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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第208話 ボロンブラーク生徒会長選スタート

 秋の叙勲式も終わり、ボロンブラーク校の臨時休暇も明けた。そしてまた新たなイベントが始まる。


 生徒会長選挙だ。


 お兄様によると、去年、アウレウス派からはフリュ様の代わりにセレン姉様が、シュトレイマン派からはニコラが出馬して争ったそうだが、今年は誰が選挙戦を戦うことになるだろうのか。


 例年なら2年生の生徒会役員から立候補者が出ることが多く、それで行けばアウレウス派からはお兄様、シュトレイマン派からはパーラ先輩、そして中立派からはアネット先輩がそれぞれ1年生の応援者を率いて選挙戦を戦うはずだった。


 でもお兄様は転校していなくなってしまい、生徒会に在籍しているアウレウス派は、3年生を除くと1年生の私だけ。


 一方でシュトレイマン派はパーラ先輩とクロリーネ様の二人いるが、パーラ先輩は生徒会長に全く興味が無さそうで、ダンとイチャイチャしてるだけだ。同様にクロリーネ様も毎日のように王都アージェントに転移しては、お兄様にベッタリくっついている。


 シュトレイマン派は恋愛が忙しくて、生徒会長選挙なんかには興味がないのだろう。


 そして中立派のアネット先輩は、なぜかパーラ先輩の保護者のような存在で、実質的にシュトレイマン派のようなものだ。現に1年生のカレン様たち中立派女子とは全く何の接点もない。どうなってるの?


 私は生徒会室の自分の席に座りながら、放課後に集まった役員のみんなを見て、今年の生徒会長戦に一人不安を覚えていていたのだった。





「ねえ、セレン姉様。今年は誰が生徒会長選に名乗りをあげそうですか」


「そんなの知らないけど、そうね、もし興味があるならリーズがやれば?」


「え! 私がなんで?」


「だってアウレウス派の生徒会役員って、あなたしかいないじゃない」


「いやいやいや、私はまだ役員になったばかりだし、しかも役職はアイドルだし」


「なおさら生徒会長選挙にピッタリの役職じゃない。だって生徒会長選挙って、実質的にアイドルの握手会だから」


「え・・・そうなの?」


「そうよ。去年は私それしかやらなかったのよ。結局は選挙に負けちゃったんだけど、ソルレート管理戦争でアゾートが戦争に勝ったから、ニコラが資格を喪失して私が生徒会長になっただけなのよ」


「ふーん、じゃあニコラが会長になっていた可能性もあったんだ」


「そうなのですが、僕は今の生徒会の方が断然いいと思いますよ、リーズたん」


「え、本当?」


「もしあのまま僕が生徒会長になっていたら、貴族の階級社会を学園の生徒たちに押し付けて、暗い学園になっていたでしょうね。こんなに楽しい学園にしたのは、やはりアイドルという概念を導入して定着させたアゾート様のお陰だと思いますよ」


「ふーん。お兄様ってたまにはいいことするのね」


「リーズたんは評価が厳しすぎなのです。アゾート様は天才ですよ」


「うえぇ、お兄様の話はどうでもいいけど、私は生徒会長選に出るのは嫌だからね」




 そんな話をしていると、生徒会室にクロリーネ様が現れた。私に続き生徒会専属アイドル第2号になったクロリーネ様は、放課後になると毎日真面目に生徒会に足を運ぶ。そして、


「クロリーネ遅かったじゃない。私ずっと待っていたのよ」


「セレーネ会長、遅くなってすみません。ではさっそく参りましょうか」


「ええ早く行きましょう。アゾートが待ってるから」


 二人はそういうと、生徒会室に設置したセレン姉様の私物の軍用転移陣に魔力を注入し、遥か王都アージェントに向けて一気にワープしてしまった。


 そして二人が残した膨大な魔力の余波が、生徒会室の書類を空中に撒き散らしていった。


「あーあ、行ったゃった」


 クロリーネ様は生徒会には皆勤賞だが、滞在時間はいつも数十秒しかいない。ただ転移陣を使用しに来ているだけの女だった。





 選挙戦が始まったのにまだ誰も立候補していない。このままだとどうなっちゃうのかなと考えていたら、生徒会室の扉を叩く音がした。


「はい、どうぞ」


 扉が開くと、カインが生徒会室に入ってきた。


「こんにちはカイン様、生徒会に何か御用ですか」


「リーズ、俺、生徒会長に立候補しようと思うんだ」


「え、カイン様が? これまで生徒会と関係がなかったのに、いきなりどうして?」


「まあ・・・そうだな、学園生活の最後ぐらいは学園のために何か役に立つことでもしようかと思って」


「へー、カイン様でもそういうこと考えるんですね。一匹狼的なところがあるので意外です」


「そ、そうか? でもリーズも生徒会役員になったことだし、これから生徒会長選挙で・・・」


 カインが何かを言いかけたところで、廊下から別の生徒が声をかけてきた。


「カイン様! こんなところにいたのですか。早く帰りましょう」


 カレン様だ。


「カレン・・・今日は一人で帰ってくれないか。俺は少し用事が出来たんだ」


「カイン様、生徒会室で用事って、一体何をなさるおつもりですか?」


「・・・俺は生徒会長選挙に出ようと思うんだ」


「まあ、素敵! だったら応援演説とか選挙戦のサポートが必要ですわね。それならこのカレンがお手伝いいたします」


「いや、俺はそれをリーズにお願いしようと・・・」


「えっ私が、カイン様のサポート要員を?」


 突然のカインからのご指名に戸惑ってしまったが、その後ろでカレン様が、ものすごい形相で私を睨む。この瞬間的な豹変ぶり、顔の筋肉どうなってるの?


「こ、これまでの生徒会選挙では、派閥ごとに別れて戦ってきたので、私はカイン様のサポートはできないと思いますが・・・」


「そんなことないだろう。去年アゾートたちは、シュトレイマン派も中立派も一緒になってセレーネ会長をサポートしてたぞ。というか今の生徒会役員なんか、ほとんどがその時の仲間じゃないか」


「そうなんですか・・・だったら大丈夫なのかな?」


「いいえ、大丈夫じゃありません。カイン様のサポートはこのカレンが行います。泥棒ネコはどこかへ消えてください」


 カレン様が怖いし、私は泥棒ネコでもないし、カインを生徒会長にしたいとも特に思わない。


 だから私はあっさり引き下がることにした。だって生徒会長選挙なんて面倒くさい。でも、


「カイン! お前やっぱり、生徒会長選に出るつもりだな。教室を出る時のお前の様子が変だったからおかしいと思ったらやっぱり」


「ダーシュ!」


「リーズ、カインが出るなら俺も生徒会長選に出る。こいつにだけは絶対に負けられない」


「え、ダーシュも出るの!」


「ああ。だからリーズ、俺のサポートをキミにお願いしたい。どうかな」


「私がダーシュの生徒会長選をサポート・・・」


 め、面倒くさい・・・。


 さっきまでは、誰も立候補者がいなくて心配してたのに、いざ候補者が現れるや、なんか私が巻き込まれ始めた。・・・これどうやって断ろうか。


「まあ、リーズ様! これでわたくしたちも勝負ができますわね! 今年の生徒会長選挙は中立派カイン・フィッシャー辺境伯令息VSアウレウス派ダーシュ・マーキュリー伯爵令息の一騎打ち。つまりサポート役であるこのカレンとリーズ様の代理戦争でもあるの」


「ひーーっ! いやいや、私はいいよ面倒臭い」


「あら、リーズ様はやる前から負けを宣言するおつもりですか。そんなことではカイン様を支える内助の功ポイントはこのカレン様のものよ」


「何そのポイント?」


「エメラダ様にカイン様の婚約者としてのアピールをするためのポイントよ。このポイントが0点のリーズ様はエメラダ様に認めていただけませんので、カイン様の婚約者候補から脱落です」


 エメラダって確か、あの姑よね。そんな人に認めてもらうためのポイントなんか、全然欲しくない。


「おいカレンとか言ったな。リーズは俺の婚約者になるんだ。お前はそこのカインを連れて、勝手に仲良く選挙活動でもしてろ」


「もちろんですわ。あなたの方こそ、その泥棒ネコがカイン様に寄り付かないように、しっかり鎖につないでおいてくださいませ。では行きましょうカイン様」


「ちょちょっと待てよカレン・・・。俺はまだリーズに話が終わっていない・・・」


 カインが連れて行かれてしまったが、一応立候補の意思は示したので、パーラ先輩たちがさっそく選挙戦の立候補者名簿の作成を始めてしまった。そしてその名簿にダーシュの応援者として私の名前が書かれてしまった。


 こうして私の選挙活動が幕を開けたのだった。

次回、選挙戦開始


ご期待ください

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