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乙子ルート 第2日目④

 任務は完了していない。


 むしろ、「オレたちの本当の戦いはこれからだ!」って感じだ。


 しかし、オレの予想を裏切る言葉が乙子の口から飛び出したわけで。


「そうなんだ。じゃあ、あたしも行くから。いいわよね?」


 再び笑顔で威嚇してくる乙子。


 お前、笑顔の使い方間違ってる。


 笑顔は自分と周りを幸せにするための神様からの贈り物ですよ(ポエマー的思考)?


 けっして人を脅迫するための道具ではありません。


 とは言うものも、いくら乙子でももう一人の当事者である末理さんの承諾なしにはそうゴリ押しもできないだろう。


 オレはわずかな望みを託して末理さんに話を振った。


「末理さん……」


 オレは目で末理さんに訴えかけた。


 あなたが言うべき言葉は「NO」ですよ。


 そう、「絶対にノゥ」。


 しかし、そんなオレの思いとは裏腹に末理さんはまったく空気を読んではくれなかった。


「構わないわよ。人数が多い方が楽しそうだし」


 オレはがっくりとうなだれた。


 そんな中、達人だけが我関せず、といった感じでのん気に今来たばかりのアイスコーヒーをすすっている。


「そこで関係なさそうな顔してるバカ、あんたも付き合いなさい。どうせヒマなんでしょ?」


「あん? オレも?」


 いきなり話を振られた達人がハトが豆鉄砲を食らったような顔で訊き返した。


「今のままじゃ三人だから、一人あぶれちゃうじゃない。そうならないための人数合わせ要員なの、あんたは」


「しょーがねーな。オレもあんまヒマじゃねーんだけど、ここは親友のために一肌脱ぎますか」


「えっ? お前も来るつもりなのか?」


 達人だけは空気を読んで辞退してくれると思ったのに。


 そんなオレの思惑を見透かしたかのように達人が小声でささやく。


「オレは貞君の恋路を邪魔するつもりなんてさらさらねーけど、オトコがこう言ってんじゃ行かざるをえねーだろ」


 確かに乙子は一度言い出したら、スポンサーのテコ入れにすら抗いかねない性格だ。


 ちなみにテコ入れってのは番組前半「烈○」とか「火炎○」みたいな和風バリバリだったアイテムのネーミングを後半になったらいきなり「ア○ムドセイバー」とか洋風バリバリな名前にすることとかな。


 ……つか、オレでも抗うわ、それ。


 「抗え、最後まで」。……ロクなことになりませんでした。


 ともかく、この場を丸く収めるには首を縦に振るしかなかったわけで。


 ナイス判断、達人。


 というわけで、二人も付いてくるってことで確定らしい。


 これじゃあオレと末理さんの甘い甘いミルク&ハニーな時間が……。


「べ、別にあんたが行くから行くわけじゃないんだからね! あんたがお姉さんに変なことしないように見張りに行くだけなんだから! カン違いしないでよ!」


 まんまツンデレのテンプレなセリフを理由にして乙子が言った。


 そんなわけで週末は海です。海なのです。


 予定とは違ってしまったけど、みんなでワイワイ海に行くのも悪くないかもしれない。


 今から海に行くのが楽しみだ。


 そんな現金なことを考えるオレだった。


 一応話はまとまったので、乙子と達人は離脱。


 その後昼食を済ませてから、ここら辺の案内を兼ねて周囲を末理さんとブラブラすることになった。

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