第01日目 共通ルート①
①
間述市内・某所。
八月一日 午前十時〇八分。
夏。真夏。英語で言えば、サマー。
焼けつく太陽が素肌を焦がす、まぶしい季節。
クソうるさいセミどもの声。白い雲。青い空。
でも、オレの心はこの青空のようにブルー。サムライブ○ーよりブルー。堕天使B○UEよりブルー。もっと言えば、カナシミブ○ーよりブルー。
オレの名前は立里貞君。神に選ばれた特別な存在だ。
……冗談だってば。引くなよ。
テンプレ化されたエロゲ的テキストに一石を投じるべく、ちょっとお茶目してみただけじゃんか。本気にするなよ。
ということで、実際のオレはどこにでもいる平凡な大学二年生だ。
どっかのバターあめのCMじゃあるまいし、ちょっとうまいあめをもらったからって「自分は特別な存在」とか思い込むわけもなく、健全に成長してきました。
オレはそんな電波な子じゃありません。
そんな電波な子どもを持った親は一体どんな教育をしてきたのかマジで知りたい。
どういう風に育てれば、そんな子どもになるのかと。
オレのちょっと変わったところといえば、男の子のデリケートゾーンに星形のほくろがあることぐらいですよ。
と、まあ、そんなことはどうでもいいよな。話を進めるぜ。
今、オレは焦っている。
と言うのも、オレはあと一週間でハタチになるわけだが、未だにSEXというものをしたことがない。
年々初体験の年齢が若年化しているこのご時世に、だ。
このままじゃ、「やらはた(やらずのハタチ)」という不名誉な称号がついてしまう。
悪友はやりまくっているというのにオレは未だに童貞のまま。
こんな不公平はたとえ神が許してもオレが許さん!!
ピンポーン。
そんなことを考えていたら、誰か来た。
まあここに来るのは限られてるから、誰かは大体予想がついてるけどな。
そんなことを考えつつドアを開けると、見慣れたチャラそうな顔がそこにあった。
「よう、貞君。相変わらず清い身体か?」
大体のヤツは「なんだ、このチャラ男? チ○ポもぐぞ?」とか思ったと思うけど、とりあえず落ち着け。敵じゃないから。
こいつがさっき話に出てきたオレの悪友の難波達人。
オレと同じく特別カッコイイわけじゃなく、「まあ、雰囲気イケメンかな?」程度のどこにでもいそうなルックスの男だ。
それにもかかわらず、達人はやりまくり、オレは童貞というありえないほどの差をつけられている。
これは屈辱だ。屈辱は一秒でも早くそそがねばならない。
そんなことを考えつつ、いつものように軽口を叩き合う。
「悪かったな、童貞で。世の中お前みたいにパコパコできるヤツばっかじゃねーんだよ」
「一つ問おう。貞君、お前は何を考えて生きてる?」
「なんだよ、いきなり……」
「いいから答えろ。お前は一体何を考えて生きてるんだ?」
「何って……別になんも」
「ふぅ、だからお前はダメなんだ……」
達人が大げさなため息をついた。今のはちょっと頭に来た。
それなら達人はどんな高尚なことを考えながら生きているというんだろうか。気になったので、ちょっと訊いてみた。
「そういうお前はどうなんだよ?」
「SEXのことだけを……」
「あん?」
「SEXのことだけを考えて生きている!」
「な、なんだってーーー!!」
「わかるか、貞君……。それがオレとお前の決定的な違いだ。何となく生きててSEXできると思うなよ」
「達人……恐ろしい子……!」
オレは親友の恐ろしさに驚きを隠せなかった。
そんなオレの動揺もお構いなしに達人が話を続ける。
「お前もあと一週間でハタチだし、このままだとヤバイと思うんだ」
「で?」
何が言いたいんだろうか。
「見せてやるよ。ヤリチンのナンパのやり方ってヤツを!」
キラーン!
そう言って、意味もなく歯を光らせる。
お前は有閑マダムにモテモテのテニスコーチか。
つまり、ナンパのやり方を教えてくれるつもりらしい。
「お手並み拝見といったところか……」
達人がしょっちゅうナンパしてお持ち帰りしてるのは知ってたけど、実際にその現場に立ち合ったことはない。
いい機会だ。
こうしてオレたちは街にくり出すことにした。