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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第2章 決戦!アージェント王国VSブロマイン帝国
222/426

第216話 勅命

 ザザッ!




 勅命という言葉に、全員が一斉に姿勢を正す。


 すると国王から、


「諸君、ブロマイン帝国がいよいよ我がアージェント王国に大攻勢を仕掛けてきた。帝国は、海においては戦艦級の艦艇を含む大艦隊を既に母港から発進させ、陸においてはダゴン平原に追加の軍勢を集結中との情報が入ってきておる」


 ザワザワ・・・


「王国国内に目を向ければ、シャルタガール侯爵領、テトラトリス侯爵領、ザクソン侯爵領、ポートリーフ侯爵領の4侯爵家でクーデターが発生し、新領主を名乗る反徒どもが騎士団を引き連れてダゴン平原へと集結しつつある」


 ザワザワ・・・


「また王国の各地では民衆による暴動が多発。多くは新教徒によるものと判明している。これら一連の動きは全てブロマイン帝国による策謀の結果と判断。この我が王国の一大事に対し、王国の全勢力を上げて帝国の攻勢に反撃を加えるのだ!」


「「「オオオッ-!」」」


 謁見の間に集まった貴族たちは、国王の演説からこの王国が置かれている危機を感じ取り、そしてそれに一丸となって立ち向かおうと言う国王の檄に応じて、室内の空気は一気に過熱した。




 国王は満足そうに貴族たちを見渡すと、


「これより勅命を言い渡す。帝国への反抗作戦は従来のような各領地の騎士団単位ではなく、アージェント国軍としての形態をとる。陸軍の総大将はアウレウス公爵をもってこれを任命する。すべての騎士団は派閥の如何に関わらずアウレウス公爵のもと指揮命令系統を一本化する。帝国からの侵攻を完璧に防ぐのだ」


 ここで国王は一呼吸おき、貴族たちの反応を見る。



「おいおい、騎士団単位ではなく国軍だって。なんかイメージがわかないな」


「俺もよく分からんが、シュトレイマン派の俺たちがアウレウス公爵の指示に従うということらしい」


「本当かよ・・・シッ、国王の話がまだ続くぞ」





 多くの貴族が混乱しつつも、国王の話に多大なる関心を示していることは伝わってきた。国王は手応えを感じつつ、勅命を続けた。


「うおほんっ! 海軍の総大将はシュトレイマン公爵をもってこれを任命する。各領地の海軍及び艦艇は全てシュトレイマン公爵の元へ集え。そして帝国艦隊を海の藻屑にしてやれ!」



「陸がアウレウスなら、海はシュトレイマンか! なるほど、アウレウス派の艦艇はシュトレイマン公爵の指揮のもと戦うということか」


「それぞれの得意分野を活かして、王国全体で一丸となって戦う。これが国軍ということか」


「これだと騎士団ごとにバラバラにならずに、最初から連携を考えて軍を進めることができるな」


「おいちょっと待て、国王からの勅命はまだ続きがあるみたいだぞ」




 国王は場が静まったのを確認すると、さらに勅命を加えた。


「そして我が国はこの機会をとらえてブロマイン帝国に逆に侵攻をかける! いつまでも攻められっぱなしなのにももう飽きたわ。逆にやつらの領土を火の海にしてくれる!」


「「「えぇーーーーーっ!?」」」



 帝国に逆侵攻をかけるなど、国王のまさかの発言に両公爵含めすべての参集者が度肝を抜かした。


 ブロマイン帝国の建国以来、彼らからの侵略に対する国土防衛戦しか行ったことがなかった貴族たちは、今回も当然、陸海両軍による防衛戦をイメージしていた。まさかここで帝国へ逆侵攻をかける発想は全くなかったのである。だが、


「帝国への突撃は、陸海軍とは別に突撃部隊が行う。その総大将はこのワシだ」


「「「えぇーーーーーっ!?」」」



 さすがにメチャクチャである。


 アウレウス公爵が慌てて、この暴走老人を止めに入った。


「こ、国王陛下! それだけはお止めください!」


「なぜだ。ワシが総大将だと何が悪い」


「なぜ国王自らが帝国に突撃するのですか! いいかげん、ご自分のお年を考えてください」


「慌てるな公爵。総大将は国王のワシだが突撃するのは王家の若い衆だ。アルト王子とエリザベート王女、この二人がワシの代わりにブロマイン帝国へ突撃をかける」


「えーーっ! どうしてこの僕が帝国に突撃を?!」


「わたくしも、そんな話全く聞いておりませわっ!」



 どうやら本人たちも知らなかったようだ。王太子も冷や汗をかいている。


 あの国王、見かけは穏やかそうな老人なのに、結構ワンマンなんだな。




「それにワシの代わりに現場で指揮を取るのは、メルクリウス伯爵だしな」


「なにーーーーっ!」


 なんで俺だよ! そんな話全く聞いてないよ!


 しかも驚いているのは俺だけではなく、ここにいる貴族全員だ。


「こ、国王、正気ですか? 帝国への突撃部隊も如何なものかと思いますが、国王の名代がなぜメルクリウス伯爵なのですか。まだ学生ですよ!」


「宰相、ワシは適任は彼しかおらんと思うのだが、なぜダメなのだ」


「彼はまだ未成年だし爵位も伯爵です。それに魔力もエリザベートやアルトより低い」


「プーーーッ、クックックッ」


「国王、何が可笑しいのでしょうか?」


「いや、宰相が言っておる理由が全て的外れだから、あまりに可笑しくてな」


「的外れではないでしょう」


「メルクリウス伯爵が未成年という前提が間違っておるし・・・確かに今は伯爵だな。魔力についてはアイツはそもそも規格外。全く問題にならないだろう」


「・・・国王のおっしゃってる意味が、全くわかりかねます」


 アウレウス公爵が完全に呆れているが、俺からはフォローのしようがない。まさか俺の正体を明かす気じゃないだろうな、あの国王。


 その国王が俺にウインクしている。


 まさか!




「静まれ諸君! 今からこのワシ自らが、王国の歴史の講義をしてやろう」


「げっ、国王の歴史話が始まってしまった。これは長くなるぞ」


「聞こえとるぞ」


「しっ失礼しました!」


「さていきなりだが、この王国にはかつてクリプトン公爵家と並ぶ名門貴族家があった。その名もメルクリウス公爵家だ。だが248年政変でクリプトン家に滅ぼされて以降、歴史から完全に抹消されてしまった」


 この事実は王族しか知らないアージェント王国最大のタブーであり、クリプトン家の名誉のために、王国の歴史からその事実を隠蔽する密約を交わしていたのが、360年王政復古の裏の真実。


 だがそれを、この国王はあっさりと公表してしまった。ざわめく貴族たちに国王が追い討ちをかける。


「そして、我がアージェント王国の建国を成した勇者パーティー。そのメンバーのうちラルフ・アージェント、セシル・クリプトン、クレア・ハウスホーファの3名以外は全て偽り」


 ザワザワ・・・


 貴族たちは、自分がこれまで信じていた歴史が偽りであることを、自らの国王、それも歴史マニアの国王によってウソであることが明かされた。


 その衝撃はどれ程のものか。




 会場のどよめきをよそに、国王の話は続く。


「その真のメンバーとは、アサート・メルクリウス、セリナ・ミツキ、そしてデイン・バートリーだ。そしてアージェント、クリプトン、メルクリウスの3家こそが、我が王家オリジナル3家門である」




「アサート・メルクリウスって、あの絵本の主人公ではないか。まさか実在の人物だったのか?」


「あんな荒唐無稽な人物がまさか建国の勇者パーティーにいたとは!」


「もう、何がなんだか分からなくなってきた。王国の真実を教えてくれて!」




 最早、貴族たちは混乱し過ぎて錯乱状態だが、国王があまりに暴露し過ぎたため、もはや両公爵をもってしてもフォローすることができなくなっていた。


「さて諸君。その3つの血筋のうち、クリプトン家はシュトレイマン、アージェント家はアウレウスへ集約されつつあり、今のアージェント王家は実はその混血に過ぎない」


「こ、国王、それは王族の守秘事項。それを何もこのような場所で」


「いいのだよ宰相。このことはもともとメルクリウス一族が表舞台に戻った去年の時点で、公開すべき事項だったのだよ」


「いやしかし・・・」


「さてそんな混血のアージェント王家だが、その国王たるワシは何者だろうか」


 突然、国王の身体から膨大な魔力が吹き出した。


 ズズズズズ!




 な、な、なんだこの魔力は・・・。


 あのオーラから見て、国王はどうやら5属性の適正を有するようだが、その配分には随分と偏りがある。圧倒的に強い魔力を示すのは、


 その時、誰かが突然叫びだした。


「な、何だ、国王のあの目! 真っ赤に変化したぞ」



 火属性・・・・イリーネ王女と同じ、この国王にはメルクリウス一族の特性が発現していたのだ。


「このとおりワシはメルクリウス一族の血筋の王だ。だからワシの名代にメルクリウス伯爵を指名して、何がおかしいというのだ」


 ま、まじか・・・。


 場内が衝撃を受けるなか、王族の列で静かに立っていたイリーネ王女が、その赤い目で国王を見ていた。少し潤んだその瞳には、驚きと喜びが浮かんでいた。


 王族の中で孤独を味わっていたイリーネ王女は、まさか国王陛下が自分の仲間だったことに喜びを隠しきれないでいた。

次回、国王からの具体的な指示が下る


ご期待ください

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― 新着の感想 ―
[良い点] うわー 厳粛なはずの場が陛下の無茶でアホな場に。 [気になる点] メルクリウス一族って男性も目が赤いんでしたか、1話でアゾートの目は普段は茶色と書いてあったと記憶してます。 エリザベートが…
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