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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第200話 秋の叙勲式(2年生編)①

秋の叙勲式です


何話か続きますが、アゾートとリーズの両主人公が合流し、少しストーリーが動きます

 秋の叙勲式のためにボロンブラーク騎士学園は秋の臨時休暇に入った。


 王都アージェントへ向かう生徒は早々に実家へ帰省していき、私リーズもセレン姉様、クロリーネ様、お稲荷姉妹、執事の二コラとともにプロメテウス城へと帰還した。


 だがプロメテウス城はひっそり静まり返っていて、私たちを出迎えてくれたのはお母様だけだった。


「あら、リーズ。みんなもおかえりなさい」


「城の中が随分寂しいけどみんなどこに行ったの?」


「この城のみんなはもう王都に向けて出発したわよ。商都メルクリウスで全軍合流するから、あなたたちも転移陣でリシアおばさんの家に向かいなさい」


「私はクロリーネ様と2人でフレイヤーで行くことになっているから、前日までここに残るの」


「そう。じゃあセレーネたちはどうするの」


「マミーおばさま、私はこの3人を連れてリシアおばさまの家に向かいます。お父様も商都メルクリウスに向かっているのですよね」


「ええ、そのはずよ。このプロメテウス城からは騎士団800と砲兵隊30がアゾートがもらってきたトラック5台に最新の大砲を1門ずつ乗せて出発したわ。ヴェニアル城からはカイレンとサー少佐が銃装騎兵隊200を引き連れて出発。あとはベルモール子爵、ロレッチオ男爵が500騎ずつ、ダリウスがロック指令とディオーネ領民軍1000を連れて合流予定よ」


「わかりました。でも総勢3000超の大軍勢なんてすごい」


「ちなみにナタリーちゃんとマールちゃんの騎士団各500は、シャルタガール領経由で王都に向かうそうよ。あっちは距離が長くて時間がかかるので、かなり前に領地を出発したみたい」


「そうすると王都には総勢4000騎で入城するわけね。去年はアウレウス伯爵から借りてきた1000騎で入城して注目を集めてたけど、今年はその4倍じゃない」


「アゾートって、去年は1000騎でびびってたのに、今年は平然と4000騎も出撃させるなんて。まるで人が変わったみたいね」


「そ、そうねおばさま・・・。きっとアゾートには何か考えがあるのよ」





 叙勲式前日になり、私はクロリーネ様とともに王都アージェントに向けて今から飛び立つ。


 プロメテウス城の中庭に設けられた格納庫からフレイヤーを取り出すと、フレイヤーを垂直に設置して、そこに乗り込む。


 座席が高い所になるためフレイヤーをよじ登る必要があるが、キャノピーを開けると座席からはしごのようなものが出てきて、それを使うことで乗降しやすくなっている。


 なんだけど、いざ座席に座ると身体が完全に上を向いた状態になるため、落ちそうですごく怖い。


「く、クロリーネ様・・・早くキャノピーを閉めてください。落ちそう・・・」


「わかりましたから、リーズ様は早くシートベルトを締めてください」


 クロリーネ様がフレイヤーに魔力を供給したのか、座席の前の操作ボードに光がともってキャノピーが自動的に閉まる。そしてフレイヤーの両翼から風の音が聞こえ始めると、機体がふわりと上空へと浮かんだ。発進だ。


 ゆっくりと浮かび上がったフレイヤーは垂直の状態から徐々に角度を緩めていき、それに伴って速度が上がっていった。そして高度がぐんぐん上昇し、プロメテウス城が小さくなり始めると、機体を北に旋回させてから一気に加速させた。


「クロリーネ様、王都アージェントにはどれくらいで到着するのですか?」


「そうですね・・・そんなにかからないと思います。ここから商都メルクリウスまで2時間、そのあと残り3、4時間ぐらいで王都です」


「早っ!」


「魔力を使えばもっと速く飛べますが、今日は省エネ飛行で行きます」


「私は乗せてもらってるだけなので、よろしくお願いします、クロリーネ様」


 それから私たちはおしゃべりをしながら、王都までの空の旅を楽しんだ。






 俺たちは叙勲式を明日に控え、今晩はフリュの実家であるアウレウス伯爵邸に宿泊することになった。


 夕食はアウレウス伯爵夫妻とフリュの弟のフォーグを交えたこじんまりした会食で、学園の様子や明日の叙勲式について食事をしながら話し合った。最初に話を切り出したのはフォーグだ。


「父上っ、姉上を3年生のクラスに戻してください。毎日のようにエリザベート王女と張り合ってばかりで見ていて恥ずかしいのです。姉上もいい加減にしてください!」


 フォーグがかなり怒っているが、フリュは全く意に介さずに黙って食事を続ける。アウレウス伯爵は微妙な表情で隣の席のフリュの母上にチラリと視線を投げかけると、母上が食べかけの食事を中断して口をハンカチで拭きフォーグに語りかけた。


「あらフォーグ、フリュオリーネがエリザベート王女と張り合うのは、とてもよいことではありませんか」


「母上は学園の様子を見ていないからそんなことが言えるのです。二人して教室の中で罵り合ったり、扇子を振り回して叩きあったり完全に子供のケンカです。いい歳をしてみっともない。それに、どうして毎日のように決闘場を使用する必要があるのですか!」


 確かにフォーグが言っていることも分かる。だがそれを聞いたフリュの母上は涼しい顔で、


「エリザベートはシュトレイマン派のエースにして、次世代の王位継承争いの筆頭。そんな彼女と毎日のように争うことの何がいけないのかしら。むしろあなたの方こそ、エリザベートのライバルとして毎日決闘室に入るべきなのではないかしら。情けない」


「うっ・・・それは」


 完全に藪蛇だったようだ・・・。そこでアウレウス伯爵が仲裁に入る。


「まあまあいいではないか。フリュオリーネの魔力がエリザベートに匹敵するほどまでに強くなったのは、たぶん婿殿のお陰だろう。あれだけしょっちゅう戦争ばかりしていれば実戦でも強くなれるし、フォーグもメルクリウス軍に入って鍛えてもらえばいい」


「父上まで何をバカなことを言っているのですか!」


「はっはっは。そう言えば婿殿、フリュオリーネから聞いたのだが、イリーネ王女とスピア嬢に魔法を教えてるそうだな」


「ええ、アルト王子から気にかけてやってほしいと頼まれまして。まずかったでしょうか」


「いや、あの2人なら構わん。ついでにフォーグにも魔法を教えてやってほしいのだ」


「それは全く構いませんよ。一年生の教室で毎日放課後にやってるから、フォーグも参加すればいい」


「それは助かるが、姉上と一緒はイヤだ」


「それならたぶん大丈夫だ。フリュはネオンに魔法を教わっているから、フォーグはスピアと一緒に俺が面倒を見てやるよ」


「・・・・ネオンって、姉上に魔法を教えられるほど強いのか?」


「魔力の強さでは誰もフリュには敵わないが、アイツの魔法の知識はピカイチ。俺の分身みたいなものだからな」


「義兄殿の分身だと・・・ネオンって、そんなスゴいやつだったのか」




「さて婿殿、話は変わるが明日の叙爵式で入城させる騎士団について、今年はどのように考えているのだ。またうちの騎士団を使うのか?」


「いえ、今年はあえて自前の戦力だけで入城したいと思います」


「ほう、してどれぐらいの数を用意してきた」


「4000ほど」


「何っ! 4000だと!?」


「ええ、しかも騎士団だけでなく、最新の兵器も持って参りました」


「最新の兵器・・・それで婿殿はこの前トラックを要求してきたのか」


「はい。今回は城塞都市ヴェニアルを陥落させた大砲5基に、銃装騎兵隊200、ブロマイン帝国式に近代化されたディオーネ領民軍1000、それに加えて、旗下の中級貴族家4騎士団から500ずつを選抜して隊列に加えています」


「なんと!」


「そして、ナルティン城に空爆を仕掛けて半壊させた航空戦力フレイヤーを一般公開します」


「・・・そこまでやるとは、婿殿には何か狙いがあるようだな。例のあれか」


「ご明察のとおり」


「すると婿殿はすでに尻尾をつかんだというわけか」


「いえ、これから尻尾をつかむための、これはエサです」


「・・・随分高価なエサだな」


「敵は地下に潜んでいてなかなか姿を現してくれませんが、あの兵力を見せれば正体を見せてくれるのではないかと期待しているところです」


「そうかわかった。では陛下には事前に話を通しておくことにしよう。謀反を起こしたと勘違いされては困るからな」


「あっ! そこまでは考えていませんでした。よろしくお願いします、義父上殿」

次回、メルクリウス軍が大挙して王城に進軍します


ご期待ください

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