05:究極のMODサーバー
愛好家が集う究極のマジホリ、「ライジングサン」とは、一体?!
05:究極のMODサーバー
マジホリRS。
マジカルホーリーストレングス・ライジングサン。
それは、日本の改造データ作成チームが十年以上の歳月を掛けて徹底的に作り込み、マジホリを越えたマジホリとして完成させた、珠玉の一品。
いわゆる、MODというヤツだ。
その製作者達を始めとした、マジホリ廃人達は、いつでもどこでもこのMODでオンラインプレイを可能にするため、自分達で専用のサーバーマシンを組んでしまったのだ。
マジホリは最大八人同時プレイで、各パーティー同士が出会う事はない。MMO(大規模マルチ)RPGではなく、MO(小規模マルチ)RPGで、他のプレイヤーと出会う場はロビーチャットしか無い。
MOD開発チームは、この文字だけだったロビーチャット機能を新規に追加した町のMAPに組み込み、町一つ分だけとは言え、多人数のプレイヤーが同一のMAPで語り合うという、MMOに近い状態を成立させていた。
これによってパーティー内以外でのアイテムの交換が成立。身内以外との情報のやり取りもしやすくなった。
更に、キャラクターの数も、基本の7人から24人にまで増え、装備、スキル、モンスター、等々、あらゆる要素がボリュームアップし、適切にバランス調整されていた。
また、キャラクターを作ってはプレイし直すタイプのゲーマーの要望に応え、育成はサクサク進むが、インフェルノに挑む辺りからはじっくりキャラを強化していく事が要求されるという、絶妙な経験値のさじ加減を成立させている。
レベル上限が99から999になったり、ボスがランダムで行動パターンを変更したり、地下200階に及ぶ究極のインフェルノダンジョンが最後に控えていたり……
初心者から廃人まで、幅広いプレイスタイルに応える、完全無欠のマジホリ最終形態、それが、ライジングサン。
マジホリRS、だ。
「へぇ~ すっげぇー!」
wikiを見ながらユウリに説明を受け、コウヤは感嘆しきりだった。
見たこともないキャラクター、見たこともないモンスター、凄まじい性能の装備品……
今のコウヤにとって、これはまさにパラダイスだった。
「今マジホリをプレイするなら、断然ここです」
ユウリは熱弁を振るい終え、満足の表情。
なるほど、確かにこれなら他のプレイヤーとのアイテムトレードも、行き詰まった時にアドバイスをもらう事も可能だ。
いざとなったら、五人目以降のパーティーメンバーを募集したりも出来るだろう。
四人だけで難易度インフェルノの果ての果てを目指すより、ずっと楽になるはずだ。
「すげぇな…… オンラインモードまで自力で作っちまうなんて」
「キャラが三倍以上というのも驚きね」
ユウイはイマイチ何がどう凄いのか分かっていなかったようだが、マヤとコウヤは素直に驚いていた。
ゲームの改造と言えば、手に入らないアイテムやモンスターを勝手に増やしてしまうような、悪意あるズルばかりだと思っていたから、このような前向きな努力の積み重ねで、ゲームを一本作り直すような世界が存在していようとは、思っても見なかったのだ。
「あら、久しぶりに見たわね、それ」
「えっ?」
洗い物をしていたコウヤの母が、モニターに映る画面を見て、意外な言葉を発する。
こういうゲームには関心が無さそうなのだが。
「知ってるの? ママ」
「ええ。 それ、パパも制作に参加してたもの」
「「「ええぇぇぇぇ~~~~!!」」」
よく分かっていないユウイ以外の三人が、揃って声を上げる。
「キャラクター2つ……ロードとバンパイヤだったかしら。
あと、ああそれそれ、その辺りのモンスターのデザインはウチのパパがやったトコよ」
やけに気合の入ったハーピーやヘビ女のデザインに、父の趣味を垣間見てしまった。
知りたくない情報だったかもしれない。
「あーっ! 私これ使いたーい!」
ユウイが、自分のノートPCでRSのwikiを開き、キャラクター一覧を眺めて、大きな声を上げた。
ロードで女性を選択すると、綺麗なお姫様の姿になるようだった。
(趣味丸出しすぎてゲームの雰囲気にあってないのでは……)
凄いなあ、とは思いつつ、コウヤは呆れ顔になってしまっていた。
「ユウイ、このキャラは初心者向けじゃなくて、すごく難しいって書いてるぞ。
まずは使いやすいキャラで遊んでみたらどうだ?」
「えええぇ~~~~~」
「兄貴の言う通りだぞ、イモウト。俺も操作に慣れるまでは結構大変だったんだから」
「むぅー 分かった……」
コウヤの言う事なら素直に聞く。ウンウン、と一人ユウリは満足げに頷く。
「それでは、とにかく、RSで始める、でいいですよね?」
「当然!」
「オーケー」
「はーい!」
「それでは皆さん、まずはRSをダウンロードしましょう」
すっかり知識の面でユウリに追い抜かれてしまった事に少々憤慨しながらも、コウヤは素直にユウリの導きに従った。
そんなつまらないプライドよりも、今は未知の世界が新たに広がる事の方が楽しみだったのだ。
父さんが帰ってきたら、色々質問攻めにしてやろう。
オンラインの説明もまだロクに受けていないし、自ら開発したMODの事など一言も触れていない。
「ユーイちゃん、このお姫様ね、私の若い頃に似せてあるのよ~
よかったら使ってみてね!」
「うん!! がんばる!!」
家事の合間、通りすがった母が、余計なことをユウイに吹き込む。
やめてくれ…… かーちゃんの顔を思い浮かべながら冒険はしたくない……
予想外の家庭の真実に驚かされながらも、四人はそれぞれ、大規模MOD「ライジングサン」の適用に成功した。
タイトル画面が全く別の、和風要素の物に変わり、いよいよ、四人はゲームを開始する。
※この物語に登場するMODはフィクションです※
※この物語に登場するMODはフィクションですってば※
※この物語に登場するMODはフィクションなんです。町モードなんて無かったし!※