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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第192話 ボロンブラーク校の期末テスト②

書き始めたら、なんか長くなってしまいました



 2回戦第2試合目は中立派令嬢チームVSカイン様親衛隊だ。


 カイン様親衛隊の4人は、いつもカイン様の周りをくっついて歩く取り巻き令嬢の集団で、いわばカレン様の子分みたいな人達だ。


 つまり身内同士の試合であり、結果なんか試合をやらなくても大体わかる。会場もしらけムードで全く盛り上がっていない。





「試合始めっ!」


 審判の号令とともにコート中央へ向かって走り出した双方の女子生徒たち。だがカイン様親衛隊の女子達は模擬剣を握りしめ、カレン様とモナ様をスルーしてミーア様とサーラ様に殺到した。


「あなたたち、事前の打ち合わせと違うじゃない!」


 カレン様が慌ててカイン様親衛隊に叫ぶ。だが親衛隊はカレン様を無視し続けてミーア様とサーラ様を袋叩きにする。


「きゃあぁぁぁ!」


 完全に油断していた2人はなす術もなく戦闘不能に陥り、試合からリタイアしてしまった。これでこの2人はその後の試合に出場できなくなる。


「何てことをしてくれたのよ、あなたたち!」


 カレン様が激昂するが、親衛隊のリーダーは涼しい顔で、


「あらカレン様。私たちは辺境伯側につくことにしましたのよ」


「何ですって・・・まさかあなたたち、このわたくしを裏切ったの?」


「その通りよ。あなたのような性悪女の子分は、もうやめたということです」


「誰が性悪女ですかっ! 可憐なキュートなこのわたくしに向かってよくもっ」


「あなたのどこが可憐でキュートなのよ、自分のことを「カレン」なんて名前呼びしてる痛いヤツのクセに! それにあなたがカイン様の正妻になれば、私たちがうまく側室にもぐりこめたとしても一生あなたの子分として仕えなければならない。そんなのもうウンザリよ。だから私たちはあなたをカイン様の婚約者にしないように頑張ることに決めたの」


「・・・あなたたち、自分が何を言っているのかわかってらっしゃるの? それはエメラダ伯母様や、メリー叔母様を敵に回すということよ。あなたたちのご実家もアルバハイム家との関係が悪化して、困ることになるんじゃないの」


「ええ、そのとおりね。だから先ほど申し上げたように、私たちは辺境伯側につくことにしましたの。これは実家の決定でもありアルバハイム家とは訣別したということです」


「・・・そういうこと。でも後で後悔しても知らないから。わたくしがカイン様の正妻になれば、あなた達のご実家にはまともな仕事が回って来なくなることを覚悟しておくことね!」


「ええ。だから私たちの学園でのミッションは、リーズ様にカイン様の正妻になって頂くこと。最低でもカレン、あなたにだけはカイン様の正妻の座には着かせません」



 え、私ーっ?!


 カレン様とカイン様親衛隊の突然の仲間割れが面白くてボーッと見ていたら、いつの間にか私が巻き込まれてたっ!



「リーズですって・・・」


「そうよ。これからカイン様親衛隊一同は、リーズ様がカイン様の正妻となるよう、学園でのお2人の仲を取り持つために活動していきます。ではさようなら、カレン様」


「ちっ、このクソ女どもを血祭りにしてあげてやる。行きますよモナ様」


「はい、お嬢様」


 そうして2対4の熾烈な戦いが開始された。




 突然の反逆劇に客席は一気にヒートアップ。カイン様親衛隊も初戦を勝ち抜いただけあって、騎士クラスでも上位の実力者。戦いは完全に互角の戦いになった。


「「「うおーーーっ!」」」


 カレン様に集中して襲いかかる親衛隊と、それを引き離そうと必死に食らい付くモナ様。


「これでは魔法の詠唱ができません。モナ様、早くこのクソ女どもをわたくしから引き離しなさい」


「カレン様、この子たちは強いです。私一人ではとても対処できませんので、カレン様も近接戦闘をお願いします」


「このわたくしに近接戦闘をやれと・・・くっ、この屈辱は絶対に忘れないからな、このクソ女どもっ! いくぞ、うおりゃーーっ!」


 そして模擬剣を握りしめると、親衛隊に反撃を開始するカレン様。剣を滅茶苦茶に振り回すカレン様の身体の動きにあわせて、ご自慢の緑色の長いツインテールが、ブンブンと元気よく跳び跳ねている。


 普段男子生徒の前では、自分のことを名前呼びして可愛いキャラを演じていたカレン様だったが、その必死の形相に男子生徒たちはドン引きし、女子生徒たちはお腹を抱えて笑っていた。


 カレン様って女子生徒たちから相当嫌われていたようだ。





 そして長い試合の末、どうにか判定勝ちをもぎ取ったカレン様とモナ様。だが魔力も体力もかなり消耗し、2人とも完全に息が上がっていた。


「ゼ~、ゼ~・・・ハァハァ」


「ゴホン、ゴホン・・・オエーッ」


 そしてボロボロの状態で更衣室に入ると、すぐに衣装を着替えてステージに上がってきた。


 勝利のパフォーマンスタイムだ。


 カレン様とモナ様は私たちみたいなフリフリのミニスカートではなく、落ち着いたデザインの綺麗系の衣装を着ていた。ちなみにミーア様とサーラ様はリタイアしたので、ステージには登っていない。


 ステージではカレン様が拡声魔術具を持ち、モナ様が大きな弦楽器を傍らに置いて腰かけた。モナ様の演奏でカレン様が何かを歌うようだ。


 そしてアップテンポな前奏が始まると、カレン様がニッコリ微笑んでステージ中央に進み、拡声魔術具を手に歌い出した。




 歌、メチャうまい!


 会場ではカレン様のあまりのギャップに、最初こそどよめきが起こっていたが、やがてカレン様の歌唱力に惹かれると、いつしか会場全体が歌に酔いしれていた。


 さっきまであんなに息が上がっていたのが嘘のように、完璧に歌いきるカレン様。しかもそれだけではなく、アップテンポな曲にあわせた振り付けをリズミカルに踊り、それでいて顔は常に笑顔。


「プロだ・・・私たちみたいな急造アイドルとは明らかにレベルが違う」


 私はカレン様たち中立派令嬢チームに言い知れない脅威を感じてしまった。






 さて、カレン様のパフォーマンスに興奮覚めやまない中、続けて第3試合のシュトレイマン派令嬢チームVSネオン親衛隊一年生支部の試合が始まった。


 クロリーネ様と地味子を後方に残して突撃を開始するお稲荷姉妹に対し、親衛隊はその場を動かず銃を構えた。


「え、なんで銃なんか持ってるのよ。・・・そうか、ネオン親衛隊一年生支部って、ネオン姉様のファン組織じゃなくて、ガチの下部組織だったんだ」


 ネオン親衛隊は既にメルクリウス軍砲兵隊に取り込まれており、学生でありながら正規軍として活動をしている。だから週末はサー少佐たちの銃装騎兵隊と合同訓練を行っていることは知っていた。


 だけどまさかこの一年生達がネオン親衛隊に入隊していたことは知らなかった。お母様からもそんな話を聞いていなかったし、さっきの試合でも銃なんか使っていなかった。


 と、とにかくここで驚いていても仕方ないわね。1年生支部の子達の戦いをじっくり見てみることにしよう。




 さて1年生支部はクロリーネ様に向けて銃を1度発砲すると、四方に散開し距離を取りながら再び銃撃の準備を始めた。


 そして銃弾は見事クロリーネ様と地味子に命中。だがクロリーネ様はダメージを全く受けていないようだ。


 学園内では模擬弾を使用するため、銃弾に殺傷力はなく物理攻撃力がかなり低い。だから通常ならバリアーを突破されてしまう危険な銃弾も、クロリーネ様にはダメージを与えることができないのだ。


 一方で魔力の低い地味子は違うらしい。模擬弾と言えども地味子のバリアーは簡単に突破し、腕と足にダメージを与えたようだ。凄く痛そうに悶絶している。


 それに気づいたクロリーネ様が慌てて地味子にキュアをかけた。このチームの弱点は、やはりこの地味子のようだった。




 だがお稲荷姉妹がそれぞれ1年生支部の女子生徒を捉えると、今度はその場で一対一の近接戦闘が始まった。お稲荷姉妹はスピード型なので動きが滅茶苦茶速いのだが、この1年生支部もかなり動きが速い。さすがに速度では敵わないが格闘術で十分補っている。お稲荷姉妹の攻撃を体捌きで上手く避けているのだ。


 パン、パンッ!


 そして残り2名の女子生徒からの援護射撃が当たり、お稲荷姉妹が背中にダメージを受けた。そうか、お稲荷姉妹ぐらいの魔力があっても、模擬弾はバリアーを突破してしまうのか。私の魔力だとどうなるんだろう。


 お稲荷姉妹が一瞬怯んだ隙に女子生徒たちは再び散開し、また地味子めがけて銃を発射する。


 完全にヒット&アウェイに徹した1年生支部に対し、クロリーネ様が防御に回って攻撃はお稲荷姉妹の2人に完全に任せることにしたシュトレイマン派令嬢チーム。


 この戦いも長期戦の様相を呈してきた。





「ねえリーズ様。わたくし達って、騎士クラスとは違うカリキュラムで授業を受けているから、こんなに強い人達がいるなんて全く知りませんでしたね」


「そうですね、ターニャ様。私たちは剣術の訓練も別メニューだし、どちらかと言えば魔法の実技の方がメインですから。でも、あの1年生支部が強いのは、うちの騎士団で特別な訓練を受けてるからだと思う。よく見ると、動きがうちの銃装騎兵隊にそっくりだから」


「まあ、メルクリウス騎士団の訓練を」


「ええ、私も訓練を受けたことがあるのでわかるの」


「魔力が低くてもあれだけ戦えるのなら、わたくしもその訓練に参加しとうございます」


「ターニャ様が? そういえばさっきの試合でもすごかったけど、ターニャ様はそんなに強くなりたいの?」


「わたくしはもともと戦闘に興味はありませんでしたが、それを変えたのはリーズ様なのですよ」


「私が?」


「はい。同じ男爵家令嬢だったのにリーズ様はわたくしと違って魔力が強くて、そしてフィッシャー校との戦いで見せたように、剣術の戦闘力も凄く高い。ただ美人だからという理由だけで親衛隊ができたのではないことはすぐに理解できました」


「ターニャ様・・・」


「派閥を越えて求められるリーズ様のその嫁力。わたくしはリーズ様の嫁力を研究して、ある結論に至ったのです。わたくしに足りないのは魔力と戦闘力。そのうち魔力はすぐにどうにかなるものではございませんので、努力でカバーできる戦闘力を磨くことにいたしましたの」


「そ、それが理由だったの?!」


「はい! わたくし強くなって見せますわ」


 婚活に向けたターニャ様の努力の方向が間違っているような気もするが、恋愛経験の乏しい私にはどこが間違っているのかがよくわからない。


 だけど戦闘力を磨くことはとてもいいことだ。今度、ネオン親衛隊のメンバーをターニャ様に紹介してあげよう。

次回も期末テストは続きます


ぜひご期待ください

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファンタジーの学園ものはこういう闘技大会が良いですね。 [一言] もし作者様に余裕があれば、2年生の話もお願いしたいです。
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