのか?)



 そのうち、捕虜たちの前にリーダーと思われるルーミートが一匹向かって行く。


「せやルー!」


 捕虜たちは何を言っているかさっぱり分からない。

 おそらくはルーミートたちの独特の言語である――、いわゆるルー語と呼ばれるものだろう。


「せめて人語を喋れば分かるんだが――」


 司令官は困り果てた。


「(ふむ。標準語で喋れば良いのかな?)」


 だが、呟きに対して即座に共通語が返ってくる。


「なっ、なんだ共通語が喋れるのか――」


 ルーミートたちは、しゃべったのだ。


「(我らはルーミート。ラララ魔伯国の領民である!)」


「ま、まさかサウスフィールド王国は、豪州を、魔族たちをその支配に置いているというのか――」


 それであれば驚愕である。


 ラララ魔伯国という名前は、サウスフィールド王国が公表した国名と同じであった。

 魔王でもなければ従わない魔族たちをサウスフィールド王国は従えたというのか?!


(魔王でもなければ従わない?)


 何か引っかかるものを感じるが、ルーミートたちは思考する時間を許さない。


「(貴殿らはアメジスト王国の国旗を掲げ領海侵犯をしたため、我らの手によって撃退することにしたものである)」


「くっ――。であればサウスフィールド王国の国旗でもあげておけば良かったのか……」


「(それはそれで実績が積まれるのでありだろうな。アメジスト王国はこの地をサウスフィールド王国の土地だと認たことになる)」


「なっ、こいつらまさか――」


(こいつらまさか、国際法に精通しているのか?)


 そうであれば、サウスフィールド王国の国旗など掲げて入国すればルーミートたちに歓迎されたであろうが、自国に戻れば売国奴として糾弾されることはほぼ確定的であろう。


「(さてどうだね? ここがサウスフィールド王国の土地と認め、ラララ魔伯国の国民として住民税を払うのであれば、貴殿らを安全にお返しすることも考えるが? そして、いまから3年まではななんと住民税が無料である。所得税も無料だ。消費税も0%にしよう。お安いがどうかね)」


 ルーミートたちが捕虜たちを生かした理由は、住民税を取るためであった。

 そしてその住民税の捧げる先は、ラララ魔伯国となったとした場合――

 ここがサウスフィールドであり、自身その住民であると主張することになる。


「くっ――、そんな条件を飲めばこの地に対しアメジスト王国に領有権があると主張できなくなると同義語では無いか――」


 アメジスト王国の海軍兵であり今では捕虜となった者たちは、国への忠誠と身の安全、どちらが重要なのか強制的に考えさせられることになるのだった――


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