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03:増えていく犠牲者

友人達に協力プレイの助けを求めるコウヤだったが、古すぎるゲームではそれも難しく……

03:増えていく犠牲者


「で、やってみねー? マジホリ」


「やだよー そんな古いゲーム!」


「俺パソコン持ってねーし」


ローカルプレイ。

インターネットを用いず、友人のパソコンとネットを介して繋ぎ、仲間内で協力プレイをするモードだ。

現在のOSでは起動しないゲームなので、古いパソコンを用意しなければならず、元より無理な話であったが、その辺りをよく分かっていないコウヤは、勢い込んで友人達を勧誘していた。


「へぇ、マジホリ、ですか……

ホームサーバーを立てるんですか?」


反応を示したのは、パソコンやネットに詳しい、成績優秀な優等生、ユウリだった。

オフラインのローカルプレイの事からよく分かっていないコウヤには、彼が言っているホームサーバーの意味も分かっていなかったが、まずは一人目の仲間が見つかったと、満面の笑顔で応える。


「知ってんのかユウリ! さっすが!」


「ええ、昔かなり人気があったというのは知っています。

 確か、Smartsでは買えないんですよね」


Smartsと言うのは、パソコン用ゲームをダウンロード販売している、世界最王手のオンラインショップだ。


「興味はあったんですよね。

でも、手に入れる手段が無いんですよね」


「だいじょぶ、だいじょぶ、父さんがディスク使っていいって言ってるから」


「確かに、その頃のゲームならオンライン認証も無いですし、シリアルコードだけで何人でも別のPCにインストール出来ますけど……

それって、違法なんじゃないですか? いくら古いゲームって言っても、そういうのはちょっと……」


「それも父ちゃんが大丈夫って言ってた。

なんか、ゲームソース?とか、フリーで公開してて、色々公式で認めてるから心配ないって!」


「ほんとですか? それなら、まあ…… お言葉に甘えましょうか」


「やったぜ! これで三人は確保だな!」


「三人? もう一人は?」


「ねーちゃん、頼んだらマジホリやってみたいって」


コウヤの姉、マヤは、いわゆるオタクタイプで、何事もローカル、マイナーな知識を好み、流行り物より古い作品を好む傾向にあった。

主に、漫画、アニメ、小説にのめり込むタイプで、ゲームは守備範囲外だったのだが、最近は父の影響でゲームにも手を出しつつあった。

姉弟揃って、父の仕掛けた罠に掛かった形になる。


「ああ、コウヤ君のお姉さん、こういうマニアックなの好きそうですよね」


似たような趣味嗜好を持つユウリは、以前から時々何やら姉と話があって、盛り上がっている事があった。

コウヤは、こうして無関心な風を装っていても、ユウリは姉に気があるのでは、と察していた。


「じゃ、今日は俺ん家集合な!」


「集合って、僕らだけですけどね」


「なんだよなぁ~ まあ、俺らで盛り上げて、あと何人か増やそうぜ!」


「無理だと思いますけどねぇ……」




二人の家は近所だったので、学校が終わった後、大して待つ事もなく、ユウリがコウヤの家を訪れる。


「お邪魔します」

「おじゃましまーす!」


穏やかだが元気の無いユウリの声に、もう一つ、元気な声が重なる。


「げっ! イモウト!」


「済まない、どうしても付いてくるって言うんでね。

プレイヤーが一人増えるし、良いかと思って」


二人揃って、使い古された業務用ノートパソコンを小脇に抱えている。

ユウリの家では、親の会社の使い古しの型落ちパソコンを好きに使える。

そういった環境もあって、ユウリはパソコンゲームに詳しくなったのだが、妹のユウイの方はそうでもない。

なんでもかんでも兄と同じように扱われないと腹を立てる性分で、男子の遊びに首を突っ込んで、やたらと仲間に入りたがった。


「まあ、今回はしゃあねーか…… 確かに人数足りないしなぁ」


「よろしくおねがいします!」


ユウイは満面の笑みで、頭を下げる。

この兄妹は家が裕福で育ちが良いせいもあり、こういうバカ丁寧な所があって、何か頼まれると断り辛くて困る。

年下のわがままな女子が加わると、とかく鬱陶しく、楽しく遊ぶ事が出来ないのだが、こっちから頼み事をした手前、認めざるを得ない。

普段なら腹を立てる所だが、今回は我慢する事にした。


「じゃあ、早速始めようか」


妹と共に、ユウリが靴を脱いで家に上がる。

嬉しそうに走り出すユウイに、やれやれとコウヤは困り顔をしているが、ユウリには分かっている。

本当は、妹に懐かれてコウヤもまんざらではないのだと。

ユウイが遊びの仲間に入りたがって、他のクラスメイトに乱暴に追い返された時も、後でこっそり泣いている妹を慰めていたし、抱きつかれて笑顔になっていた事も知っている。照れ隠しに嫌っているそぶりをしているだけだ。


「あ、ユウくんいらっしゃい」


「どうも……」


コウヤの姉、マヤが居間にやってきた。

相変わらず、この二人の会話はそっけなく、必要最低限のやりとりしかしなかったが、互いに好意を持っているのは、こういう事にまったく疎いコウヤですら気付ける事だった。


「二人ともゆっくりしていってね」


母が飲み物を置いて去っていく。

普段は父の趣味に引きずり込まれる子供達に対しては厳しい態度を見せる母だったが、この四人の関係には温かい気持ちでもって接していたため、古いパソコンを持ち寄って、怪しげな儀式のように円陣を組む四人を見ても、楽しそうに見守っていてくれた。






コウヤ:五年生 11才

マヤ:コウヤの姉 中2 14才

ユウリ:コウヤの同級生 11才

ユウイ:ユウリの妹 8才

命名はかなり適当で、名前の漢字も考えていませんが、それぞれ、荒野、山、有利、優位、から発想しています。

※設定ミスの都合で、ユウイの年齢を一つ下げました※

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