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Subjects Runes ~高速詠唱と現代知識で戦乱の貴族社会をのし上がる~  作者: くまっち
第2部 第1章 アージェント学園の転校生
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第187話 期末テストの勉強会

 ボロンブラーク校のカリキュラムは、一年が前期と後期の2つに分かれていて、来週から前期の期末テストが始まる。最初の2日間が学科試験、その後は実技試験であり、今回は久しぶりに闘技大会が開かれることになっている。


 今日は学科試験の勉強をするために、クラス全員が放課後の教室に残っていた。私はシュトレイマン派の鉄壁・お稲荷姉妹がトイレに行ったその隙に、クロリーネ様に話しかけた。


「クロリーネ様、今日は朝からとてもご機嫌麗しかったですね。昨日はお兄様たちとポアソン領へ視察に行かれたようですが、そこで何かいいことがごさいましたか?」


「ふふふっ、特に何もございませんわっ! ただアゾート先輩たちと空の散歩を楽しんだだけですっ」


 うっ・・・想像以上にハイテンションだ。


「その感じ、ただフレイヤーに乗っただけ・・・というわけではなさそうですね。何があったのか是非教えてくださいませ」


「いいえ、それはできません。なぜならアゾート先輩から誰にも言ってはいけない重大な秘密を教えて頂いたのです。それはもう大変な秘密でしたわ」


「なにそれっ! そんなことを聞くと、ますます何があったか知りたくなるじゃないの。クロリーネ様~、教えてくださいませ~」


「・・・リーズ様は既にご存じのお話だと思います。メルクリウス公爵様の件ですよ。わたくしもプロメテウス城で皆様が話されている内容から、うっすらとは想像しておりましたが、まさかあのようなとんでもないお話だったとは・・・」


「あ~あ、シリウス教国との国境に行った時に教えてもらったのね。そうそう、私も一緒に戦ったんですよ。まだ今年のことなのに、なんだか懐かしいな」


「アゾート先輩って、本当に素敵ですよねっ!」


「え、そうかなぁ。あの時のお兄様はずっとアルゴの面倒を見ていただけだし、私とカイン様の方がずっと活躍してたと思うよ。それにあの戦いで「最強火力バカ」の栄冠を勝ち取ったのはセレン姉様でした。お兄様が素敵な要素ってあったかな?」


「・・・・・」


「どうかなさいましたか、クロリーネ様?」


「いえ、何でもございません。(そっか、リーズ様は建国の英雄の話の方は、まだアゾート先輩から何も聞かされてないんだ)」


「え、何かおっしゃいましたか、クロリーネ様?」


「ふふっ!」


「急にどうしたのですか? な、なんか気持ち悪い」


「いいえ、別に何でもございません。あ、そろそろお稲荷姉妹がトイレから戻ってくるので、アウレウス派の座席へ戻られた方がよろしくてよ、リーズ様」


「そ、そ、そうね。あの子達に見つかると、また面倒くさくなるからまた今度ね」


 私は慌てて席に戻ったが、遠くから見るクロリーネ様からは、恋する乙女オーラが一段と漂っているように感じられた。


 たった1日行動をともにしただけなのに、どうしてここまでクロリーネ様を変えることができるのだろうか。お兄様、恐るべし。






 さて私が席に戻ると、私とターニャ様の座席の隣にメリア様とヒルダ様がそれぞれ移動してきた。


 そしてその周りを、アウレウス派だけでなく中立派とシュトレイマン派も含めたクラスの男子全員が机を移動させて取り囲んだ。私の親衛隊だ。


 これがクラスの過半数以上が集まった最大の勉強会グループ、アウレウス派令嬢グループである。




 私たちのグループ以外は、女子のグループが2つ。


 一つはクロリーネ様とお稲荷姉妹、それに眼鏡をかけた地味子の4人のシュトレイマン派女子グループ。もう一つはカレン・アルバハイム嬢とその護衛騎士のモナ様、それにミーア様とサーラ様を加えた4人からなる中立派女子グループだ。


 私が教室を見渡していると、そのカレン様と目が合ってしまった。


 マズいっ!




 カレン様はこちらを見てニコリと微笑むと、取り巻きの3人を連れてこちらへ歩いてきた。そして、


「あらリーズ様、ごきげんよう。アウレウス派ご令嬢の皆様も、男子生徒たちに囲まれて婚活に余念がなく、結構なことですわね」


 カレン様が挨拶代わりのジャブをいきなり放ってきた。そしてこれを受けたのがメリア様だ。


「あ~らカレン様。丁寧なご挨拶を頂き誠にありがとう存じます。私どもと違いカレン様はご実家のゴリ押しでカイン様とのご婚約は決まったも同然ですものね。ああうらやましいですわ」


「そうですわね。カレン様は殿方のことなど一切気にせずに、お勉学だけに集中できるのですから、前期のテストではさぞかし優秀な成績を修められるのでしょうね。ああうらやましいこと」


「でも変ですわね。そんな勝ち組のカレン様が、わざわざ私どもの席までお越し頂いて、そのようなお言葉をおかけになるなんて、もしやカイン様との間に何かございましたか。もしご心配ごとがございましたら、どうぞ私どもにご相談くださいませ。オホホホ」


 うわ、メリア様のカウンター攻撃のあと、すかさず放たれたヒルダ様のボディーブローと、ターニャ様のアッパーが見事にきまった!


 1対3の滅多打ちに、カレン様の表情が完全にひきつっていらっしゃる・・・。メリア様たちが私の味方で本当によかった。それに引きかえカレン様の取巻き令嬢からは、何の攻撃も繰り出されない。


 カレン様もそのことに苛立っている様子で、ついにモナ様をけしかけた。


「モナ様っ! この方々がわたくしのことをバカにしています。モナ様からも何かおっしゃりたいことがございますよね!」


「いえ、私は武門の女ですので、婚活などという浮わついた話にはついていけません。この場での発言はご容赦ください」


「・・・そ、そうね、モナ様は武門の女でしたわね。ではミーア様からは何かございますか?」


「(ビクッ)わ、わたしですか? あの、その・・・えーと・・・」


「・・・・・!」


 あ、今カレン様から「ブチッ」て何かが切れる音が聞こえた。


「ではサーラ様、このアウレウス派の方々にしっかり言い返しなさいませ!」


 今度は別の子をけしかけ始めた。


「カレン様、私にはすでに婚約者がおりますので、婚活よりも勉強がしとうございます。もう席に戻ってもよろしいですか」


「か、勝手になさいっ!」


 サーラ様が軽くスカートをつまむと、さっさと自分の席に戻っていった。彼女ってこんなドライな令嬢だったのか。


 でもこうして見ると、中立派令嬢の戦闘力は5ってところかしら。うちの3人組は、ざっと見積もっても53万はあるわね。


 あくまでもお兄様的イメージですけれど。




 さて多勢に無勢のカレン様は、敗色を察したとたん目を涙でうるうるさせて、男子生徒のところに逃げ込んでしまった。


「リーズ様と取巻きの3人組が、みんなでカレンのことをいじめるの。誰かカレンを助けて・・・お願い」


 カレン様が私の親衛隊の中立派男子たちに助けを求めているが、いきなり性格が豹変しすぎでしょ!


 さっきまでうちの3人組とタメを張ってたくせに、いきなりか弱い深窓の令嬢を演じても、さすがに無理があるでしょう。


 ていうか、私のお友達を「3人組」なんて声に出して呼ばないでほしい。そういうのは頭の中で思っているだけにしてよ、後で恐いじゃない。




 ツッコミが追い付かないカレン様の行動はひとまず置いておいて、私は親衛隊の反応を見ることにした。


 こういう女に男子はどう接するのだろうか。やはり、庇護欲をそそられたりするのだろうか。もしカレン様に好意的な反応を見せるようなら、私もその演技力を身につけておいて損はないだろう。


 果たして。


「カレン、クラス全員が今のやりとりを一部始終見てるんだ。さすがにその発言には無理があるだろう」


 あ、やっぱり普通に考えておかしいよね。


「まあ、その悪役令嬢になりきれない間抜けさが、カレンのチャームポイントかもしれないが、さすがにリーズたん相手では勝てないよ」


「ひどいっ! どうして同じ派閥のカレンより、アウレウス派のリーズ様のことを庇ったりするのよ!」


「・・・いや、同じ派閥と言われても、中立派ってただの寄せ集めじゃないか。それに俺は侯爵家の直下の家門で、カレンのアルバハイム家とは特に関係がないんだが」


「そ、それでもっ、アウレウス派の女子を庇う必要がどこにあるのですか!」


「あるな」


「それはどうして!」


「それはリーズたんだからだよ。この子はハッキリ言ってポンコツ。自分では恋愛に詳しいと自負しているのに、実は恋愛に疎くて男子の気持ちに超鈍感なんだ。そしてなぜかボッチ体質を気にしていて自己評価が低く、いつもオドオドしているのに、魔力も戦闘力も抜群。それでいてルックスもスタイルも学年はおろか学園全体でみてもトップクラスの美少女だ。つまりリーズたんは危なっかしくて見てられないし、強いのに何故か守って上げたい庇護欲をそそられる。そして嫁にできると親が喜ぶというおまけつきの「貴族萌え要素」の塊なんだよ」



 ガーン・・・。


 まさかこの私がポンコツで鈍感だったなんて。でもそれが理由でファンがいるって、どういうこと?


 全く意味がわからない・・・。



「・・・そんなに長々と語らないでっ! リーズ賛美なんか誰もそこまで聞いてないわよっ!」


 部が悪いと察したのか、カレン様は自分の席に撤退してしまった。引き際をわきまえた名将である。





 やっとうるさいのがいなくなって勉強に集中しようとしたら、今度はお稲荷姉妹がやってきた。


「リーズ、今度の期末テストの闘技大会であなたを倒す秘策ができたわ。勝負を受けてよ」


「はわわわ、エリサの言うとおり、闘技大会では確実にリーズ様あなたを倒します」


「なんなのよあなたたち。なんで今日に限って、二人で意見が一致してるのよ」


「ソルレート侵攻作戦を共に戦ってきてわかったが、リーズお前は強い。でも最強はクロリーネ様とその護衛騎士である私とリナであることを証明する」


「はわわわ、ここに宣戦布告します。1年生闘技大会では、このシュトレイマン派女子グループ4人で、あなたたちアウレウス派令嬢グループ4人衆を倒します」


「シュトレイマン派女子グループ4人って、地味子も入れるの」


「もちろんです。地味子は我々の最終兵器、期待して損はございません、はわ」


 そんなお稲荷の後ろからクロリーネ様が登場した。


「わたくしは誓ったのです。フリュオリーネ様がいらっしゃらない今、この学園のエースはわたくしだと。わたくしアゾート先輩からの多大なるご期待に、必ずやお応え申し上げますので、王都アージェントから見守っていてくださいっ!」


 それだけ言ってクロリーネ様達が戻って行くと、入れ替わるように、またカレン様がやってきた。


「当然、わたくしたち中立派女子グループも参戦いたします。今回の闘技大会のレギュレーションに乗っ取り、わたくしたちのグループもアイドルユニットを立ち上げて、リーズ様のユニットを倒して差し上げますわ」


 そう言ったカレン様の目は燃えていたが、私の頭は混乱していた。





 闘技大会のレギュレーションって何? アイドルユニットと闘技大会って、何か関係があるの?


 ていうかこの放課後の勉強会、さっきから誰も勉強してないよね。みんな何しにここにいるのよっ!

次回はアージェント学園の大舞踏会


全校生徒が一同に会します


他にどんな王族がいるのか、ご期待ください

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