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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第188話 アージェント学園大舞踏会(前編)

話の流れで前、中、後編の3つに分けました

 今日は夏休み開け最初のアージェント学園恒例、全校生徒全員参加による大舞踏会が開催された。


 学園大ホールの舞踏会会場はきらびやかな装飾品に彩られ、テーブルには豪華な料理や飲み物がところ狭しと並べられた。それは先日のアウレウス派学生寮の晩餐会で用意されたものを質と量で上回っていた。


 その会場へ、婚約者のいる生徒はパートナーをエスコートし、それ以外の者はいつもの護衛や取り巻きたちを引き連れて続々と入場してきた。かく言う俺もフリュ、ネオン、マール、ユーリの4人を連れて入場する。




「全校生徒が参加しているそうだから、全部で300人は軽く超えている人数だよな。こういう時はまず知り合いと合流しよう。フォーグ、フォーグと」


 俺はアージェント学園の中では、同学年でフリュの実弟であるフォーグが一番話しやすく、フォーグの方もフリュが近くにいなければ、俺と話すことが多い。


 この学園のことを色々と質問しやすいしフォーグを探して回っていると、逆に一番会いたくない人に出くわしてしまった。


 エリザベートだ。


 今日も取り巻き令嬢たちを引き連れて、扇子を広げながら会場の中を闊歩していた。


「あ~ら、負け犬のフリュオリーネ様、今日もメルクリウス伯爵とご一緒のようで、お楽しみですこと」


「まあ、エリザベート王女もお元気そうで。今日はエスコート下さる殿方はいらっしゃいませんのね。あらごめんなさい、少し言い間違えました。「今日も」でしたわね」


「わたくしはあなたと違って、殿方に頼るのではなく「使う」立場なの。今日は必要がないから連れていないだけです。その違いがあなたにはおわかり?」


「あら左様でございましたか。お寂しい人生ですこと。オホホホ」


「このメス豚が!」


「干物女」


「「ちょっと表に出なさい!」」


 そう言って、またあの2人が外に出て行った。


 当分かえって来ないだろうから、もう放っておくことにしよう。戻らなければ、舞踏会が終わったあとで医務室に迎えに行けばいい。




 しばらくホールの中をうろついていると、今度は次に会いたくない奴らと出くわしてしまった。ルカ、ミカ、モカ・クリプトン3人娘だ。


「およ! ネオン殿でござる。やっほー」


「おっす、3人娘」


「今日のハーレム野郎に取巻き令嬢が一人少ない件。あ・・・氷女がいない」


「フリュオリーネならさっき、エリザベートと外に出て行ったよ」


「「「ラッキー。うるさい奴が一人消えた」」」


「それよりネオン殿、今日は面白いものを持ってきたので、社交なんかよりこっちに来て一緒に遊ばない」


「え、何々?」


 ネオンも3人娘とともにどこかへ行ってしまった。ネオンもフリュもしょうがないやつらだな。




 残ったマールとユーリを連れてさらにさまよっていると、ようやくフォーグを見つけることができた。アルト王子と一緒に行動しているようだ。


「アルト王子、フォーグ、ご一緒させていただいてもよろしいですか」


「アゾートか。先週のアウレウス派の晩餐会以来だな。もう学園には慣れたのか」


「ええ、おかげさまで。フォーグにもいろいろ教えてもらって、なんとかやっています」


「早速、姉上とエリザベート王女がやりあって、あの2人には本当に迷惑してますよ」


「噂は聞いている。フリュオリーネは随分と魔力が上がったようだな。あのエリザベートと対抗できるなんて、ただごとではないぞ」


「結局あの決闘ではフリュは負けてしまいましたが、その時、エリザベート王女からはわずかに第6属性の魔力が現れてました」


「アゾートにはそれが見えたのか・・・。フォーグはどうだった」


「ええ、わずかでしたがハッキリと見えました」


「そうか・・・。これで王位継承権争いはさらに厳しくなるな」


 魔力至上主義は建国当初から現在でもちゃんと守られており、王位継承権争いは魔力に優れたエリザベートがやはり一歩リードしているようだな。まあ、それだけで決まるわけではないのだが。





 しばらくアルト王子、フォーグと雑談をしているとエミリオが2人の令嬢を連れてアルト王子に挨拶に訪れた。


「アルト王子にご挨拶申し上げます。本日はここにいる2人に、王子からダンスを1曲お誘いいただきたくお願いに参りました」


「それは願ってもないこと。そう言えばアゾートは、この2人に会うのは初めてではないか?」


「はい。こちらのご令嬢たちは1年生のようですね。まずは私から自己紹介を。初めまして、アゾート・メルクリウス伯爵です。先週からこのアージェント学園に転校してきました。ここにいるユーリ・ベッセル子爵家令嬢、マール・ポアソン男爵ともども、以後お見知りおきを」


 すると2人の令嬢が順番に挨拶を始めた。


「わたくしは、1年生シュトレイマン派の筆頭を務めております、ティアローガン侯爵家のスピアと申します。よろしくお願いいたします」


 この子がシュトレイマン派1年生筆頭か。見た目がクロリーネによく似ていて、小柄でかわいらしい少女である。ブロンドの髪の毛が青みを帯びているところがクロリーネと異なる点だが、顔つきはよく似ていて、胸も・・・実に残念だ。


「あの・・・わたくしも自己紹介してもよろしいでしょうか」


 オドオドした様子でスピアの後ろから出てきたのは、やはり小柄な少女だった。


「わたくし・・・1年生中立派筆頭の、イリーネ・アージェントと申します。・・・あの・・・よろしくお願いします」


 アージェント家の王女で中立派ということは、この子はアージェント型つまり3つのタイプが混在しているということか。


 髪色は見事な金髪だが・・・目が赤い。この子にはTypeメルクリウスが混ざっているのだ。


「スピア様、イリーネ王女、後で私とも1曲お願いしてもよろしいでしょうか」


「はい、わたくしでよければよろこんで」


「・・・は、はい。・・・よろしくおねがいします」


 そうして2人のご令嬢は、俺とアルト王子とフォーグの3人の申し出を受けると、そそくさとこの場を後にしてしまった。


「スピア・ティアローガン侯爵令嬢は、おっとりとした雰囲気で、イリーネ王女はどこか自信なさげにオドオドとした印象ですね」


「イリーネは私の実の妹なのだが、あの赤い目を気にしていて消極的なんだ」


「赤い目を気にしている?」


「既に滅んでしまったメルクリウス一族の血を引いているので、小さい頃からいつか自分も滅ぼされると思い込んでいるんだ。だが去年の秋の叙勲式でアゾートの後ろにいたネオンや、フェルーム子爵家の女性を見て、メルクリウス一族が滅んでいなかったことをとても喜んでいたんだ。でも染み付いた性格は直ぐには治らないな」


 そういうことか。きっと表沙汰にはなっていないが、王家の歴史においても赤い目の王族が不遇を囲ってきた可能性も高い。そういった話を幼い頃から聞いていて、自分の将来に不安を持って生きてきたんだろうな。かわいそうに。


「ところでスピアがシュトレイマン派なのはどんな特徴で選ばれたのでしょうか。俺が知っているクロリーネ・ジルバリンク侯爵家令嬢はピンクブロンドの髪に目に黄色が混ざっているのが特徴なのだが、スピアやエリザベートは少し違う」


「いわゆるシュトレイマン型は、ブロンドの髪色に色が混ざるのと、魔力が発動すると目が金色に変わるというのが特徴だ。先週のフリュオリーネとの決闘で、エリザベートの目の色はどうだった?」


「あの時は全身がオーラで輝いていてよく見えなかったが、言われてみれば目が金色に変わっていた気がする」


「そうだ。スピアも魔力が高まれば、髪色はより青く目も金色に輝き出す」


「なるほど、色が変化するのが特徴だったのか。ちなみにアウレウス型は金髪碧眼でいいのですよね」


「ああ、見ての通りだ。わかりやすいだろ」

次回、舞踏会開幕です


ご期待ください

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