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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第193話 ボロンブラーク校の期末テスト③

 シュトレイマン派令嬢チームとネオン親衛隊1年生支部の戦いは膠着状態となった。どちらも相手に決定打を与えることができなかったためだ。


 本来ならクロリーネ様の強力な攻撃魔法で勝負を決められるはずが、1年生支部の作戦で完全に防御に回されているため、チームとしての決定力が欠けたのだ。


 だが試合が長引くことで、今度は1年生支部の弱点が突然さらけ出された。


 模擬弾が切れたのだ。


 1年生支部が銃を放り投げて模擬剣を構え直すと、今度はクロリーネ様めがけて突撃を開始した。近接戦闘でクロリーネ様の魔法攻撃を撃たせない作戦らしい。


 だがクロリーネ様には強固なバリアーもあるし、私と一緒にメルクリウス騎士団で鍛えられた近接戦闘力もある。


 案の定、クロリーネ様の元に駆けつけたお稲荷姉妹と3対4の戦闘はやがてクロリーネ様たちに軍配を上げた。


 シュトレイマン派令嬢チームの勝利だ。





 試合の一部始終を見ていたメリア様とヒルダ様が、心配そうな表情で私に話しかけてきた。


「やはり、クロリーネ様たちが勝ち上がりましたね」


「あのネオン親衛隊1年生支部を、なんとあの地味子を守りきって勝利してしまいました。わたくしたちに勝てますでしょうか、リーズ様」


「うーん、なんとか頑張ってみますが、お稲荷姉妹はともかくクロリーネ様に勝つ自信はありません」


「リーズ様でも勝てないのですか」


「ええ、この夏休みにクロリーネ様とともに戦場で肩を並べる機会が何度もあったのですが、クロリーネ様の強さは別格でした。10回戦っても3回勝てればいい方だと思います」


「そんな・・・」


「だから私たちはアイドルPを稼いで優勝をもぎ取る作戦に出たのではないですか。例えトーナメント決勝で破れても、21ポイント以上あれば優勝できます」


「そうでした。わたくしたちの優勝は学園アイドルとしてのパフォーマンスに賭けていたのでした」


「さっきのカレン様にはアイドルPでとても勝てそうにないですが、こちらは戦闘で勝てばいいだけです。そしてクロリーネ様たちには、アイドルPでは絶対に負けないと思います。私はクロリーネ様とお稲荷姉妹の歌とダンスのレベルの低さを熟知してますので」


「そういう話でしたよね。あ、そろそろクロリーネ様たちの準備ができたようです。ステージを見てみましょう」





 ステージに登場したクロリーネ様たちは、私たちと同じフリフリのミニスカートの衣装だった。セレン姉様にお願いして生徒会から借りたのだ。


 だが小柄でやや幼児体型のクロリーネ様とお稲荷姉妹は、この衣装がとてもよく似合っていた。可憐でキュートというのはカレン様ではなく彼女たちのことをいうのだと私は思う。


 さて、もう一人のメンバーの地味子だが、彼女が少し遅れてステージに上がってきた。


 古今東西、地味子キャラはギャップ萌えがお約束だと、お兄様から聞いたことがある。大概は超絶美少女が現れて度肝を抜かれるらしい。


 だがその程度でアイドルPが流れ込むほどこの学園はやわではない。


 そしてこの地味子も、ステージでは牛乳ビンの底のようなメガネをはずし、少し化粧をして登場した。


 さて、どんなギャップを見せるのか、さあこの私にかかってきなさい!



 ・・・・・



 どんな美少女が現れるかと期待したが、顔は普通だった。可愛いか可愛くないかでいえば間違いなく可愛い部類になるのだが、すぐ隣に立っているクロリーネ様の美少女ぶりと比べれば、平凡な顔としか言いようがない。


 お兄様の表現を借りればどこか親しみが持てる近所のお姉さんタイプなのだ。


 子供の頃から密かに恋心を寄せてきたウブな少年が勇気を振り絞って告白し、「私なんかで良ければ・・・よろしくお願いします」って頬を赤く染めながらもOKをもらえる。


 つまりワンチャン手が届くかもしれないレベルの、そんな可愛さなのである。




 だがしかし、である。


 顔はそこそこのレベルなのだが、首から下がどうもおかしい。


 このフリフリの衣装が全く似合ってないのだ。



 圧倒的違和感!



 でもその違和感の原因はすぐに判明した。衣装が小さすぎて地味子のサイズに全くあっていない。


 もちろん身長うんぬんではない。



 まず胸が大きすぎる。


 あの制服で今までどうやって隠してきたのかわからないが、かなりのボリュームなのだ。それが衣装をパンパンに膨張させて、フリルが全くフリフリしていない。


 そして見事なくびれをみせるウエストから下は、形のいいお尻がつんと後ろにつきだして、大人の色気を拡散させている。


 さらにその下には肉付きのいい太ももが、見るもの全ての視線を釘付けにしている。


 女子の私でも思わず触って見たくなるようなむっちりとした太ももは、純白のニーソックスに強調されて、見事な絶対領域を形成してしまっている。




 私が地味子を凝視しているうちに、ステージでは音楽が流れ始めた。


 シュトレイマン派令嬢チームのパフォーマンスが始まった訳だが、相変わらず歌もダンスもさして上手くはない。子供のお遊戯のような稚拙なダンスと、音楽の授業中かと思わせるようなやる気のない歌声。


 ハッキリいって私たちアウレウス派令嬢チームの圧勝だろう。




 だがしかし、である。


 この地味子がヤバいのだ。


 地味子もクロリーネ様と同様に歌とダンスがまるでなっていないのだが、ダンスを踊る度に胸がポヨンポヨンと跳ね回り、セレン姉様が言うところの見えてもいいインナーに包まれたお色気たっぷりとお尻が、ミニスカートがめくれる度にプリンプリンと姿を見せるのだ。


 会場の男子生徒たちはなぜか全員前屈みになって、必死に何かに耐えている。みんな何も喋らなくなり、赤く血走った視線を地味子の胸とお尻に集中させている。


 ワンチャン自分にも手が届きそうな可愛い女子が、これほどまでにエロい姿を見せているのだ。


 異様なまでの静けさと興奮の中、シュトレイマン派令嬢チームのパフォーマンスが終了した。






 そして二回戦最後の試合は、学園長ファンクラブVS魔女っ子シスターズ(シード)だ。


 だがこの試合は他の3試合と異なりアッサリと勝負がついてしまった。


 魔女っ子シスターズが圧勝したのだ。騎士クラスで唯一シード権を獲得したチームだったのでそれなりに強いとは思っていたが、そんなレベルではなかった。


「なんなの、あの人達は・・・」





 さて、二回戦が終了した時点で男子チームは再度、女子のトーナメント1位のチームに投票する。男子12チームがそれぞれ10Pを一つのチームに賭けるのだ。


 その結果各チームのオッズが次のように変わった。


Aチーム:4倍→4倍(変わらず)

Bチーム:6倍→8倍

Cチーム:1.7倍→2.2倍

Lチーム:なし→6倍


 事前投票ではオッズのついてなかったLチームが一気に6倍までオッズを上げた。やはり先ほどの試合のインパクトが大きく、4つの男子チームがLチームの勝利に賭けたのだ。


 一方で私たちアウレウス派令嬢チームは4倍のまま。つまり、前回も今回も3つの男子チームが投票してくれたことになるが・・・。


「リーズ様。わたくしたちに投票してくれているチームって、ひょっとして・・・」


「たぶん、私の親衛隊の3チームだと思う。逆に言えば、騎士クラスで私たちの1位に賭けてるチームは一つもないってことになるね・・・」


「・・・・・」


「さ、さあ変な計算はここまでにして、もうすぐアイドルPの発表があるわ。こちらが本命だから、気持ちを入れ換えましょう」





 さて、ついにアイドルPが発表になる。これは男女それぞれ一人一票ずつ持っていて、2回戦と準決勝の終了時の2回投票を行う。


 そしてその集計結果が発表になった。


Aチーム:24

Bチーム:40

Cチーム:28

Lチーム:4



 まずい!


 カレン様に負けているのは仕方ないとしても、クロリーネ様にも4ポイント負けてしまっているのはダメだ。


 私の作戦では準決勝終了時点でクロリーネ様と21ポイント差をつけること。次は投票だけ行われて、ポイントの発表が行われないから、今回のポイント差で推測するしかない。


 仮にBとLがここで敗退して、44票を投じた人達が次の投票でAかCのどちらかに流れる。今回の結果を単純に見れば私たちの敗北。じゃあここから25票差をつけるためには、44票中35票をもぎ取らなければならない。逆に言えばクロリーネ様には9票しか渡せないのだ。


 これは正直きびしすぎる・・・。


 3人組も絶望的な表情だ。私はみんなを元気付けるため、空元気を出してみる。


「メリア様、元気を出してください。まだ、私たちの負けが決まった訳ではありません。決勝で勝てばいいだけの話ですから。それに準決勝でクロリーネ様達が負ける可能性だってあります」


「そ、そうですわね。リーズ様の言う通りもし魔女っ子シスターズがクロリーネ様に勝てば、決勝でわたくしたちが負けてもあのアイドルPなら総合Pで上回り、わたくしたちの優勝は決まったようなものですね」


「優勝さえできれば、勝ち方など二の次ですからね」


「あの~、メリア様にヒルダ様。前から少し気になっていたのですが、皆様はどうしてそこまで優勝に拘るのでしょうか」


「・・・そうですね。リーズ様にはわからないと思いますが、わたくしたちの立場をご説明した方がいいと思います」


「メリア様たちの立場?」


「はい。わたくしたち3人は爵位の割には魔力が少なく、上位貴族の女として厳しい立場にあるのです。同じように魔力の低い男性と結婚する選択肢もあるのですが、そうすると生まれてくる子供の魔力はわたくしたちよりも更に低くなってしまい、その子孫はやがて貴族ではいられなくなってしまいます」


「それは厳しいですね」


「だから、なるべく高い魔力のパートナーを見つけ出して結婚するのが、わたくしたちの子供にとっても、一族にとってもベストなのです」


「でもメリア様よりも魔力が上の男性となれば、中級貴族の本家筋か上級貴族に限定されてしまうのでは」


「だからです。上級貴族や一部有力な中級貴族は魔力に加えて財力もあるため、本妻と複数の側室を抱えることができます。ただしそれも無尽蔵ではないため、その椅子は限られたものになります。そこに各騎士学園の中級貴族の女子が殺到し、宮廷貴族たちも財力のある領地貴族との血縁を求めて娘をねじ込もうと狙っています」


「ふむふむ」


「だからわたくし達が上級貴族の本妻か側室のどちらかに選ばれようとすれば、二つしか方法がありません。一つはその本人と直接親しくなり、婚約してもらうこと。もう一つは学園での成績をなるべく上げて、親同士が参加する政略結婚ネットワークにおける市場価値を高めることです。この期末テストの優勝は言わば後者のためのもの」


「そ、そ、それは大変じゃないですか! 必ず優勝しないければメリア様の将来が終わってしまいます!」



「そ、そこまで言わなくてもいいと存じますが、まあそういうことです」


「でも今の話を聞くと、メリア様は別に本妻でなくてもいいのですか」


「構いません。なんならリーズ様がアイル様の本妻でわたくしが側室でも全く構わないのですが、バーナム伯爵は恐らくこう考えるでしょう」


「それは?」


「同級生から2人の嫁をとるよりも、1人は宮廷貴族から嫁を取って恩を売ろう。そして王宮内に自分の勢力範囲を拡大させよう」


「確かにその方が合理的ね」


「だから、リーズ様にはできるだけアイル様以外の人と結ばれて欲しいと考えているのですよ」


「そっか・・・」

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