我が国は、貴国の脅迫に決して屈しない‐4
さて、衝撃のファーストコンタクトから4日。
丸山さんも予定通り帰国した。
俺は今、国の重鎮達と会議を行っている。
「さて、外務卿。日本国について、何か分かったかな?」
「はい、陛下。三日間彼と接して、かの国について幾つか分かったことが御座います。」
「ふむ、聴かせてくれ。」
「まず、かの国が求めているのは食料です。」
「ふむ。」
まぁ、世界最大の食料輸入国だったしなぁ。
「どうやら、此方へ転移してからというもの、
かの国の食料事情は悪化の一途を辿って居るようです。」
配給制にでもなってんのかな?
「で、ですな。日本国は、国の舵を取る者を選挙なるもので決めるそうでして………」
外務卿の説明は続く。
そして、段々俺の胃が痛くなる。
彼の話を聞いて予測される情況はこうだ。
日本は、転移を非常事態と認定。
食糧だけでなく、エネルギー等も統制し一先ずの混乱を最小限で留める。
しかし、半年では情況は転移前には戻ってくれない。
当初は非常事態と言うことで我慢出来ていた国民も、段々と不満を溜めていく。
国にとっては短い半年という時間も、国民一人一人にとっては短いとは言えない。
そして、非常事態の統制下とは言え日本は民主主義国家。
不満を国政に繁栄させることが出来る仕組みなのだ。
元気になる野党。
国への不満を代弁するのが、正しい野党の仕事なのだから(ちょっと状況が見えていないとは言え)彼らが一概に悪いとは言えない。
非常事態の中、国を更に混乱させる訳にはいかない与党。
ここに来て、国民に対して分かりやすい成果を示す必要がある。
荒れる臨時国会。突然明るみに出る汚点と、二転三転する争点。
ここに来て、日本は政治の場だけが転移前の状況に戻ったわけである。
そして、出た結論が。
『取り敢えず、国があるらしいし行ってみようぜ!』
うへぁ。民主主義が裏目に出ちゃったよ。
「ということで、かの国は方々に一斉に使者を出したようです。」
「ふむ………どうやら、日本国は民の手綱も握れぬようです。陛下、いかがでしょう。我々軍部に命じていただければ、一月で奴等を跪せてご覧にいれましょうぞ。」
おいバカやめろ軍務卿。
「ふん、かの国は島国と言うではないか。我が国に船団を作る金は無いぞ。少しは考えてからモノを言え。」
そうだ、言ってやれ内務卿!!
「全く、貴様は口を開けば金金金と!!頭が固すぎるのだ!よく考えろ、国ががたついている今こそが最大の好機!!貴様もあの貢ぎ物を見たであろう?かの国を支配下に置けば一気に儲かるだろうよ!」
「む?確かにあの貢ぎ物は見事であったな。………後のための投資と考えれば悪くないか。」
悪いよ!!
島国と言ってもウチよりデカイからな!!
人口も倍以上有るんだぞ、しかも軍隊は防御想定で、外敵の侵攻にトラウマ持ちで予測不可能な行動に定評が有るんだぞぉぉ!!
「まぁまぁ、お二人とも。かの国は、他国にも使者を送っております。わが国同様、情報を持っている国が何か動きを見せるやもしれません。ここは一旦様子を見て………」
「「それでは遅いのだ!風見鶏は黙っておれ!」」
これは、いつも通りのパターンだね。
分るよ。
やりたいことを、軍務内務両方の顔を立てつつ婉曲に伝えるという難易度ハードのミニゲームだね。
「ふむ………丸山殿が帰国してからそう時間は経っておらぬ。しかし、与えられた時間は少ない。外務卿、情報が要る。日本国に使者は送れるか?」
「一週間ほど時間を頂ければ。」
「では内務卿よ、その間に船団建造に向け手筈を整えよ。」
「御意に。」
「軍務卿、そなたの配下を港へと向かわせ船出の準備をせよ。数は任せる。」
「ははぁ!」
うむ、国王の意向をもってそれぞれの主張を華麗に追認したな!!
………アイアムイエスマン。
肉体年齢十三歳の普通の男の子!
ほかの人と違うところは、ちょっと権力を持っるけど、権力の行使の仕方次第で国が割れちゃうって所かな!!
tips
ユーリ・フィラルド・ベルゲン
平成日本からの転生者。
なんだかよく分からない内に、日本で死んだ。
何だかよく分からない神様からの何だかよく分からない説明を受けた後、転生をした。
国境付近の村に若い夫婦の一人息子として、この世界に生を受ける。
その三年後に、起きた国境紛争にて村は壊滅。
両親と死に別れた。