第242話 港町ルメール
翌朝、港町ルメールについた俺達は、早速ルメールにある冒険者ギルドへと向かった。
「なんで冒険者ギルドに向かうんだ。鉱山に向かうなら、馬を調達してすぐに出発すればいいだろう」
「アルト王子、俺たちは冒険者ですからまずはギルドに立ち寄るのが自然で目立たない行動です。情報収集もできるし寄っておいて損はありませんよ」
「なるほど、さすがダンジョン部の部員だっただけのことはあるな」
ルメールギルドの受付で登録を済ませた俺たちに、受付嬢が感心するように話しかけた。
「あなたたちって新人冒険者なのに全員ランクBってすごいわね。それに全員が魔力を持ってるパーティーなんて、中々ないわよ」
「俺たちみんな田舎から出てきて、世間の事をまだ良く知らないんだ。他の冒険者に知られると絡まれそうで怖いからこの事は黙っていてくれないか」
「もちろんよ」
「それから早速クエストを受けたいんだが、何かオススメはあるか」
「オススメというわけではないけど、冒険者を長く続けるためのコツならあるわよ。ギルドでは基本的に自分のランクよりも一つ上までならクエストを受けることが出来るんだけど、最初は自分と同じランクかそれより下のもので経験を積んだ方がいいの」
「だが俺たちは手っ取り早く金が欲しいんだ。ランクAまでは受けられるんだろ」
「まだ若いんだしそんなに焦らなくてもいいと思うけど、今日は高ランクのクエストもいくつか出ているし気に入ったのを探してみてね」
「ということでちょっとクエストをのぞいてみよう」
俺たちはぞろぞろと掲示板の前に集まった。そこにはランクE~ランクAまでのクエストが整然と並んでいた。俺はランクA,Bあたりのクエストを流し見ると・・・ちょうど面白そうなものを見つけた。
「水龍スプラドンの討伐」ランクA
スプラ湖に生息する水龍スプラドンが繁殖期に入った。そのうちの1体が湖から離れて人里に降りてきて村を壊滅させた。凶暴化しておりさらなる被害が想定されるため、至急討伐もしくは湖への送還を求む。
報酬10万G。
「このクエストを受けてみようか」
俺がそういうと3人娘が理由を聞いてきた。
「安里くん、これのどこが面白そうなのでごわすか」
「何だよモカ、安里くんって」
「モカって名前呼びしてくれたっ! これはハーレム入りも近いでごわす」
「近くねえよ! やっとお前たち3人の区別がついてきただけだ。・・・それで理由だが、このスプラ湖は目的地である魔石鉱山の近くにあるんだ。だから鉱山に行くついでにクエストもこなせば帝国のお金も手に入ると思ってな」
「やりますな安里氏、抜け目がない」
「だからなんで安里呼びなんだよ、ルカ」
「ネオン氏改めクレア氏が安里くんと言っているのでわたくしたちもそう呼ばせていただく件について」
「ネオンの真似か。お前たちネオンと仲いいからな」
「わたくしだけ名前呼びされていない件」
「ミカちゃんはハーレム要員から外れたでごわす」
「仲間はずれはヒドすぎる件」
「じゃあ、このクエストを受注することでいいか」
「「「異議なしーっ!」」」
そして俺が依頼票を持って受付嬢のところに行こうとすると、受付嬢もこちらに向かって歩いてきた。
「受付嬢さん、このクエストを受注したいのだが」
「いいわよ、でもちょっと待ててね。今新しいクエストが到着したので、掲示板に張り付けるから」
「新しいクエスト?」
「これはランクSの依頼だから、あなたたちには受注できないんだけど」
「ランクS! それはすごい・・・どんなクエストなのか興味あるな」
「ふっふーん、そうでしょ! ランクSなんてそう滅多に出てくるクエストじゃないから。でも今回のは本当にすごいのよ」
「具体的には」
「魔族討伐よ!」
「魔族! 魔族なんかがいるんですか、すげえ!」
「そうなのよ。あなたたちはいなか育ちだか知らないかも知れないけれど、実は魔族が最近活発化してきてこの間なんかスタンピードも発生したらしいのよ」
「エルフや亜人の次は魔族。ひょっとしたら吸血姫の真祖も実在するかもな。しかしここに来てからいよいよ異世界っぽくなってきたな。帝国は最高だぜ!」
「こらアゾート、そんなことで帝国最高などとバカなことを言ってるんじゃない。それに魔族なんて恐ろしいものを相手にするな。命がいくつあってもたりん」
「そうよ、このアルトくんの言う通り。あなたたちは新人冒険者なんだから、ちゃんと経験を積んで行かなくちゃ。じゃあ、依頼票は掲示板に貼っておくけど、あなたたちは読むだけにしておきなさいね」
そう言って受付嬢は依頼票を張り付けてカウンターに戻って行ったが、俺はドキドキしながらその依頼票の内容を読んでみた。
「魔族討伐」ランクS
港町トガータの軍港が突如魔族の襲撃を受けて壊滅。魔族の正体は不明だが炎タイプのモンスターの可能性が高い。一撃で軍港を破壊する攻撃力と凶悪性を兼ね備えているため最大限の注意が必要。
討伐報酬100万G、魔族の情報提供についてはその内容に応じて最大10万G。
「・・・・・」
「おいアゾート、これって」
「これほどガッカリしたのは久しぶりですね・・・・魔族が存在するって期待したのに、こんなの魔族でもなんでもないじゃないですか」
「本当よっ! もう完全に頭に来た。誰が炎タイプのモンスターよ!」
「しーーっ! 観月さん声が大きい」
「そうだよせりなっち。私たちのことがバレたらどうするのよ」
「だってこの私を捕まえて炎タイプのモンスターって私はポケ○ンじゃないのよ!」
「誰も観月さんのことをヒ○ザルだなんて思ってないから」
「ヒコ○ルなんか絶対に嫌。せめてヒ○カゲにして」
「ヒト○ゲならいいのかよ!」
結局俺たちは水龍スプラドン討伐のクエストを受注して、スプラ湖へ向かう乗合馬車に乗り込んだ。この馬車は冒険者ギルドが仕立ててくれた貸し切りの馬車であり、ここに5組のパーティーを乗せて、午後には港町ルメールを出発する。
10人乗りの馬車3台に分乗するが、他のパーティーはみんな4人一組なのに対しうちのパーティーだけ11人と1人多いので、俺が別の馬車に乗ることにした。
「ちょっと待って、安里先輩が行くなら私も行く」
「いいえ、あの人にはわたくしが隣につきますので、セリナ様はのんびりとおくつろぎください」
「安里君の冒険者としてのパートナーはこの私だから、二人はいなくても大丈夫。私に任せておいて」
「バカクレアは引っ込んでて。ラノベだとこういう時はメインヒロイン様の出番なの」
「いいえ、さすがにセリナ様に男冒険者ばかりの馬車にお乗りいただくことはできません。ここはあの人と20年間も連れ添った古女房のこのわたくしが」
「いいえ、ここは安里君の分身で主治医のこの私が」
3人が無駄にもめ始めたので、アルト王子が気を使って、俺の代わりに馬車をうつろうか言いかけた時、エレナが3人の会話に割り込んで提案した。
「じゃあ、じゃんけんで決めればいい」
「エレナ、ナイスアイディアね。じゃあフリュさん、バカクレア、じゃんけんよ」
「「「じゃんけんポイ!」」」
・・・・・
勝ったのはエレナだった。
「じゃあ、エレナがアゾートの面倒を見てあげるからみんなは大人しくこの馬車に乗っていてね」
「「「・・・・・」」」
俺とエレナは2パーティー8人が乗る馬車に乗り込んだ。
「アゾートとエレナだ。俺たちのパーティーは人数が多いので、こちらに乗せていただくことになった」
すると冒険者たち(全員オッサン)は不愛想に一瞥すると、何も言わずに場所だけ空けてくれた。そこに俺とエレナが座ると、すぐに馬車は出発した。
次回、スプラ湖の道中で事件発生
ご期待ください




