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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第209話 選挙活動開始

 選挙活動が始まってから私の生活パターンは大きく変わった。朝早めに登校して、校舎前で握手会を開催するからだ。


「今日も応援に来てくれて、ありがとう!」


 行列の先頭の男子生徒と握手をして、にっこり笑って会話をする。そして二コラが時間を計って、次の男子生徒を案内する。


「生徒会長はダーシュ。ダーシュに清き一票を!」


「ボロンブラーク校の生徒会長はダーシュが一番!」


「アウレウス派なら楽しい学園生活を保障します!」


 そして私の隣では、3人組が一生懸命に声を張り上げている。


 生徒会室で一件の後、ダーシュの生徒会長選挙への立候補と私のサポート要員登録がすぐに3人組に知られ、ターニャ様を筆頭にこの3人組も選挙に協力することになったのだ。


 それからというもの、私たち4人は早朝からパステルカラーのフリフリのコスチュームを着て、テンション高めにアイドル活動をしているのだ。


 き、きつい・・・。


 そしてダーシュは、そんな私たちの後ろで台に登って演説をしている。これを冬休み前の公開討論会まで続けないといけないのか・・・。




 だが少し離れた場所では、カイン達も選挙活動をしていた。しかも向こうは握手会ではなく、カレン様とモナ様によるミニコンサートだ。


 モナ様の華麗な演奏に合わせてカレン様のプロ並みの歌唱力で生徒たちを魅了しており、集まっている生徒もこちらは男子生徒しかいないのに、向こうは男女両方いて人数も多い。


 て、手ごわい・・・。





 でも、今向こうを気にしても仕方がないので、私はとにかく行列の男子生徒たちと握手をしていく。


「リーズ、がんばってね。応援してるよ」


「サルファー・・・また並んだの?」


「ああ。リーズを勝たせるためには、僕は何度でも並びなおすさ」


「いや、私が勝ってもしょうがないというか、これダーシュの選挙活動だから」


「・・・ダーシュか。そういえばこの間の叙勲式で、王都に二人で遊びに行ったと聞いたが、ど、どこへ行ってきたんだ」


「あ、それなんだけどね。実は・・・」


「はい、時間終了です。学園長はまた後ろに並び直してください」


「くっ・・・二コラのやつめ」


「じゃあ、サルファーまたあとでね」





 サルファーが最後尾に並び直すのを見ながら、こんなことでダーシュが本当に生徒会長になれるのか、よくわからなくなってくた。


 さて、次の男子は、


「リーズ、おはよう」


「あ、アイルも列に並んでるの? 親衛隊は裏方をしてるはずじゃ」


「裏方は元AAA団のみんなに任せた。彼らには去年のセレーネ会長の選挙でのノウハウがあるからね」


「AAA団って、お兄様の敵対組織だったはずなのにどうして私の応援をするの?」


「彼らはとっくにリーズ親衛隊の隊員だし、彼らは純粋にアイドルのファンをやってるだけだから」


「そっか。でもアイルはクラスメイトだし、わざわざこんなところに並ばなくても」


「教室ではリーズと握手なんかできないだろ。そろそろ時間だ。じゃあ、また教室で」


「うん、じゃあ後でね」


 アイルの後も私の親衛隊が順番に私と握手をしていったが、この人たちと握手をしてもしなくても、ダーシュの投票には何の影響もなさそうな気が・・・。


 やっぱり、このままではダメだ!






 放課後、私はアウレウス派閥会合を召集した。


 生徒会長選挙を戦い抜き、ダーシュを当選させるための作戦を練るためだ。私は別にダーシュに会長になって欲しいわけではないんだけれど、どうせやるからには勝ちたい。


 というわけで食堂のテラス席にテーブルを並べて、お茶とお菓子も用意して、これで準備万端。


 さあこれから貴族派閥の悪巧みだ、ウッシッシ。




「それではわたくしサーシャ・ベッセルがこの会合の進行をさせていただきます。今日の議題は、リーズから提案のあった生徒会長選挙の作戦会議です」


 サーシャ先輩の仕切りで始まったが、早速、質問の手が上がった。


「はい学園長」


「なぜセレーネが司会をやらないんだ?」


「セレーネ会長はもう学園から帰りました。というか今頃は王都アージェントにある魔法協会で秘書をしています、クロリーネと一緒に」


「魔法協会で秘書? なんで?」


「サルファーはうるさい! ていうかなんでサルファーがこの会合に出てるのよ。学園長は選挙と関係ないんだから、すぐにここから出ていってよ」


「そんなこと言わないでくれよ、リーズ。僕もキミを応援したいんだよ」


「だったら、余計な質問なんかせずに黙って座っててください、もうっ! サルファーは邪魔なんだから」


「すみません・・・」


「ついでに私の方から補足すると、カレン様とモナ様のミニコンサートが好評で浮動票があちらに流れてると思うの。ここから巻き返す作戦をみんなで考えて」




 さっそくパラパラと手が上がったが、サーシャ先輩が最初に指名したのはアイルだった。


「ここはやはり、リーズと3人組による歌とダンスを前面に出して、ミニコンサートに対抗すべきだ。そのために我が親衛隊はつきっきりでリーズたちをサポートするから、ダーシュは心置きなく何処へでも勝手に演説に出かけてくれ」


「うーん、それだと今とあまり変わらないし、カレン様を凌駕するようなパフォーマンスが私たちにできるかという問題もあるのよね。他にないかな?」


 私がダメ出しすると、次にサーシャ先輩が指名したのはダーシュだった。


「リーズの言うとおり歌とダンスだけでは足りない。ここは正攻法に戻して街頭演説を手分けして行おう。今のような楽しい学園はアウレウス派だからできることをアピールして回るんだ。とにかく人手がいるので二人一組になって学園中に分散する。そしてチーム分けだが、候補者の俺が目立つためにリーズには隣に付いてもらう。あとは適当に考えてくれ」


 それに反論したのはアレンだ。


「ダーシュ、それだとダーシュとリーズだけに注目が集まり過ぎて分散する意味が全くない。メインどころは敢えて分散させて戦力を均等化させる。・・・そうだな、ダーシュはターニャと、リーズはアイルと組ませるぐらいがバランス的にちょうどいいな」


「ちょっと待ってくださいませ、アレン様!」


「メリア様?」


「ペアを変えるのは賛成ですが、組み合わせについてはもう少し熟考すべきです。少なくとも、リーズ様は人気ナンバーワンアイドルですので、バランス的にはソロでも十分アピールできます。もしリーズ様を一人にするのが心配なら、選挙戦に関係の無い学園長がそばに付いていてあげればよいのです」


「ちょっと待ってください、メリア様!」


「ヒルダ様?」


「いつの間にか街頭演説が前提になってますが、本当にそれでカレン様のミニコンサートに勝つことができるのかわたくしは疑問です。ここは趣向を変えて演劇をしてみるのはどうでしょうか。わたくしこう見えて本場クリプトン領都ジェノポリスのオペラを毎シーズン観劇していますの」


「まあヒルダ様も? わたくしもジェノポリスへは、お父様によく連れていってもらいますのよ。あの悲恋の物語がとてもいいですよね」


「そうなのですメリア様。実はわたくしジェノポリスの劇場用にシナリオを応募したこともあるのです」


「ほ、本当ですかそれ?」


「ええ。ですのでわたくしの書いた観劇をここにいるメンバーで演じるのはいかがですか? きっとオペラ好きの女子生徒が集まってくるので、男子一辺倒だったわたくし達の支持層も男女のバランスが良くなると思います」


「素晴らしいアイデアですね、ヒルダ様」


「はい。ただわたくしは恋愛経験に乏しいので、ぜひ天才的な恋愛脳をお持ちの学園長のアドバイスをいただきたいのです。できれば二人だけで」




 ん?


 何かおかしな方向に話が進んできたけれど、本当に演劇なんかやっていて、選挙に勝てるのだろうか?


 その後も次々と意見が出されたが、私にはそれがいいのか悪いのか、さっぱりわからなくなってきた。


「ねえニコラ、あなたには何かアイディアはないの」


「僕はリーズたんの執事なのでこの場で意見を言う資格はありませんが、心配しなくてもリーズたんはこのままでも十分勝てますよ」


「え、どうして?」


「僕には分かるのです。今の学園は群雄割拠のアイドル戦国時代。昨日の敵は今日の友でその逆もしかり」


「ふんふんそれで?」


「そしてリーズたんは、その戦国武将たちの動きを決めるキャスティングボードを握っているのです」


「ふんふんつまり?」


「それは今言ってしまうと面白くありません。まあ見ていれば、そのうち僕が言っていたことが何だったのかわかります。楽しみに待っていてください」


「えーっ! 教えてくれたっていいじゃない、ケチ。でも今のニコラからは、凄い強キャラ感が漂ってる。このテクニックはぜひ学ばなきゃ」

このアホな話は残念ながら、次回へと続きます


ご期待いただければ・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] ダーシュが勝てば副会長はカレンとクロリーネでしょうし、 カインが勝てば副会長はリーズとクロリーネってとこでしょうね。
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