第01日目 共通ルート②
②
間述市内・繁華街。
八月一日 午前十時三十二分。
街に着いた。
クーラーの利いた部屋の中とは違って、熱のこもったアスファルトに覆われた街の中はまるでサウナのようだった。
セミどもは残り少ない命を燃やすようにミンミン鳴いてるし、熱でなんか前が歪んで見える。
何でオレはこんな所にいるんだろう?
オレの頭は数時間しか記憶を維持できない人のような状態になっていた。
そして頭の中の大半を占めるのは「帰りてー」。その思いだけだった。
だが、親友の達人がわざわざナンパの実演をしてくれるとまで言ってるのに、童貞たるオレが帰るわけにもいかない。
あと、このオレのやる気のなさが未だに童貞を捨てられない理由のような気がしないでもない。
そんなわけで、とりあえず今日くらいは達人のレクチャーに耳を傾けることにしよう。
「んじゃ、お前は適当に物陰からオレのナンパのやり方を見てろ」
「了解です、隊長」
「うむ」
雑踏に消えていく達人。
ぼんやりと達人をながめるオレ。
達人はすぐには声をかけ始めない。どうやらターゲットをしぼっているらしい。
戦いはすでに始まっていると。そういうことですね、奥さん。
しばらくの間、行動を停止していた達人がついに動き出した。
いかにも軽そうな日焼けしたギャル(発音↑)に声をかける。
髪はけっこう長い。あと、おっぱいが大きい。
服はピンクのキャミソール。あと、おっぱいが大きい。
背は一六〇センチ前半。あと、おっぱいが大きい。
こんな「あと、おっぱいが大きい」ばっか書いてると、なんかオレがおっぱいしか見てないヤツみたいだな。
……いや、実際そうなんだけどさ。
「ヘイ、そこの彼女。オレとロイポ(ロイヤルポスト)でシーメでもイワさない?」
思わずこけそうになった。
いくら達人が自称「ナンパの達人」でも、こんなナンパの仕方じゃついて来る女の子はいないだろう。
だがしかし。
「おごってくれるの?」
ひっかかるのかよ。
「モチのロン」
「ん~、どうしよっかな?」
「デザートも付けるからさ」
「なら行く」
それでいいのかよ。
見た目通り軽い女の子のようだ。
「ロイポにはよく行くの?」
「行くよ、一人で。彼女とかいないからさ」
「またまた~」
意外なことにウソはついていない達人。
確かに彼女はいない。
ヤりまくってるけど。
「キミの方こそ彼氏いるんじゃないの?」
「え? カレシ(発音↑)? そんなの全然いないし」
「マジ? じゃあオレが立候補してもいい?」
「またまた~。ウソばっかり~」
「いやいや、本気だって」
そんな会話をしつつ、ロイポにたどり着く二人。