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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第2章 決戦!アージェント王国VSブロマイン帝国
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第238話 シャルタガール領包囲作戦(クロリーネ戦線②)

 オットーは全軍を率いて全速力で戦場を離脱した。そこから馬がへたるまでひたすら南へと逃走し、気が付いた時には騎馬兵は500騎を切っていた。


「他の奴らはどうした」


「多くの者は先ほどの謎の攻撃や待ち伏せを受けて戦場に取り残されたままです。殺されたか敵の手に落ちたか、逃げ延びたとしても四散して行方不明です」


「・・・結局残ったのは1500騎中たった500騎か」


「そうですね。領地にもどれば城内に2000の兵がいますが、精鋭と呼べるものはその中でも500騎にも至りません。あわせて1000騎足らずでどのように戦いますか」


「こうなったら精鋭のみの1000騎で各地を転戦するしかない。徴兵した領民や傭兵、冒険者に頼って兵数ばかり増やした結果がこれだ。4か所を転戦する作戦なら、最初から精鋭のみで実行していればこんなことにはならなかった」 


「でもそれだと兵力の絶対数が足りませんが」


「・・・そこなんだよ。どうしてメルクリウス軍はあれだけ精強な兵をたくさん持っているんだ!」


「あそこは常に戦争ばっかりしている領地だし、今やクリプトン領に次ぐ経済力を誇るお金持ち。我々とは何もかも違います」


「そこがおかしい! たかが騎士爵あがりのアゾートがそんなに豊かで、王族である俺たちがなぜヤツの足元にも及ばないのだ! まさにその歪みを解決するために決起したはずなのに、その歪みによって俺たちは追いつめられている。正義は一体どこにあるのだ!」


「オットー様・・・正義を問うのは後回しにして、今は軍の再編が大事です。早くシャルタガール領へ帰還いたしましょう」





 オットーたちはそこから隠れるように移動を重ね、二日後にはシャルタガール領の領都を望む位置にまで到達した。


「よし、ここまでは敵に察知されずどうにか来れた。だが領都の城門前に張り付いているメルクリウス軍をどうやって突破して城内に逃げ込むかだ」


「敵は約1000騎で我々の2倍。まともにぶつかれば我々は入城する前に全騎討ち死にするでしょう」


「ならこういうのはどうだ。敵に気づかれないように地下のルートから城内に進入して、味方と合流する。そして歩兵1500を外の敵に突撃させて疲弊させ、俺たち騎兵1000をもってこれを叩く。その後は、アトレイユ子爵領の付近で行方不明になった騎士たちを回収して仲間を増やす」


「それしかなさそうですね・・・。では地下ルートへ迂回しましょう」




 だがオットーたちが騎士団を迂回させているところをメルクリウス軍の斥候に発見され狼煙を上げられる。


「しまった・・・地下ルートが敵にばれてしまう」


「逃げましょう、オットー様!」


「わかった。だがどこへ?」


「敵も我々を完全に包囲している訳ではありません。一番薄い部分を突破してそのまま敵の追手をふりきりましょう」


「・・・東方向が騎士の数が少ないな。そこに向けて全騎突撃せよ!」




 オットーは敵の手薄な部分に果敢に攻め込んだが、メルクリウス軍も柔軟に陣形を変えてオットーたちを易々とは逃がさない。


 そして熾烈な戦闘が始まる。


「全騎、オットー様を守れ!」


 隊長の檄に騎士たちは奮戦するが、一騎、また一騎と倒れていき、メルクリウス軍の包囲網を突破するころには100騎に満たない軍勢にまで減らされていた。


 そして気がつくと、オットーたちはなぜか領都シャルタガールの城門前にたどり着いていた。


「いつの間にこんなところに出てきたんだ俺たちは」


「わかりません。でも必死に逃げているうちに、なぜかここに来てしまったようです」


「だが敵の姿がどこにも見えない。・・・これはチャンスだ。早く城内に逃げ込むぞ」


「はい! 全騎、領都シャルタガールに帰還する!」


 オットーは息の上がった馬に鞭を打って、城門に向けて馬を走らせた。だがあと一歩で城門のところで、待ち伏せていたメルクリウス軍が突然現れて、その行く手を阻止した。


「伏兵か!」


 馬を急停止させて、伏兵と対峙するオットー。


 茂みに隠れていた敵の伏兵が次々に姿を現すと、歩兵ばかり300人が妙な武器を構えてオットーたち100騎を取り囲んでいた。


 彼らは見たことのないような細い筒の先をこちらに向けているだけで、槍もボウガンも魔法の杖も何も持っていないのだ。


 だが、




 タタタタタタンッ!


「ぐわう!」


「ぎゃあー!」


 伏兵の一部から乾いた破裂音が聞こえたかと思うと、一瞬で10騎が倒されてしまった。


「オットー様! あれはアトレイユ子爵領で聞こえた破裂音。あの時の攻撃はこれです!」


「・・・確かに! だが俺たちは今、何の攻撃を受けたのだ、カール!」


 オットーの騎士たち全員は、混乱とそして恐怖のどん底に叩き落とされた。だがオットーたちの周囲には続々とメルクリウス軍がその姿を現し、やがてこの平原を埋め尽くすまでに数が増えていった。


「オットー様・・・我々は完全に包囲されました。敵の数は不明。少なくとも数千騎規模です」


「そんなバカな・・・シャルタガール領には1000騎しかいないとの情報だったのに、なぜ数千騎もいる。どうしてこうなったんだ」


「わかりませんが、この状況だけを見れば我々は負けたということです」


「負けた? 俺はまだ何もしていないんだぞ! まだダゴン平原に行ってもいないし、メルクリウス伯爵の領地の一つも奪ってないし、それどころか敵と真正面から戦ってすらいない。12000もの大軍を集めて蜂起したのに、俺の戦いはこれで終わりなのか」


「・・・これが現実です」


「・・・嫌だ! ここで負けたら俺は一体どうなるんだ。父のシャルタガール侯爵も次期当主の兄上も両方とも殺害し、臣下たちを脅しながら大量の報奨をちらつかせて従えてきたのに、ここで終わったらこのシャルタガール領はこの先どうなるんだ!」


「少なくとも我々にはもうこのアージェント王国に居場所はありません。捕まれば確実に処刑されますし、シャルタガール家も滅亡、領地はおそらくアージェント王家やメルクリウス伯爵のものになるでしょう」


「くそっ! くそっ! なんだよ、これだったらブラブラして何もしない人生を送っていた方がはるかにマシだった。アッシュの言うことを聞いてしまったばかりに、俺は全てを失ってしまった! くそっ!」


「・・・オットー様、降伏なさいますか、それとも全騎で玉砕しますか」


「・・・そうだ、一騎討ちを申し込もう。貴族の決闘だよ。敵の総大将であるメルクリウス伯爵と差しで勝負して、俺が勝てたら国外、ブロマイン帝国に亡命するのを見逃してもらおう」


「伯爵には何のメリットもないじゃないですか。とても応じるとは思えません」


「だがこれしかないんだ。頼むカール、交渉してきてくれ!」


「・・・ふう。わかりました、ダメでもともと交渉してみましょう。でもダメならもはや降伏しかありませんがそれでいいですね」


「・・・ああ。一か八か、カール頼む」






 カールを使者に送って結果を待つだけのオットーは、その間周囲を敵に囲まれて生きた心地がまるでしなかった。敵は数千にも及びみんな完全に統一された真新しい装備に身を固め、騎兵だけでなく歩兵ですら整然と行動している。


「メルクリウス軍とは、これほどまでに洗練された部隊だったのか。およそアージェント王国の騎士団とは雰囲気が違うな。・・・そうだ思い出した。こいつらって秋の叙勲式で見たディオーネ領の軍隊じゃないのか。確かブロマイン帝国式の領民だけの軍隊」


 ようやく敵騎士団の正体に気がついたオットーの所に腹心のカールが戻ってきた。


「オットー様! 信じられないことに、敵の総大将に一騎討ちを受けてもらえました! 勝負に勝てば国外追放で許してもらえるそうです!」


「本当か! でかしたカール! ようしメルクリウス伯爵め、魔法の実力ならこのオットーが負けていないことを思い知らせてやるぞ。これでも王族の端くれ、魔力と格の違いを思い知るがいい!」


「・・・それがオットー様、この軍の総大将はメルクリウス伯爵ではありませんでした」


「・・・え、何だって?」


「勝負を受けてくれたのは、メルクリウス伯爵ではなく、ディオーネ領民軍総司令のクロリーネ・ジルバリンク侯爵令嬢です・・・」


「クロリーネ・ジルバリンク・・・え? クロリーネって秋の叙勲式で空から舞い降りて、なぜかメルクリウス伯爵と仲良さそうにしていた、シュトレイマン派の王族! 伯爵はまだ年端もいかない少女に一騎討ちを押し付けたのか!」


「いいえ・・・伯爵はそもそもこの戦場にいないそうで、メルクリウス軍の全体指揮をクロリーネ様がとられているそうです」


「そんなバカなことがあるか! クロリーネって言えば、王国社交界でつまはじきにされていた引きこもり姫! 2度の婚約破棄で新たな婚約者も決まらず、アージェント騎士学園にも通えなかった落ちこぼれ! 俺たちと同じような境遇だったはずなのに」


「・・・と、とにかくクロリーネ様が一騎討ちを受けてくれたのです。チャンスを無駄にしては行けません。参りましょう、オットー様」

男祭り開催中・・・。


でも次回は確実に正常化される予感が

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