そして世界のからくりを知ることになる――
さぁ。この素晴らしい世界に祝福を――
――ということで、新世界の神になりました。
主神カーキンの俺ことハンスです。
いやー。騙されたね。ラララには。
主神カーキンの神譲を受けたけど、そのとたん嘘のようにラララは元通りになっていたのだよ。えぇ振りでした。けろり☆ という感じか?
舌まで出して「ててへろ☆なポーズ」をしてきたのでその後、えぇ、俺は後で分からせてやりましたもさ。舐められたら舐め返せってよくいうよね。ててへろ☆
――さて、それはさておき。
まんまとこの世界の主神カーキンとなった俺だから言うけど、この世界の主神になったからといっても、どうという変化もない。ラララみたいに頭が痛くとかも全くないのが驚きだ。
変化自身は当然ある。
例えば膨大な、忌々しい記憶が頭に叩き込まれたり、ウィンドウシステムとかいう謎の名前のシステムを使えるようになったりした。本来、魔王や勇者、その他異世界人しか使えないものだ。ちなみにバージョンは11だ。
――で?
だからどうしたというのだろう。
神になったので不老の属性もついたっぽい。ただねぇ。しかし今の年齢で不老といわれてもねぇ。俺的には不労の方が良かったのだが。若返りも一緒ならさらに良かったが世の中そんな甘いものでもなく。
結局のところ、神になっても不死とはいかないようだ。神も殺されれば死ぬのである。正確には殺した存在が主神カーキンになるので、「神は死なない」で「中身が死ぬ」が正しいようだが。
その気になれば若返りも可能な様だが、世界を巻き込み影響があると言われるとどうだろう? と思うね。そんな魔王ラララを倒した勇者でもあるまいし。
ちなみに、どうも主神カーキンというのは、襲名制で何代もの「主神カーキン」がいるらしい。
ラララの前の主神カーキンはその名を邪神アマト―といい……、――と、そんな細かい話はどうでも良いか。設定厨が沸くほどの大した世界じゃないしね。このなんちゃってファンタジーは。
――だが、得た知識の中で重大なものがある。
どうやら、この世界は異世界から見るとゲームやインターネットとやらを用いた架空の世界であるらしい。そのインターネットのゲームの名前は「小説家になろう」。そして俺たちはその非実在児童とやらになるそうだ。
――で、問題はここからだ。そしてその異世界には《どくしゃー》なる得たいの知れない、この世界の神すら超える力を有しているらしい。
なんでも、この世界の物語を進めるための歯車にちからを与える《どくしゃー》なるモノは、物語の根底にある☆を★に変えたりとか、自身の書の記しと呼ばれるものに登録とかできてしまうらしい。
そしてそれらの変更やブックマークが増えると、ポイントと言うものが与えられ、この世界は小説として評価されるのだ!
俺には信じられないぜ。この世界にそんなからくりがあるだなんて!
《どくしゃー》なる名状しがたいモノが何なのか、主神カーキンの知識を持ってしても良く分からないが、主神の存在意義としては、とにかく《どくしゃー》にとって面白いことをしなければならないらしかった。
そうしないと世界そのものが、死ぬ。
「えーっとつまりハンスくん。《どくしゃー》なる名状しがたいモノが喜ぶようなことをすれば良いのでしょう?」
ラララは軽やかに笑う。
ラララが笑うのは、無茶苦茶なことを言うときだと俺は最近気づいた。
「そうねハンスくん。《どくしゃー》が喜びそうなこと……」
「なんだろうね?」
「まずはいきなり世界を滅ぼしましょう! ほら面白そう!」
「それアカン奴やー!」
世界を滅ぼすこと。
《どくしゃー》なるモノは、それをエンド・オブ・サービスと言うらしい。
《どくしゃー》から関心が持たれず収益があがらないと、それは起きるらしい。
しかし、たとえ俺が主神のこんな世界でも、いやこんな世界であるからこそ、この世界が滅んだら俺は死んでしまうことだろう。
俺はまだ死にたくはない。
俺はもっと、世界をラララと楽しみたいよ。
「ねぇハンスくん。良いでしょう? 世界を一回滅ぼそうよぉ! ネットやゲーム世界の一つや二つくらいドーンって滅ぼしたって誰も文句言わないから。それとも、ばばーんって滅ぼす! あぁ。ついでに滅ぼす前に景気づけに一億人とか殺してみても面白んじゃない?」
隕石ドーン!
津波がドバーン!
そんな仕草をするラララくん。
ちゃーん♪
ちゃっちゃちゃっちゃらた、ちゃっちゃらら、ちゃたらったらったー♪
俺には軽快な音楽とともに地球に大きな隕石が堕ち、巨大な津波が世界を覆っていくシーンがはっきりと頭をよぎった。
その軽快な音楽とは裏腹に、世界は滅亡することだろう。
最終的にはお茶の間で、それを見ながら《どくしゃー》と思われるおばちゃんたちがげらげら笑ったりするのかもしれない。
ちなみに津波の水はすべて汚水である。
――しかしこれ、もう視点が完全に神様のそれだな。
さすがは世界を滅ぼす魔王だ。魔王ラララ本人だった。
はにかむ笑顔に思わず俺はやられそうになるが、だからといって滅ぼすわけにはいかないだろう。
俺は一応、サウスフィールド王国の暗部なわけだし!
設定は大事である。
世界を滅ぼしたらダメ。絶対。
だから、俺は世界を滅ぼそうとするラララを止めた。
「まぁ面白くなくなったら世界を滅ぼして新しい世界を作っても良いけど、めんどくさそうだからね。だから止めようね」
若干棒読みになってしまったが。
――俺もいい加減、神視点になって来た気がする。
いや、だからといって世界滅ぼしちゃだめだろう。世界滅ぼしちゃ。
「いいじゃん。ハンスくんのケチ!」
ぷいと横を向いてしまうラララに対し、やっぱり世界を滅ぼした方が……、とも思わないでもないが、すんでのところで俺はとどまった。
「はぁ……、しかし世界を支配なんて簡単にできるものなんだなぁ……」
俺は感慨に耽った。
実際にできることなんてたかが知れているわけだが。
「そうよ。世界を支配したらこの世界の設定とか変え放題! ほらほらぁ。ハンスくーん。世界中の女神とか抱いてみるぅ? 異世界の貞操観念逆転してみるぅ? それとも男女比いじるとかぁ? 男女比1:1000とかにすれば、ハンスくんでも世界中の女の子の注目の的になるんじゃない? 知らんけど」
「――。さすがにそれは男性向け小説でやってくれ」
「ハンスくん! 感度3〇〇〇倍! 感度3〇〇〇倍もお忘れなく! (※ 〇は伏字です)」
「そんなネタどこから持ってきた――」
実際にやろうと思ったらできるところがまた怖いところだろう。
世界の頂点に《どくしゃー》なるものがいたとして、主神の権限はある程度確保できるようだ。
「じゃぁ実際に世界征服してみる? 人間や魔族による戦争とか? きっと楽しいよ? ハンスくん。ほら、きっと、《どくしゃー》くんもこういうのが見たいんでしょう?」
「戦争ねぇ。《どくしゃー》的にそれって面白いんだろうか?」
《どくしゃー》はいつも「平和が一番」とか言ってそうな気がする。
もしも闘争を求めるのであればもっと別の媒体を《どくしゃー》は求めるのではないだろうか?
「さぁ? 私が《どくしゃー》なるモノの存在の考えなんて分かるわけないじゃない! それともハンスくんは分かるのぉ?」
確かにそれはそう。
「俺も分からん!」
さっぱり分からないのであるが、ここは一つ、セオリーというものを発動させてみるか――




