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鉄と血と叡知によってのみ、我々は平穏を赦される‐1

「これからお話しする内容は、くれぐれも内密にしていただきたい。」


そんな枕詞で、言葉を紡ぐフェールデン帝国陸軍情報局長。


何だか、かっこよさげな台詞である。

そんなこと言っても許されるのは、スパイとか何とか映画になるほど格好いい職業の人間だけなんだけど、彼の役職は陸軍情報局長。

そのスパイ達の親玉みたいなもんである。


ちくしょう、格好いいじゃねぇか。


「此度の東部軍の暴走。これは、ある噂を受けての事でした。」


うん?


「我々フェールデン帝国が、日本国と戦争を行ったのは、皆さま知っておられるでしょう。その結果として、我が国フェールデンの沿岸部の多くの都市が日本の下に置かれることとなりました。」


うん。知ってる。


「では、そこで何が行われているのかを聞いたことがある方はいらっしゃいますかな?」


え?………いや、そこまでは知らんけど。


「この度日本の統治下に置かれた地域の者たちは皆が皆奴隷のように扱われている。男たちは、殺され、その肉を日本人が喜んで食べている。女たちは鎖に繋がれ、子供たちは首輪をつけられ愛玩動物にされている。」


そこで、ギョッとした視線をフェールデン人たちに向ける日本の大臣二人。


「そ、そんなこと我が国はっ!」


だが、口を開いた所で、情報局長はその言葉を遮るように、更に言葉を被せた。


「もちろん、我々フェールデン帝国はそれがデマだと知っていますし、日本国との連携連絡を密にして、その確証もとっております。そこは疑っておりません。」


だ、だよね。そらそうだよね?

そんな歪んだ欲望丸出しの蛮行やらんわな。

………こっちの世界の国ならやりかねないや。

いや、元の世界も昔は過激な統治方法とってたな。

自国の商品を有利にするために、職人の腕を切り落としたりした国があったり。


「ですが、日本の統治下に置かれた地域………そして、その近隣の住民はそうではありませんでした。」


え?


「彼らは、いつの間にか広まった日本国による蛮行を真に受けました………そして彼らは慣れ親しんだ故郷を捨て、東方へと逃げたのですよ。日本の侵略に怯えながら暮らすよりは、と。真しやかに囁かれた噂と共にね。」


………非常時のデマが非常に厄介だと言うのは、聞いたことがあるけれど。

あ、これギャグじゃないよ?


「その噂は、我が東部軍の耳にも入り、それがあたかも真実のように兵達に………更には将達にも囁かれるようになりました。」


………ん?


「兵達が噂をするのも、それを信じてしまうのも、お恥ずかしい話ですがまだあり得る事です。しかし、大軍を指揮する将までとなると異常と言わざるを得ません。それに、噂が広まる早さが尋常ではありませんでした。」


「誰かが、意図的にデマを流したか。」


「………いやはや、ベルゲン王国の国王陛下はお若いながらも優秀でいらっしゃる。我が国が手こずるのも道理でありますな。」


ふふん、おだてたって何も出ないわよ?

………解ってまーす、途中で口を挟んだことに対する小言ですね?

ココまで言えば、誰でも解るっちゅーねん。

でも、そうでもして突破口を開かんと、ベルゲン側に発言させる気無いでしょうが!

だからな軍務卿次席副官殿、その自慢げな顔を止めるでござるよ。


「………して、その首魁に検討はついておられるのかな?情報局長殿。」


「おおよそ調べはついております………おりますが、証拠を掴むには至っておりません。」


大体、検討はつくけどさ。

日本に負けておきながら急接近するフェールデンと、最初っからずっと日本にラブコールを送っているベルゲン。


焦るのはだーれだ?


「ダイアス=ロングランドか?」


「ご明察です。」


「日本が苛烈な統治を行っているとの噂、我が国にも伝われば問題が起きるであろうな。」


まぁ、本当にダイアス=ロングランドの仕業だとしても、ベルゲンの場合はフェールデンほどそのデマが広まる速度は早くないだろうけどネ。

今回の噂の運び屋はダイアス商人なんじゃなかろうかと思うのよ。

あの国の商人さん達は商魂逞しく、世界中に販路を持ってたりする気合いの入った商人さんですので世界中色んな所にダイアス=ロングランド人は居るのです。


で、ウチの場合は市井にダイアス系の商人さんが来ることはない。

国としての、御用商人は居るんだけどね?

普通の規模の商人さんが、ベルゲン人と色々取引すると、村八分的なあれやそれやが起きて、今まで育ててきた色んな販路がダメになるんだとサ。


まぁ、ベルゲン差別は結構根深いねって話だ。


「おや、ベルゲン王国と日本国は磐石の信頼関係を築いて居ると思っていたのですが、違うのですかな?」


「少なくとも、余は日本国を信用しておるよ。そして、余は勿論臣下の者達にも全面の信を置いておる。だが、我がベルゲン王国と日本国はまだ信頼関係を築いている最中でな。」


だって、ウチの国民基本外国にトラウマ持ってるんだもん。

俺たちがいくら言っても、外国に対する不信感とか警戒感は拭い去れないんですの。

あなたも原因ですよ、フェールデンさん。



そこら辺のベルゲンの成り立ち何かは予習したのか、日本の外務と転移対応両大臣も首を傾げるようなことはなかった。


そういえば、サラッと流してたけど………転移対応大臣ってなにする人なんだろう?


「と、話が逸れましたな。失礼。」


あ、ヤバ。思考が明後日に飛んだのばれたか。


「いや、此方こそすまぬ。話を続けてくれ。」


「ありがとうございます。時に日本の方々、ダイアス=ロングランド諸島王国から何か言われておりませんかな?例えば………我々が日本に貸している沿岸の都市を借りたい………とか。」


「………確かに、そのような提案を停戦協定告知の折りに受けております。勿論、丁寧にお断りさせて頂きましたが。」


そらそんなことしたら、フェールデンの対日感情が大変なことになってしまうもんね。


「それは何より、我が国にとっては誠に喜ばしい事です。さて、我がフェールデンが海を失ったことによって、ダイアス=ロングランド王国は我が国との交易路を失いました。なので、今後も彼らの工作がより活発になると我々フェールデン帝国陸軍情報局は予測しております。」


「情報局長、ここからは私が話そう。つきましては、我がフェールデン帝国から日本国そしてベルゲン王国に提案があります。」


あ、何かヤな予感。


「我々フェールデンと、同盟関係を結んでいただきたい。」

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