乙子ルート 第4日目⑥
⑥
「ん? なんか言ったか?」
いくら気心の知れた幼なじみとはいえ、関係はフィフティーフィフティーでいたい。
そんなオレは乙子に相談をもちかける。
「なんかお礼したいんだけど、オレになんかしてほしいこととかあるか? オレの純潔をささげることと金銭面以外のことならできうる限り善処しよう」
金はロストチェリーが済むまではいくらあっても邪魔にはならないし、オレの純潔はあくまでもオレだけのものだからな。
そこだけは譲れない。
しかし、乙子の返答はというと。
「どっちも頼んだりしないから安心して」
即答されて軽く凹む。
「真面目な話、なんかないか?」
「別にいいわよ、そんなの。さっきも言ったでしょ、ボランティアよ。ボ・ラ・ン・ティ・ア」
「そんなことを言われても、このままじゃオレの気持ちがおさまらないわけで」
オレはふと達人からもらった遊園地のタダ券があることを思い出した。
「そう言や、オレ遊園地のタダ券持ってんだ。やらないか?」
言い間違えて、ウホッ、な発言をしてしまう。
ABさんが聞いたら、喜んでホイホイ寄ってきそうな危険なセリフだ。
「何をよ?」
「じゃなくて、行かないか?」
特に行くような相手もいないので、最悪達人と行こうと思ってたところだ。チケットをもらった当人と。
日頃の感謝も込めて、オレのおごりで。
男二人で遊園地。
相当イタイ図なわけだが。
それでも、達人なら……それでも達人ならきっとなんとかしてくれる!!
何をだ?
まあ、そんなことは今はどうでも良くて。
「……」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「えーと、オトコさん?」
「そこまで必死になられちゃ仕方ないわね。行ってあげてもいいわよ」
ツンデレ全開なセリフとは裏腹に割と乗り気なようだ。
「いや、全然必死じゃありませんよ? 何気なく誘っただけですよ?」
「で、いつ行くの?」
いつにしよう。
「明日とかは?」
「それは……急ね……」
考える素振りを見せる乙子。
確かに急だ。
でもオレがやらはたを迎えるまでに期間が一週間しかないとか大人の事情があるわけで……察しろよ、なあ?
「都合悪いか? オレは割といつでもOKだけど……」
「わかった。いいわよ、明日で」
「即決か。お互いヒマ人だな」
「うっ、うるさいわね、あんたといっしょにしないでよ! あたしは明日だけはたまたま予定が入ってないの! た・ま・た・ま!!」
「はいはい、そういうことにしておきますよ……。時間は午後からになっちまうけど、いいか?」
「いいわよ」
「んじゃ昼の一時からな。現地集合ってことで。いくらオレとのランデヴーが楽しみだからって夜の一時に待ち合わせ場所に行っちゃダメだぜ?」
「行かないわよ」
思いっきりバカを見る視線でつっこむ乙子。
さっきのあたたかい眼差しはどこへ行ってしまったのか。それはお星様しか知らない。
こんな流れで明日は午後から乙子と遊園地だ。
今日予定を入れて明日実行。
大学生ってのは本当にいい身分だ。
ま、バイト入れてるヤツとかは別だろうけどさ。
明日は遊園地か。
オラ、すっげえワクワクしてきたぞ!
相手が乙子じゃなかったらな。
そんなことを考えつつも、明日が楽しみで仕方のないオレだった。




