第肆話
超お久しぶりです。今後も暫くこんな感じですがよろしくお願いしますm(_ _)m
フレートも行ってしまい、本格的にやる事が無くなったなぁ、そう思い簡易ベッドの側にある椅子に座り、彼の様子を見る。さっきよりはだいぶマシにになった気はする。
それにしても疑問が残るなぁ。なんで倒れる様な状態なんに来たんや?それに、戦闘は想定外って…あんな風に来たら戦闘は避けられんやろ…
考えても答えを知っているのは彼だけなのだから意味は無いだろう。
そんな事を考えていると
「…んん…?」
狐月君が目を覚ましたようだ。数回瞬きをして周りを見渡している彼に声を掛ける。
「おはようさん。気分どう?」
「大丈夫、です。…ゴホッゴホ」
これ程までに"大丈夫"と言う言葉が信用ならない事があるだろうか。苦しそうに咳をする彼を見ながらそう思う。
「とりあえず水飲む?」
そう言って水の入ったコップを渡すと、こくりと頷き受け取った。彼は水を飲んで一息つくと、有難うございますと礼を言う。
律儀やなぁ。
「ええんよ。色々聞きたい事もあるけど、今はゆっくり休んどき。」
なるべく優しい声色でそう言うが
「いえ、大丈夫です。聞きたい事、あるんですよね?」
と断られてしまった。
「えぇ、でも辛そうやで?」
「…眠れない、ので。」
あぁ、成程。警戒心は高い方なんか。
まぁ同盟関係とはいえよう知らん奴の前で寝られるかと言われたら無理やろ。
それなら遠慮なく聞こうか。
「じゃあ聞かせて貰おかな。まず、なんで態々テレポートなんかして来たん?しかもあんな所に。」
まず一番に疑問に思った事を聞く。彼の言い方は不自然だった様に思えたから、これだけは本人に聞いておきたかった。
「それは…」
彼は少し言い淀んでから
「ここ…部屋の配置、変わりました?」
と聞き返された。そう言えば半年位前にベルちゃんが来た時にどうせならと変えていた。とはいえ変えたのは何故か一階にあった総統室と三階の執務室を入れ替えただけだ。
いまだに間違う奴らもおるけど…。
「変わったよ、半年前位に。もしかしてやけど、来たことあるのってそれより前?」
「はい。」
「成程なぁ。」
そういう事か。つまりは改装前の位置に飛んでしまい、何も知らないアルトが侵入者と勘違いして交戦する事になってしまったと。
いや、情報伝わって無さすぎやろ。半年前やで?抜けとるなぁとは思ってたけどこれはやばいやろ知比乃ちゃん。
「…災難やったなぁ。それにしても、そんな状態で来たらあかんやろ?体調悪いなら言わな。知比乃ちゃんもそんな状態やったら行けとは言わんやろうし。」
心配してそう言うと、予想外の返答が返ってきた。
「いえ、体調はむしろ、ゲホッゲホッ…まだ良い方、でしたよ…。元々、体は弱い方で、アビリティ、使い過ぎると、よく崩すんです。ゲホッ、今回は、運が悪かった、だけで…」
「そ、そか、まぁゆっくり休みや。」
ふと、窓の外を見ると、さっきまでは気にも止めないくらいの雨だったのが、いつの間にか土砂降りになっていた。
なんか不穏やなぁ。
雨にはあまり良い思い出が無く、無意識に目を逸らすと時計が目に入った。時刻は12時少し前。もうこんな時間か。
「狐月君、食欲ある?」
「…あまり」
「うーん、でも薬飲まなあかんからなぁ。食べやすい物持って来るわ。無理せんでもええから。」
「…すみません。」
「ええんよ。」
さて、何を用意しようか。そう考えつつ立ち上がったところでコンコンと扉をノックする音が聞こえる。
おや?誰やろ?
扉まで近付き
「誰や?」
と聞くと
「私だよ。爛。入って良い?お粥作って来たんだけど。」
と返ってきた。
その声の主は、我が軍の外交官、オルトス・メルシーの護衛である君影爛だった。彼女は自分の部隊は持たないが、十代半ばで幹部を務めている。
そろそろ帰って来る頃かと思っていたが、まさか料理まで作って来てくれるとは。
きっとグレゲルトへの報告の時にでも聞いたんやな。
「ええよ〜入っといで。」
扉を開けてあげると爛ちゃんは
「失礼します。」
と言って入って来た。彼女は鍋と三人分の食器を乗せたお盆を持っていた。
何時もの白い軍服には汚れ一つな無い事から今回の任務では何事も無かったのだろう。
良かった。
なんて思っていると、爛ちゃんはベッドの方に近付き狐月君に話し掛ける。
「初めまして。グレゲルトから聞いてるかもしれないけど、君影爛です。宜しくね。」
「…紅沢狐月、です。ゲホッゲホッ」
「大丈夫?お粥作ったけど食べれそう?」
「…はい、大丈夫、です。」
狐月君はゆっくりと体を起こした。それを支えて、お粥を食べさせる。
薬も飲んでくれて良かった。
と安心したところで狐月君は眠ってしまった。口では眠れないと言っていたが相当な熱だ。無理もないだろう。
これで少しでも良くなればええんやけど。
「私達も食べよっか。」
心配そうに狐月さんを見ているジルに声を掛ける。ハッとした彼にさらに
「ジルもまだなんでしょ?私もだからさ。」
と言うと
「せやね。ごめんな爛ちゃん、ほんまは僕がやれば良かったんやろうけど。」
と返される。
別に気にしないのに。前から思ってたけど、やっぱり変な奴。それに、
「年下に甘いんだよなぁ。」
「誰が?」
「あっやばっ……いや、一人しかいないでしょ。」
ってかまだ自覚無いんだ。そのがびっくりなんだけど。
「別にそんなつもり無いんやけどねぇ。」
そう言い困った様にへにゃりと笑う彼の目には光が無い。未だに”あの事件”を引きずっているんだろう。当事者以外には幹部でさえ知らされていない1年前の事件。それ以来、彼は…いや、彼等は少し変わってしまった。おそらく、事件を知らない幹部も勘づいてはいるだろう。それでも何も聞かないのは暗黙の了解となっている。
まぁ仕方ないのかな?あんな事になったら。
とは言え、流石にそろそろ前を向いて欲しい。
大怪我はしたけど、誰も”死には”しなかったんだから。
そんな思いを悟られないように溜息を吐いた。それからは、何事も無かった様に世間話をしながら昼食を終えた。