我が国は、貴国の脅迫に決して屈しない‐5
5話目です。
これまで出てきた国の情報について等、読んでいるなかで気になる点は、感想にて質問していただければ、可能な限りお答えしようと思います。
作中で。
【日本‐内閣府⁻特別対策室】
「お手元の資料をご覧ください。以下が自衛隊の調査結果です。」
ベルゲン王国から、使者が戻った二日後。
その言葉と同時に、日本の本当の意味でのファーストコンタクトは始まった。
「まず、今回調査完了した国内の地理的な情報から説明させていただきます。
我が国は、この世界の海上へと転移いたしました。
どうやら国の地盤ごと転移したようで、幸いにも国内および近海で採掘可能な資源の内容には変化が見られません。
そして、気候的にも大きな変動は今のところ見られませんが、気流や海流については現在調査を続けております。」
国内に関しては、一応大きな変化は見られないと言うことである。
「次に、新たな外国についての報告に移ります。現在、活動領域が隣接している国としては、北東に位置するフェールデン帝国、及び南東のダイアス=ロングランド諸島王国の存在を確認しました。まずはフェールデンについてですが、非常に肥沃な大地を国土として持っている大陸国家です。その人口は、空中偵察で得られた情報からの概算で最低でも四億人。」
「四億か、多いな。」
防衛庁の人間からの報告に、驚きの声をあげるのは現政権のトップ、総理大臣である。
「どうやら、周辺国の中でも有数の軍事力を保持しており、この世界でも有数の覇権国家と言うのが、周辺国からの評価です。」
「いわゆる列強と言うやつかな。」
「次にダイアス=ロングランド諸島王国。此方は千以上の島々から成る海洋国家です。超高高度よりの偵察の際に、多数の帆船を確認しております。人口は、1億程度です。今回派遣した者からの情報によりますと、この国は植民地を幾つか保有しており、そちらも含めた人口については当のダイアス=ロングランド諸島王国も把握していないようです。」
拡張主義の海洋国家と、活動領域が隣接している………不味い。これは利害がぶつかる可能性が高い。
「続きまして、ベルゲン王国については説明を致します。この国については、この度の使者が多くの情報を持ち帰っております。人口六千万、植民地は持っておりません。この国は、前の二ヶ国と、後に説明させていただくボルスト神聖帝国の、計三ヶ国と国境を接しており、地理的及び歴史的要因から度々三国からの侵略を受けています。」
「ふむ、その要因とやらを聴かせてくれ。」
「はい。まずこの国は軍事的に大きな意味を持っています。というのも、南部には天然の良港に恵まれ、東西も平野が続いております。また、フェールデンとボルストが国境が接する地域は険しい山岳地帯であり、このベルゲンという国を支配下に置けば、他国に対して大きなアドバンテージを得られます。」
「今のが地理的要因なら、歴史的要因とやらを教えてくれ。」
「このベルゲンはという国、元々は三国からの逃亡奴隷等の被差別階級の人間がこの土地に集まってできております。そういった成り立ちから、現在も国是として様々な亡命者を受け入れ続けており、三国の印象が国民感情として余り良くありません。こう言った点から、侵攻の大義名分についても事欠かないのです。」
「良く国が無くならなかったな。国力差を考えると、軍事力の差もかなり大きい様に思えるのだが。」
「………この国の凄まじい点は、これまでの侵攻を全て結果的にはね除けている所です。この国は、国民皆兵制度を採用しており。国民一人一人に武器の配給がされています。元々が被差別階級の人間の集まりの上、今でもそういった者達が逃げ込み続けて居るため、三国への敵愾心がかなり高いのです。」
………侵攻時に死に物狂いで抵抗する上に、占領しても常にテロの脅威が付きまとう訳か。
そして、支配下に置くには完全に現地の人間が排除されないといけないと。
「ベルゲン王国については分かった。では、次の国について教えてくれ。」
「分かりました………最後のボルスト神聖帝国についてですが、此方の国の情報は余り多くありません。国土面積、人口共に最大であり、国教としてボルスト教を信仰しているようです。このボルスト教についてですが、異教徒に対してかなり厳しい立場をとっていると言う事以外これと言った情報は得られませんでした。使者の受け入れについても拒否され、
今のところ外交チャンネルも………その、絶望的かと。」
………最後にでかくて、何だか良く分からない宗教国家か。
「分かった。今回の報告は以上かね。」
「はい。今回はここまでです。」
「では、情報の収集については引き続き頼む。」
………手に入れた情報は、十全とは言えない。
しかし、ここで何もしないという選択肢は取れない。
国内の情勢を含め、ここでの方針が全てを決めると言っても過言ではないだろう。
「はぁ。」
深い溜め息が出る。
日本国総理大臣、西田宗則は己の肩に乗っている物の大きさを、改めて実感した。