鉄と血と叡知によってのみ、我々は平穏を赦される‐13
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『停戦会議から一転、日・フェ・ベ三国安全保障条約締結』
先日来日した、フェールデン帝国使節団とベルゲン王国使節団が昨日帰国した。
両国使節団帰国後に行われた政府記者会見で西田宗則総理大臣から、フェールデン帝国、ベルゲン王国間でそれぞれ安全保障条約が締結されたとの発表があった。短期間で二か国と安全保障条約が締結されるのは異例の事。(詳細は6面)
今回の両国使節団の来日目的は、日本の仲介によるフェールデン帝国とベルゲン王国間での停戦合意であったが、会議期間中にフェールデン帝国から出された条約締結提案により急遽三国間での同盟関係が結ばれた形となる。
転移以前から同国間では度々紛争が行われており、西田内閣は両国の安定に力を入れることで、この世界の国際社会に存在感をアピールし、同時に日本が直面している様々な問題解決の糸口を掴もうとしていた。
関係者によると今回締結された条約は、軍事方面にまで言及されており国内では条約締結に対して様々な声が上がっている。
(6面国際面の記事)
『安全保障条約締結、岐路に立つ日本』
昨日行われた緊急記者会見で日本政府は、日フェ安全保障条約、日ベ安全保障条約の二つの条約を締結したと発表を行った。
また、同時にフェールデン帝国とベルゲン王国間でも講和条約が結ばれたとされる。
これにより、日・フェ間及びフェ・ベ間での停戦合意は自動的に講和に格上げされた形となる。
今回日本政府が締結した条約は以下の通り。
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日フェ安全保障条約
第一条
・本条約は防衛的性格の物であることを両国は宣明する。
第二条
・両国はそれぞれの平和と安全のために防衛において相互に協力する事を宣明する。
第三条
・両国は日本並びにフェールデン地域の安全が脅かされた場合には、双方速やかに協議を行う。
第四条
・上記三条内の地域の安全を脅かす事態が発生した際、本条約を根拠として対処を行う場合は、両者の合意を得た場合のみ効力を持つ。
第五条
・両国は本条約に関し、それぞれの慣例を含む国内法並びに諸規定を1年以内に確認し、効力関係と発効条件を明確にする。
第六条
・本条約は双方の協議によって合意が得られた場合のみ内容の変更を認める。
第七条
・本条約は締結から5年後からは、半年以上前に破棄を宣言することで、合意を得ずに条約の破棄が可能なものとする。
―――――――――――――――――――――――――――――
日ベ安全保障条約
第一条
・本条約は防衛的性格の物であることを両国は宣明する。
第二条
・両国は、互いの平和と安全と発展の為に諸分野での協力を行う。
第三条
・両国は日本並びにベルゲン地域の平和と安全と発展を妨げる事態が発生した場合、速やかに協議を行い協力して対処を行う。
第四条
・両国はそのどちらかが第三者からの宣戦布告を受け、戦争状態に突入した場合、自動的に参戦する義務を負う。
第四条
・在ベ自衛隊の地位について定める。細目は途別の協定により定められる。
第五条
・両国は他の協定並びに相互の国内法の効力関係を明確にし、随時協議を行い条約の発効を円滑に行う環境を整備する義務を負う。
第六条
・本条約の発行時には、発効までの経緯の説明責任を負う。
第七条
・本条約の有効期間は20年とし、期間経過後は一年前に予告することで一方的な破棄を可能とする。有効期間以降は自動延長とし、破棄予告がない限り本条約は存続する。
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政府関係者によると両条約締結に際しては同時に経済分野等においても両国との協定の協議が行われ、既に合意に至ったものがあるとのこと。
今回の一連の件に関して、日本国内への事前の情報公開は一切されておらず、与野党から西田内閣への批判の声が早くも上がっている。(石垣忠雄)
(以上、日本国内大手紙の記事より)
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「えー、この間発表された失業率ですが、既に30%に達してしまっていると言う情報もあります。そんな中で、突如発表された今回の条約。小山田さん、これ、どうなんでしょう?」
「そうですねぇ。転移によって今の日本国内の状況は悪くなるばかり。そんな中で国外のいざこざに首を突っ込む余裕があるのか?と、いう所でしょうが、あの転移で日本は外部との接触を完全に絶たれてしまっている訳です。また転移が起きて、元の世界に戻ると言う可能性も0ではないですが、こちらの世界で生きていく可能性が高い現状、どうしても貿易なんかの相手を見つけないと日本はどんどん苦しくなっていくでしょう。そんな中で、こちら側の国と条約と言う効力を持った取り決めが成されたのは、一歩前進したと言っても良いのかもしれません。」
「ありがとうございます。さて、今回の条約締結に対して、街の声を聞いてみましょう。」
以下、街頭インタビュー
『え?フェールデンとベルゲンですか?うーん、良く分かんないけど、フェールデンってこの間まで戦争してたでしょう?こんなに急に同盟とか決めてしまっても大丈夫なのかなって不安はやっぱり感じますね。どんな国かも良く解らないし、少し怖い気もしますね。え?ベルゲンですか?あの何だか可愛い王様の国ですよね?うーん、どうだろう?でも、仲良くしてくれそうだし、いいんじゃないかな?』
(42歳・主婦)
『あー、正直に言って不安ではありますね。どうなるか解らないし。………ウチの息子も転移のせいで内定者取り消しになったりしてるし、ほらこの間も訪日外国人観光客が難民化してて、デモから暴動になりかけたって話でしょう?そんな中で、こっちの世界の国の事に首を突っ込む余裕があるのかなぁ?』
(48歳・男性)
『あ、ベルゲン!知ってる知ってる!王様がテレビ出てた国でしょ?めっちゃ可愛かった!あんなに弟欲しい!え?何?同盟?自衛隊?えー?でも、あれでしょ何だかあの王様、可愛いし仲良くしてくれそうだし、良いと思うよ?』
(20歳・女性)
『………やっぱり、不安ですね。フェールデンは戦争が終わったばっかりだし、ベルゲンってあんなに若い人が国王ですしね。けど、この世界でやっていくためには必要な事でしょう?最近は良くないニュースばっかりだったし、ちょっと明るいニュースの様な気もしますね。』
(32歳・男性)
『断固反対ですね。国民が苦しんでるのに、今そんなことしてる場合じゃ無いんじゃないですか?あれでしょう?要するに日本がアメリカの真似事しようっていうんでしょう?戦争になりますよ、そんなの!だから、絶対反対ですね!』
(41歳・女性)
『いや、もうこっちの世界でやっていくしか無いでしょう?もう自分達が生きていくために色々動かないと。だからまぁ、賛成ですね。それに、もう約束しちゃったんだし。別にタダでそんなことしてる訳じゃないでしょう?だったらもう、開き直ってどっぷりこっちに浸かっちゃったほうがいいんじゃないかな?』
(38歳・男性)
「………どうですか、小山田さん、VTRを見て。」
「そうですね、やっぱり皆さん不安に思ってるみたいですね。」
「まぁ、フェールデンとベルゲンについて、我々も良く知らないと言うのが大きいんですかね?」
「そうですねぇ………けど、まぁ、あのユーリ陛下ですか?あの方は幾分日本人にもテレビで姿を見せたり、結構オープンな方みたいですし、より関係を深めるための窓口になってくれそうな気はしますね。」
「………えっ?あ、あぁ。はい。」
「??」
「えっとですね、只今新たな情報が入ってきまして。日本政府とベルゲン王国間での、経済協定の発表があったそうです。えっ?これ、本当に?」
「何かありましたか?」
「えっとですね、どうやらベルゲン王国との間で結ばれた協定の中でですね、日本からの資源調査団の受け入れと、資源が発見された場合の利権の譲渡が………」
(以上、両国使節団帰国の三日後の報道番組)
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