邪悪な者
夜、親父が帰ってきた。
仏頂面をして帰ってきた。
余り収入の無い親父は滅多に家に帰ってくることがない。
母とはとっくの昔に離婚していて俺を引き取ったのが親父。
あとの兄弟は母型の方に行っている。
そんな親父がここに来る時殆どが、金目当て。
稼ぎの少ない癖に金使いの荒い親父はピンチになると家に帰ってくる。
『アマネ、金かせ』
また負けたのか…………
『幾ら?』
『10万』
うわっ……今月キツいのに……。。。
暴力行為の多い親父にはすんなり渡して出ていってもらっている。
しかし、親父は
『アマネ……』
『今、持ってくるから待てよ』
『……外でないか』
『………………』
俺は余りにも可笑しく不自然な親父。しかし、俺は親父の言う通りに10万を渡し親父とに外に出た。
外に出てからは沈黙が続く。
『……』
路地裏を歩く親父に続き歩く事数分。
『連れてきた、これで俺は喰われないんだよな!』
親父は何かと知らない人の前で焦っていた。
そこには1人の男が脚を組んで待っていた。
『コレがお前の代わりか?』
その者は怖い位のオーラを放ち
黒き翼が幾つも重なり背中に生えているかの様。まるで悪魔、堕天使の様だ。
そして、そいつは俺に目を向けた。
『お前が神崎~遍?』
俺は恐れ多くもそいつの言葉にコクリと頷く。
『どうも、君は親父さんの代わりに僕に喰われる。』
『贄……』
『ん?』
『自分で殺す勇気も無かったってことか……』
『……』
『良いよ。どうせ、俺は殺される運命だから。』
『……』
俺は死ぬ覚悟をした。これでやっと人生が終わる。親父ともぅ会わなくてすむ。
少しほっとした。
けど……少し寂しい、悔しい。
あ〜やって置けば良かった。何でこんな事に……等と色々なことご走馬灯の様に駆け巡った。
そして、その瞬間俺の中に何かが流れた。誰かもわからない記憶。そして、知識と技術。壮絶なる情報。全てが中に入ってくる。ドンドンッドンドンと。
【キモチ惡い……これは何なんだ……】
気づくとそこは薄暗くて目の前にはさっきの怖いオーラを放っていた男が立っていた。
《お前は喰われた。束縛……囚われの身だ。》
男はまるで悪魔、堕天使の様。
『死んだんじゃ……ないのか……?』
《俺は制欲するお前をグツグツ……煮えくくる力を……欲す》
『生かしてくれる……のか。』
《その力を……俺に寄越せ》
『……良いよ。』
その時、俺は感じた。寒く冷たく悲しい。この人が王に生まれた為の悲しい性を……。
『その代わり俺にその哀しみを……』
《っ!》
『アンタの悲しみ慈しみ類似全てを預けてくれよ。お前を助けてあげたい。』
《お前は……何を考えて……いる。》
『俺は……何を考えているのかもわからない。ただ、ずっと貴方が言った通り抑えてたからその恩。したくて……ただそれだけ。』
《……任せる》
そう言うとアイツの悲しみ怒り全ての悲哀たるものが流された。
『ベルゼブブ……』
《ルシファー……サタンに次ぐ惡を統べるもの。》
ベルゼブブ……。それが彼の名前だ。
彼はオレと違い高位の王。
そんな彼が何故俺を選んだのか……気まぐれなのか……そこは分からない。
『……』
だけど、彼のお陰で俺は……
『父さん…………』
『アマネ……っ!まてっ!早まるな……!』
やっと、長年の呪縛から開放される。
そして、歯車は廻りだす。
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『ふぅん……』
そんな中アマネに目を付けるものがひとり。
アマネは知らない。近くに沢山の敵が潜んでいることを……