序章 第弐話 邂逅
投稿遅れて申し訳ありません!お久しぶりです、YuTです。注意事項はプロローグをご参照ください。
居間にて、ちゃぶ台を囲う様に襲撃者も含めて座ってところで知比乃が口を開く。
「さて、やっていきましょうか。自己紹介。誰からやる?」
「さっき戦ってたし、佚晞からでいいんじゃね?」
と、麗魔明に振られ
「分かった、んじゃあ。俺は仙斎 佚晞。荒事担当だ。んで武器とアビリティはさっきの通りだぜ。よろしくな。」
と、俺は自己紹介をした。
それを皮切りに妖魔楽庵の面々は次々と自己紹介をしていく。
「私は星守麗魔明。しがない魔術師だ。魔術やポーションの研究をしてるぜ!よろしく。」
麗魔明はそう言いながらいつの間にか手にしていた試験管をくるくると回す。
続いて凪が
「俺は九重凪。機械系担当でアビリティは"波長操作"よろしくね。」
と柔らかく笑って言う。
「私は紅沢狐月といいます。一応言っておきますが、戦闘は担当外ですんで。アビリティは"多重能力"。まあよろしくお願いしますね。」
狐月がそう自己紹介した後、
「私が、あんたが狙ってた此処の店主兼『CRRA』最高責任者の霄宮知比乃よ。あんたも今日から此処で働いてもらうんだからしっかり自己紹介してよ?」
最後に自己紹介をした知比乃がふると襲撃者はOKと答えて次のように続けた。
「名前はリア!リア・プリミョート!あとはぁアビリティかなぁ?えぇっと〜"凶弾の銃口自分で描いた設計図の兵器を創り出していつでも使えるの♪よろしくね!♪」
襲撃者_もといリアは笑顔で自己紹介をすませる。なにを考えているかは分からないが、戦闘中に見えた狂気的な笑顔ではない事は分かる。
でも、なんで此奴はあんなに嬉しそうなんだ?
「じゃあ案内役も佚晞って事で、よろしく!」
「…はあ⁉︎」
いつの間にか決まっていた事に驚き、声を上げる。
「はあって言われてもねぇ。良いじゃない別に案内くらい。」
「いや、本人の意志はっ⁉︎」
と言うと、知比乃は少し悩んでから
「え〜。リア、良い?」
と見当違いな方に話しを振り、リアはそれに対して、良いよ〜♪と答えた。これはもう諦めるしかないだろう。何時もの事だ。俺が諦めたのを悟ったのか、
「じゃ、私と狐月は別の用事があるから!よろしくね。」
と言い、知比乃は狐月と共に部屋を出て行ってしまった。
さて、切り替えて案内してやるかと思い、リアのほうへと振り向くと、左腕に紅色が見えた。そういえば怪我をさせてしまっていたのだ。
「まずは怪我の手当てからだな。」
そう言いながら、救急箱を取りに行く。
すると
「え?そんなの要らないよ?このくらいほっとけば治るし。」
そう言ってリアが引き止めた。
確かにあまり深くは無いと思うが、だからといって手当てしないというのはどうかと思う。第一痛いだろうし。
「いやいや、痛いだろう?それに細菌とか入ったらまずいだろうし。」
それを聞いた彼女は首を傾げた。
「?…痛い?わかんないけど、動かなくなったら嫌だよね。うん!手当てして!♪」
パッと表情を変えて腕を差し出してくる。
今の発言からすると、まさか無痛症か…?
聞いて良いものかも分からないから、とりあえず腕の手当てをした。
手当ても終わる頃には、しとしとと雨が降り始めていた。
そう言えば、今日は雷雨になるってニュースでやってたな。とぼんやり考えていると、
「ねぇ、何処から案内してくれるの?」
リアに尋ねられて答える。
「あぁ、わりぃ。まず1階からな。ここが居間で、こっちがキッチン、その向こうに応接間だ。」
キッチンに繋がる戸とその向こうにある戸を開ける。
この後、倉庫や風呂場、トイレなどの場所を案内し、二階の個人部屋を案内しようとした時、
リアが不意にそういえば、と話しかけてきた。
「どうした?」
「あのね、リアいっこ気になることがあってね。」
「なんだ?」
「凪っていつもイヤーヘッドホン付けてるの?」
「あー、あれか。」
確かに凪はいつもイヤーヘッドホンを付けている。その理由はリア以外の全員が知っているし、本人が公言している。曰く、
身内には知られていない方が困る、
だそうだ。なので、言っても問題ないだろう。
「あれな、補聴器の逆のことやってんだよ。」
と言うとリアは首を傾げて
「補聴器の逆…って事は聞こえにくくしてるの?」
と不思議そうに言う。
「おう、あいつ耳が良すぎてあれ無いとキツイんだってよ。だからあんま大声出してやらないでくれ。」
「OK!気を付ける!♪」
一方その頃、軍部にて、金色の髪に同色の瞳を持ち、黒と黄色のジャージを着ているガタイの良い男が歩いていた。男_アルト・オクサネンは第一前戦部隊隊長である。
彼は第一訓練場に向かっていた。その時、ちらりと青色のマフラーの様なものが視界に映る。
(あんなん付けてる奴おったっけ…?)
アルトはそれを追いかける。
此処は軍部である。だから、怪しい物を放っておく訳にはいかないのだ。
「お前何処の奴や!何が目的や‼︎」
その大きな声に侵入者は振り返る。
紅い着物に、青色のマフラー、黒く男性にしては長い髪。
そのどれもがアルトが記憶している中の誰とも一致しない。それを再確認したアルトは、即座に着けていた通信機の緊急時用ボタンを押して叫んだ。
「B棟一階!侵入者を発見した‼︎‼︎来れる幹部は来てくれ‼︎」
「えっ、ちょっと待っ…⁉︎」
「誰が待つか‼︎‼︎」
侵入者が口を挟もうとしたところを殴り掛かる。侵入者はそれを間一髪のところで後ろに跳んで避け、再び困った様子で口を開いた。
「話くらい聞いてくれませんかね。」
「侵入者の話なん聞くだけ無駄やわ。」
アルトもあくまで冷静に返し、睨み合いの状態が続く…と思われたその時、
カキンッという金属のぶつかり合う音が響く。
「チッ防がれたか!」
「シェルヴィオ‼︎」
アルトがいる方向とは逆の道から現れた、シェルヴィオと呼ばれた若草色の瞳の細身で中性的な男は一旦距離を取りアルトに近づく。
(…にしても珍しい武器やなぁ、鎖鎌か。)
シェルビオの蛇腹剣による攻撃を防いぐため、侵入者が取り出したのは鎖鎌だった。
「同時に行くで!」
「OK!」
シェルヴィオの呼び掛けに短く答えたアルトの手脚はいつの間にか、まるで狼の様な毛と鋭い爪を持っていた。その脚で、突風の如き勢いで侵入者の懐に入り、その鋭い爪を突き立てようとする。しかし、瞬時に現れた障壁により防がれてしまう。
(アビリティか…?)
だが、それだけでは終わらない。その後ろから現れたシェルヴィオが蛇腹剣を振りかざす。
「出来れば使いたく無いんですけどねぇ。」瞬間、二人の視界は眩い光に包まれる。
「天井裏に一人、奥の物陰に二人、ですか。もう二人程向かって来ている様ですが…。はぁ、どないしよ…。」
侵入者は二人から少し離れた場所で、溜息を吐く。
「バレたんならしゃあないなぁ。ッヒヒ。」
突然通気口の蓋が開かれ、水色の迷彩柄のパーカーを着た男が降ってくる。手にはナイフが握られており、着地と同時に駆け出し振るうが、それはあっさりといなされてしまう。
「まぁ読まれるわなぁ。でも…。」
「ゼン!」
「ナイスや、ジルせんせー!」
通路の奥からの声に反応してゼンと呼ばれた男は地面を蹴って横に跳ぶ。それとほぼ同時に一発の銃弾が彼の髪を掠める。侵入者は咄嗟にそれを避けようと右に体を傾ける。結果的に銃弾は避けられたが、体制を大きく崩し転倒してしまった。そこをゼンが取り押さえた。
「ゔっ…。」
侵入者は苦しそうに声を上げ、抵抗の意志を見せなかった。
「抵抗は出来んようやなぁ。話してもらうで、どっから来た?何が目的や?」
パンッ
突如響いた手を叩く音。それに驚き、場の全員がそちらへ振り向いた。そこには、漆黒の軍服をきっちりと着こなした銀髪の男_グレゲルトとその半歩後ろで剣を構えるイリアの姿があった。
「そこまでだ。ゼン、彼を放してやってくれ。」
「なんでや、グレゲルト。」
グレゲルトの言葉に我に帰ったゼンは疑問を挟む。すると、答えはすぐに返って来た。
「彼は身内だ。ついさっき知比乃から連絡があってな。彼に私に対しての託けを頼んだのだが、連絡を忘れていたそうだ。」
半ば呆れた様に言うグレゲルト、それにうなづき剣を納めるイリアの姿を見て、他の者も武器を納めるしかなかった。ゼンも彼のことを放して、悪かったなぁと言いながら手を差し伸べる。
「こんな所で立ち話というのもなんだろう。近くの会議室にでも入ろうじゃないか。」
と言い、近くの扉に手を掛ける。それに続いて全員が中に入った。
頭痛がする。先程の戦闘でアビリティを使い過ぎたのが原因だろう。これが終わったらすぐに帰って寝よう。そして知比乃には一発お見舞いしよう。ところで、殆どの方が軍服を着ていないが様だがこれで良いのだろうか。そんな事を考えていると、全員が席に着いたようで、グレゲルトさんが口を開く。
「さて、狐月よすまないが、まずは自己紹介と、知比乃からの託けを頼む。何せうちの者は警戒心が高いからな。」
私はそれに、分かりましたと答えて立ち上がる。軽く頭を下げて本日二度目となる自己紹介をした。
「…で、その託けと言うのが、実は今朝、妖魔楽庵に襲撃が有りまして…」
「ホンマか⁉︎」
「協力が必要なのか?」
驚いた様子で金色の瞳の人とグレゲルトさんが口を挟むので、最後まで聞いて下さい、とそれを制してから
「それはどうにかなりましたから。託けと言うのは、此方も同じく襲撃される可能性が高いので気をつけて下さい、と言う事です。」
と続ける。
「成る程、警告か。今回、君が来たのもその一環と言う訳か。」
納得がいった様にグレゲルトさんが言うが、全くの予定外だったので否定しておく。
「いいえ、全く。私が来たのは只の顔合わせが目的ですし、戦闘なんて予想外でしたから。止めてくれたんは助かりました。」
「うむ、そうだったのか。先の件についてはすまなかったな。そして警告有難う。さて。」
と言い、幹部の方々を見て
「此方も自己紹介と行こうではないか。と言っても私とイリアは必要ないな。」
と言う。それを聞いて、元気良くはい!と手を挙げたのは金色の瞳の人だった。
「俺、アルト・オクサネン‼︎第一前戦部隊の隊長や‼︎アビリティは"獣化・狼、さっきの通り自分の体を狼に変えれるで!宜しく‼︎」
とても頭に響く声で、あまり長く聞いていたくない声だ。特に今は。思わず顔をしかめると、隣に座っていたボトルグリーンの髪と同色の瞳を持つ_先程ジルせんせーと呼ばれていた方が、
「彼奴いつもああやから、ごめんな?」
と眉を下げて小声で言ってくれた。
その次にじゃあ次俺な!と立ち上がったのはシェルビオと呼ばれていた若草色の瞳の中性的な方。
「シェルヴィオ・ランディや。第二前戦部隊隊長やってるで。アビリティは"riverbero"言うて、武器に当たった攻撃を跳ね返せるで。せやから接近戦は得意や!宜しくな。じゃ、次はゼンな。」
と、水色の迷彩柄のパーカーを着た青年を指す。先程は見えなかったが、フードを取っているため、胡桃色の髪とホライズンブルーの瞳が見て取れる。
「えっ俺?えーっと、暗殺部隊隊長兼、兵器開発副総長やっとるゼンでーす。奇襲、暗殺から前戦まで幅広くやってるで。アビリティは"認識操作"宜しくな。」
いきなり振られて驚いたのか、少しどもりながらも言い切る。それに続いてカメリア色の瞳背の低い少女が立ち上がり、
「ゼンがやったなら次は僕かな。名前はルミア・レーテス。アビリティは無いけど、魔術は得意な方かな。諜報本部副総長兼、第一後衛部隊隊長兼、魔導研究本部長兼、通信部長を務めてるよ。まぁ多いから全部は覚えて貰わなくても大丈夫かな。宜しくね。諜報部繋がりでジル先生行ってみよう。」
と言うとお、おう?と言いながら、隣の方が立ち上がる。
「どうも〜ジル・ベルジュでーす。諜報本部総長兼、第二後衛部隊隊長やってるでぇ。アビリティは"oxygene"ゼンやルミアには何故かジル先生って呼ばれとるで。よろしゅうな。」
次、クライドさんな、と言って
コーヒー色の髪に亜麻色の瞳を持つ、右目にモノクルを着けた男性を指す。
彼は、分かりましたと言って立ち上がり、
「クライド・コヴィントンと言います。教育総長、並びに海軍司令官長を務めています。アビリティは"解析"と言って、調査に向いていますかね。宜しくお願います。」
と、人の良さそうな笑みを浮かべる。
彼が、じゃあ次はと見渡すのに被せて、
次行きますね、と言って立ち上がったのは、
プラチナブロンドの髪とローズレッドの瞳を持つ、頭にゴーグルを着けた女性だった。
「ベルティア・スティファンっす。第一前戦部隊副隊長やってるっすよ。アビリティは…まぁ良いっすよね。使う事なんてまず無いんで。宜しくっす。」
淡々とした口調でそう言い、軽く頭を下げて座る。ここにいる人間は彼女で最後の様だ。
「ここにいる者以外にも、現在出掛けているオルトスや爛、医務室にいるフレートの三名も幹部だ。」
グレゲルトさんが補足を入れてくれたので
「そうですか。有難う御座います。」
と、返す。
そろそろ辛くなってきたな…
「なぁ、気のせいかもしれんけど狐月君、顔色悪ない?」
と、ジルさんがいきなり話し掛けて来たので思わず驚いた。
「そんな事無いですよ。用事も済んだんで、帰らせていただきますね。」
そう言って立ち上がったものの、グラリと重心が傾く。頭痛や吐き気、倦怠感が一気に襲って来た。私はそれに耐えきれず、意識を手放した。