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14:お休みの日曜日

「虚無」討伐に失敗した面々は、対策会議を始めるが……

14:お休みの日曜日



1 ムラマサ ****/**/**(土) 03:02:05.18

 新たに存在が発覚した隠しボス、通称「虚無」打倒対策会議スレです。

 四層ランナー募集!


2 ムラマサ ****/**/**(土) 03:04:25.71

 現状分かっている事リスト

 ・とりあえず近接攻撃はやめた方がいい。鉄ゴレでも即死

 ・全属性の射撃を試した結果、ダメージ0

 ・200階と198階で遭遇

 ・攻撃行動無し 前進するだけ 移動速度はかなり遅い


3 カベ ****/**/**(土) 03:25:55.25

 討伐会お疲れ様でした。色々やって推測していくしかないですね。

 飛び道具の無い前衛職だと出来る事が少ないのがもどかしいです。


4 ムラマサ ****/**/**(土) 03:28:01.09

 >>3

 道中も楽じゃないんだから、めっちゃ助かってますよ~~~

 次回もよろしくお願いします


5 山田マン ****/**/**(土) 04:11:42.48

 推測1、ダメージ表記を0に見せかけている?>実際は効いてる可能性

 推測2、接触後に死体が残らない事から、どこかにワープさせている?


6 キツネっち ****/**/**(土) 07:22:05.88

 >>5

 >死体が残らない

 よく見てるな 動画で確認したら確かに式神の残骸は床に無かった


7 マジメイジ ****/**/**(土) 07:51:58.15

 マジか 一回捨てキャラで試したい……って言っても四層キャラは捨てられんよな


8 人形姫 ****/**/**(土) 08:24:15.06

 キツネさんのブログで動画見て来ました

 鉄ゴレの残骸も無いですね



wikiの掲示板に対策会議スレが設置されていたが、書き込みは少なく、盛り上がっているとは言い難い状況だった。

金曜深夜の討伐失敗の後、すぐにスレッドが立てられてから以降、書き込みは20件ほどしか無い。

目撃者が八人しかいない上、挑むにしても難易度が高すぎ、他のプレイヤーの興味の範疇外……などと言う事もなく、本来なら全プレイヤーから注目されるべき大発見なのだが、いかんせん、プレイ人口自体が少なく、掲示板も過疎りすぎていた。

プレイ総人口数百人のゲームで、掲示板までチェックしている人間が一体どれだけいることやら。

この事件がそう広くもないマジホリ界に知れ渡るまでには、まだしばらくの時間を擁する事となる。

そして、MURAMASAMUNEの「虚無」初遭遇から3日が経過。日曜の朝を迎える。





コウヤ宅での土曜マジホリ会は、午前11時頃から昼食を挟んで夕方まで続き、一気に遊びすぎた事もあり、夜の定時プレイは見送られた。

順調に進み、探索パートは無事終了。ジャングルを抜け、魔王軍と戦いながら古代都市の跡地である遺跡を探検し、地下への入り口を発見。

集めたメダルを扉にはめ込み、地下水道に突入。広大な迷路のようなMAPを駆け抜け、アクト3ボスの待つ魔王軍の砦内部へと辿り着いた所で止まっている。

日曜はユウリとユウイが一家で出かける事になっていたので、夜の定時プレイのみとなる。

コウヤは日曜朝のヒーロー番組を見終え、暇を持て余す時間になると、もどかしさを抱えて悶々としてしまっていた。


「かーーーーっ! 抜け駆けプレイしたいっっ! でも我慢!」


ストーリーは進めないまでも、一人でプレイしてお宝掘りに励みたい気持ちはあるのだが、仲間を大切にするなどと格好つけて言った手前、自分からその禁を破る訳にもいかない。


「そんなにやりたいなら、やろうか? オフライン」


そんなコウヤを見かねて、マヤが提案する。姉弟の家庭内プレイなら、サーバーを介さずLAN通信で共闘する事が可能だ。


「うーん…… それも、そうだな……」


しばし悩むコウヤだったが、これなら別にズルでもなんでもないと納得する。


「でもまぁ、姉ちゃんとやっても仕方ないし、無理に付き合ってくれなくてもいいぜ」


これだものな、とマヤは苦笑する。

結局、コウヤは親友のユウリと一緒に遊ぶのが楽しいのであって、ユウイに好意を向けられるのが嬉しいのであって、姉は数合わせの身内でしかないのだ。

少し寂しい気はするが、姉と弟など、こういうものだろう。妙にベタベタするよりはいい。マヤ自身、必要以上の干渉を嫌う性格でもある。


「じゃ、私も、ハードの続きやろうか……

 MOD抜きも、ちゃんと味わっときたい」


「俺は…… そうだなぁ、RSのオフラインで色んなキャラ作って試してみようかな」


姉と弟は、それぞれ居間から自室へと戻り、それぞれのPCでマジホリを起動する。


と、入れ替わるようにして父が寝室から居間へと降りてくる。


「おそようございますね」


「ちょっと夜更かししちゃってな……」


仕事で疲れているのは分かっていたし、母はあえて起こさなかった。

どうせコウヤと顔を合わせれば、またゲームの事で色々と引っ張り回される事になるのだから、今くらいゆっくり休んでもらいたいという心遣いだった。

が、一方、父の方はと言えば、実のところ夜更かしの理由は仕事ではなかった。


謎の隠しボス発見の報告、八人のプレイヤーによる経緯書き込み、プレイ動画のUP、と、証拠は十分に揃っている。

これは紛れもなく、事実。

自分の預かり知らぬところで、RSに新たなボスが追加されていた事になる。

コウヤの父は既にマジホリを引退して久しかったのだが、この報告はどうしても気になる。大して開発に貢献した訳でもないが、元プレイヤーの一人として、やはりこれは大いに気になってしまう大発見なのだ。

メールBOXの履歴を確認して、開発メンバー限定のメーリングリストをチェックしてみたが、やはり一件も新着は無い。

PCとOSが新しくなってメールソフトも変わったため、このPCでは関連メールが一件も確認できない。

MOD開発の中核メンバーのSNSまで確認して回ったが、窺い知る事が出来る範囲では何の動きも無い。

そうこうしている内に夜も更け、すっかり就寝が遅れ、この時間まで寝続ける事になってしまったのだった。


(どうするかな…… 直接聞けば、答えは出るんだろうけど)


一応は、開発チームの一員だ。作った本人に聞けば、回答は得られるだろう。

問題は誰に聞けばいいか、だが、中核メンバーの誰かがこっそり入れた隠し要素か、あるいは告知無しにバージョンアップをしたか、どちらにしても実行可能な人間の数は絞られる。


(カンさんか、バラさんか……)


管理人のカンさん、バランス調整のバラさん、と、極めて安直なハンドルネーム。

彼らの名前も顔も知らないし、ゲーム内でのプレイヤーキャラ名すらも互いに明かしていない。

マジホリ好きがネット上に集まっただけの関係でしかなく、互いに今どうしているかも知らない。

知っているのは、メールアドレスと、一部メンバーの性癖くらいのものだ。

ロード♀の巨乳化を渋った管理人の頭の硬さにバラさんと一緒に憤慨した事はよく覚えている。


だが……


(やっぱり……)


お互いもう忙しく日々を過ごす社会人だ。自分もこうして眠い目をこすっているではないか。今更こんな事で連絡をしても迷惑がられるだけではないのか。

そもそも、仮に実行犯に直接話を聞けたとして、こっそり入れた隠しボスの正体を、大して仲が良かったワケでもない自分に教えてくれるはずもない。

人知れず仕込んだという事は、あの「虚無」という大いなる謎を、プレイヤーに自力で解き明かしてもらいたいと思っている、という事ではないか。

出題者に直接回答を聞きに行くなどという場外からの禁じ手を使ったズルは、盛り上がっているプレイヤー諸氏にとっても迷惑なネタバレにしかならないだろう。

そう思い、起動したメールソフトを何もしないまま閉じる。


コウヤにも黙っておこう。息子も娘も、今はパーティープレイが楽しい時期のはずだ。

こんな話をすれば、隠しボスに夢中になって、仲良く楽しくプレイできたはずのゲームを台無しにしてしまうかもしれない。

インフェルノに挑む頃には自然に彼らの耳に入るだろうし、今はそっと、友達とのゲームプレイを見守るだけにしておこう。

基本的な事はもう大体教えた。後は自力で頑張るのが一番だ。


「はぁ~ 腹減った! メシにしようか」


「パン焼くわね。今日もスッピン?」







討伐隊八名全員に名前を付けました。

マサムネ(侍)、カベ(重装兵)、キツネっち(忍者)、マジメイジ(魔術師)、山田マン(射手)、人形姫(傀儡師)、ブッチー(戦士)、一閃(聖騎士)、で、それぞれ掲示板上のハンドルネームです。

ゲーム内の名前はまだ考えていません。

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