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乙子ルート 第4日目⑤

 ぱくっ。


「どう?」


「……う……」


「う?」


「……うまい……」


 オレは本気でそう思った。


「オトコにこんな隠れた特技があったとは……」


 小学生の頃は料理と呼んだらサギで訴えられそうなモノを食わせられたものだが。


 成長したな、乙子。


 お兄さんはうれしいぞ。


「そう? なら、どんどん食べて。たくさんあるから」


「お、おう」


 微笑む乙子。


 その表情はとても穏やかだ。


 こいつ、こんな顔もできるんだな。


 つか、普段はオレと達人が怒らせてるからか。ちょっと反省。


 さて、これで憂いはなくなった。


 もうオレのやるべきことは一つだけだ。


 食う。


 ひたすら食う。


 日頃家庭の味に飢えているので、食える時に食っておくしか。


「おかわりは?」


「くれ」


 そして。


 オレは用意された料理をすべて平らげ事実上のごちそう様をした。


「ふぅーっ、食った食った。ごっそさん」


「あんた、よく食べたわね……」


「うまかったからな」


 お世辞じゃなく本当にうまかった。


 こいつと結婚できる男は幸せだと思ったり思わなかったり。


「それにしても意外だったわ。あんたがそんな素直に褒めてくれるなんて……」


「オレは褒める時は素直に褒めるおとこですよ? にしても、マジで上手くなったな料理。驚いた」


「まあね。昔とは違うのよ、昔とは」


 胸を張る乙子。


 その瞬間、オレの目に決して小さくはないふくらみが目に入る。


 いかん、あんまり凝視するとちんちんがおっきしてしまいそうだ。


 オレはあわてて視線を逸らした。


「昔のことを知ってるオレにはすごいインパクトでしたよ? いや、あん時はマジでなんの毒を盛られたのかと思ったからな」


「……そんなにひどかった?」


「ひどかった。当時のオレはなんか嫌われるようなことしたかな、と真剣に悩んだものです。まあ、心当たりありすぎて逆にわかんなかったけどな」


「あんたらしいわね」


「おっしゃる通りで」


 そんな感じでオレたちの会話は弾んだ。


「ちょっと料理を作ってあげたからってカン違いしないでよ? 普段ロクなものを食べれないあんたがあまりにもかわいそうだからボランティアでしてあげただけなんだからね? あたしのご飯作るついでよ、ついで」


「当たり前だろ。オトコがオレのためにわざわざメシ作ってくれるとかありえねーからな。いちいちクギ刺さなくてもカン違いなんてしねーから安心しろ」


 そう前置きした上で、


「でも、感謝はしてる。ありがとな」


 と、素直に感謝の気持ちは伝える。


「そ、そう? わかってればいいのよ、わかってれば」


「ああ、オレはそんなカン違いクンじゃないからな」


「少しくらいはカン違いしなさいよ、バカ……」


 乙子のその声は小さ過ぎてオレには聞こえなかった。

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