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第35話 あるいは、これらはプロローグ
華やかな夜会の会場のバルコニーで妖艶な美女が一人で涼んでいた。
今日の夜会の噂はメアリーのことで持ちきりだ。名家の子女が実は殺人狂で、一般人に加え殿下の殺害まで目論んでいたというのが大筋だが、女性はメアリーがそうなった理由が噂と少々異なることを知っていた。
「いずれにしても、やっぱりあの子は自滅したのね。せっかく聖女が呼べるように色々舞台を整えてあげたのに……やっぱり、おバカな子はだめね。本当に呼べたかどうかも確認できないままじゃない」
グラスに口をつけ、果実酒で喉を潤した女性は小さく笑みを浮かべた。
「もっとも、メアリーさんくらいじゃ呼べたところでボロが出ることは確実だったけど――さて、次はいったいどうしましょうか」
くつくつと笑う女性は、空を見上げて呟いた。
「ぜひとも私の元へ来てくださいな、聖女様」
これにて第一章終了です。
第二章は定期的に投稿させていただく予定です。
よろしくお願い申し上げます。




