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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第2章 決戦!アージェント王国VSブロマイン帝国
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第269話 ダゴン平原の戦い①

 テトラトリス騎士団を率いて勇者ヤーコブの前から姿を消したジューンは、アージェント王国に向けて騎士団を進軍させていた。そしてその翌日、モカの通信の魔術具が王国陸軍参謀本部につながる。


「こちらジューン・テトラトリス。参謀本部、応答せよ」


「・・・こちら参謀本部、クロリーネ・ジルバリンクです。ジューン様、ご無事でなによりです」


「現状を報告したいので、これから申し上げることをアウレウス伯爵にお伝え願いたいのですが」


「・・・私ならここにいる。早速報告を聞きたい」


「承知しました。昨日、テトラトリス騎士団を率いた新領主ダイム・テトラトリス以下親族及び家臣の魔導騎士全員を討伐し、現在このわたくしジューン・テトラトリスが騎士団を率いて王国への帰還を目指しています」


「・・・そうか、よくやったぞジューン・テトラトリス! それで、他の新領主どもはどうしている」


「他の新領主の所在は不明ですが、現在も街や村を襲っていて帝国軍が対応に追われています。ただ騎士団自体にまとまりがなく、いくつかの小集団に分裂して帝国内をさまよっている模様。見つけ次第わたくしがそういった部隊を吸収して回ろうと思います」


「・・・わかった。帝国の街や村での略奪は許されざる行為であり、見つけ次第処断してくれて結構だ」


「承知しました。それから重要な情報がございます。帝国軍は5人の勇者を核とした5つの勇者部隊を編成し、間もなくそちらダゴン平原の最前線に投入されます。彼らの戦力を今から申し上げます」


「・・・頼む」


「各部隊は20名で構成され、一人の勇者と6人の盾役、6人のアタッカー、そして7人の支援部隊からなり、いずれも帝国軍では最精鋭の騎士たちです。そして勇者の魔力はかなり強力で、昨日の戦闘ではダイム・テトラトリスを上回る魔力を示していました」


「・・・するとキミたちは勇者部隊と行動をともにしていたわけか、大胆だな・・・。それで勇者の魔力は最低でも公爵級あるいはそれ以上ということか」


「はい。ただメルクリウス伯爵が言うには、正確な魔力値は属性数からは推測できないため、かなり個人差があるとのこと。わたくしが同行した勇者が5人の中でどの程度の強さを持っていたのかは不明。ただ、勇者単体ではアルト王子以下わたくしたちが共同で当たれば対処できる程度でしたので、勝てない敵ではありません。それに勇者部隊もダイムたち数十名の魔導騎士たちには苦戦していました」


「・・・なるほど。つまり勇者部隊を機能しないよう支援部隊から叩くのも一つの方法か。それと勇者5人を集まらせずに各個撃破する必要もあるな」


「はい、それがよろしいかと存じます」


「・・・貴重な情報、大変助かる。それから王国への無事帰還を願うが急ぐ必要はない。帝国内に我が軍の騎士団があるこの状況は実に好都合だ。参謀本部とは連絡を密にしておけ。おって作戦指示を与える」


「承知いたしました。なおアルト王子は引き続き勇者部隊に潜入し、帝国軍の侵攻作戦に関する情報を探っています。ただダゴン平原付近はマジックジャミングの影響で通信が繋がりにくいと思われるため、必要に応じてわたくしが中継致します。それから他のメンバーの状況ですが・・・」






 お兄様のパーティーメンバーの一人、ジューン様からの通信を参謀本部が受けた翌日、アウレウス伯爵は全軍に指示を出した。


 帝国軍は間もなく全面的な反抗作戦に打って出るとのことで、推定兵力約10万、そしてその中には勇者部隊と呼ばれる7属性勇者を核とした突撃部隊が5部隊も潜んでいるという。


 しかもこの勇者は強力な魔力を持っており、正確な魔力値は不明だが、念のために600~700程度を見込んでおくべきとの話だった。


 つまりアージェント王国に生まれていれば、余裕で国王を目指せるほどの魔導騎士だということになる。私が多分200近くまで成長したので、その3倍以上の魔力と言うことね。


 ひーーーっ!


 あとクロリーネ様に聞いた話だけど、お兄様は帝国をさらに越えて、東方諸国と呼ばれる地で魔石の破壊工作をしているらしい。


 まさか帝国の東にも、たくさんの国が存在したのも驚きだが、そんな遥か彼方まで行ってしまったお兄様にも正直驚きである。


 まさに冒険者の鑑だ。





 さてそんな勇者対策のため、私たちメルクリウス軍も参謀本部より指示のあった新フォーメーションを組んでみた。


 どういうことかと言うと、私たちアージェント王国の軍の構成が、各当主家が率いる騎士団単位であることに着目し、敵勇者部隊は各騎士団の司令部を狙って特攻をかけ、魔力戦で一気に当主を殺害する各個撃破戦術をとってくるのだそうだ。


 それに対抗するために、各騎士団単位の統率は当主や騎士団長以外の別の者に任せて、当主たちは各軍の司令部に集約してそこから指示を出す。これは帝国式の国軍形式に近い態勢だそうで、私たちの場合はベルモール子爵たちが全員このメルクリウス騎士団司令部に集結するということだ。


 そして集まった当主級の魔導騎士たちは、5人一組のチームを結成して一人の勇者と対抗する。


 そしてその5人をサポートするために、勇者部隊と同様の配分で、盾役やアタッカー等を担う20名以上の騎士を配備するという。


 つまり疑似勇者部隊を多数作って、逆に勇者部隊を各個撃破してしまおうと言うことである。




 それはいいんだけど、帝国軍の超極秘事項であろう勇者部隊の構成やら戦術やらを、ここまで丸裸にしたのが凄すぎる。どうやらジューン様たちが勇者部隊に潜入して勇者から直接聞き出したらしいのだが、何をどうしたらそこまで調べられるのだろうか。


 そしてアウレウス伯爵がその情報を全面的に信用しているところを見ると、余程その情報に信憑性のある根拠があるのだろう。




 で、私たちメルクリウス軍のチームはと言うと、


①メルクリウス軍中級貴族チーム

 ベルモール子爵、ロレッチオ男爵、ナタリーさん、マール先輩、アネット先輩


②クロリーネ様チーム

 クロリーネ様、イリーネ王女、スピアちゃん、お稲荷姉妹


③野郎チーム

 サルファー、ダーシュ先輩、カイン先輩、アイル、私


 この3つが合計魔力値が高めのチームなのだが、他にもメルクリウス一族のうちカイレンさんたち海軍に行かなかった分家筋のみんなや、ベルモール子爵やロレッチオ男爵たちの分家筋や家臣などの中から魔力が100以上のある魔導騎士を選んで、合計700程度になるようにして組み合わせると、わりとたくさんのチームができた。



 一方、騎士学園の他の生徒ではサーシャ先輩やパーラ先輩たちが魔力が強いのだが、みんな自分の実家の騎士団の方のチームに呼ばれて、メルクリウス軍から離れていった。今ここに残っている生徒は全て魔力値が100未満の生徒たちである。


 ちなみにメルクリウス軍では、各チームごとに必要な20名のサポート部隊を、全て銃装騎兵隊にした。だって剣や槍で戦うより、銃で武装した騎士が援護した方が強そうだから。







 そしてその二日後、帝国軍の大攻勢が始まった。






 帝国軍は中央に厚い陣形をとり、40000の帝国兵が、中央に布陣する王国陸軍18000に総攻撃をかけた。それはまさに電光石火の進軍で、一気に距離を詰めると両軍が混戦状態となり、そしてその一帯のマジックジャミングが消失した。


 なお、私たちは作戦通りに対勇者部隊用チーム全員がこのメルクリウス騎士団司令部に集まっていて、勇者たちの襲来に備えている。そしてクロリーネ様が通信の魔術具で参謀本部と通信しながら、戦況をみんなに解説している。


「クロリーネ様、ジャミングが消失したということはつまり・・・」


「おそらく勇者部隊が突撃をかけているのだと思います。彼らもわたくしたち同様、魔力で攻撃を行う魔導騎士。彼らにとって、マジックジャミングは邪魔になりますからね」


「そして私たちに範囲魔法を撃たせないよう混戦状態を作り出してしまったわけね。でも、帝国軍はなぜよりによって中央の王国陸軍に突撃をかけたのかな」


「おそらくここが一番弱いと思ったのではないでしょうか。これまでの戦いで一番損耗率の大きいのが王国陸軍ですので。ただし魔導騎士は別格。あそこには王国の真の強者がそろってますからね」


「確かに! アウレウス公爵兄弟が直接戦うとは思えないけど、アウレウス派だけでもバーナム、マーキュリー両伯爵は相当の強さだとの専らの評判ですよね。あとコモドール侯爵とその配下も不気味な存在だしね。それから私が知っているだけでも、ジルバリンク侯爵やティアローガン侯爵、ステラドール伯爵などシュトレイマン派の上級貴族家も一線級の騎士を投入してきてるし。中立派は・・・フィッシャー騎士団の方に参戦してるか。3侯爵軍の方に行っちゃった残念な人もたくさんいそうだけど」


「このあたりは、帝国軍が諜報活動を怠ったのかもしれませんわね。仮にアウレウス兄弟を狙い打ちにする特攻作戦ならある意味正しいとは存じますが、そうでないのなら完全に失策ですね」


「この諜報力の差で2倍近くの兵力差をどこまで挽回できるのか。私たちメルクリウス軍の方にも、帝国軍25000が迫ってますから気を引き締めないと!」

次回もこの続きです


お楽しみに

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