我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない‐16
「えー、本日はですね、この番組に特別ゲストをお迎えしております。ベルゲン王国国王『ユーリ・フィラルド・ベルゲン』陛下です!」
「日本の皆さん、はじめまして。私が、ベルゲン王国国王『ユーリ・フィラルド・ベルゲン』です。」
さてさて、俺は今日本に居ます。
より具体的に言うと、日本国東京都にある某テレビ局のスタジオにお邪魔してます。
いぇーい、おかぁちゃん見てるー?生放送やで、生放送。
何で俺はこんなところでカメラに向かって手を振っているのかって?和平会議はどうしたのかって?
仕方ないじゃん。フェールデン側の代表団の到着が遅れて時間が出来てしまったんだもの。
唐突に出来てしまったこの時間を、何か日本でしか出来ないことに宛てようとしたらこうなっちゃったのだ。
和平会議の決定が知らされた後に、ベルゲンとフェールデンでスケジュールのすり合わせを行ったり何たりと、内外の調整を行って、大体二週間でベルゲン側の会議参加者達は機上の人になった。
遅いように見えてかなり早い。
て言うか、日本の協力がなかったら、情報のやり取りだけで一大事業になっちゃう。
中世的この世界のの治安の悪さと、インフラの弱さと、移動手段の劣悪さと、フェールデンの広さをなめてはいけない。
此方のメンバーは、俺と内務卿と外務卿。後は、前に日本から色んな資料を持ち帰った外務卿の部下。この四人を主戦力として、その他の人員等々大体40人位だろうか。
王都からヘリで移動したり、自衛隊の輸送機に乗ったり、慣れていないとなかなかハードな道のりでした。
機内で顔を青くした内務卿をからかって遊んだりしたのは良い思い出です。
で、会議の準備も大体ベルゲンで終わらせたから、後は日本国政府のエスコートに従って大人しく歓待されていようと思っていたら、フェールデンが遅れるとの報せ。
別にあちらがごたついて居るわけではなく、天候とかの問題だとか。いや、本当にそうなのかは確かめようがないけど。
そうして出来た空き時間、日本側に何かやりたいことや行きたい所はあるかと訊ねられたから、以前打診のあった取材の件に絡めてテレビ出演をこちらから希望した訳だ。
「いや、しかしユーリ陛下は、お若くていらっしゃる。確か御歳13歳ですとか。」
「ええ、その通りです。この国では、私ぐらいの年齢では『中学校』なるものに通うのでしょう?」
「そうですね、日本だと学校に行っている年齢です。しかし、こんなにしっかりしてる13歳なんて、絶対日本には居ませんよ?どうですか?日本は?」
この番組では、色々と無礼講でやってくれと頼んである。
ベルゲンがフレンドリーな国だという印象を与えたいし。
そして出来ることなら、ベルゲンに対する印象を
「物語から飛び出てきたファンタジーしてる野蛮人」
から
「よくわからないけど、アフリカの小国くらいには話の通じる奴ら」
位には出来たら良いなぁと思っている。
であるから俺も、意識して口調を変えているのだ。
『余』とか言わないし、『であるか!』とか言わない。
そして、出る番組にも注文をつけた。
なるべくフランクな番組がいい。そして、スケジュール的に生放送じゃないといけない。
更に、できれば視聴率が高い方が良いなぁ………とおねだりした結果、国営放送ではなく民放のお昼のワイドショーになった。
お昼のお茶の間に、突然国王が出てきたらそれはわしじゃよ。
「皆さんに歓迎していただいて、とても感謝しています。日本国内の様子を、移動中に眺める機会がありましたが建物が大きくて驚きました。この国には他にもたくさんの素晴らしい場所があると聞きます。いつかゆっくりと巡ってみたいものです。」
適度に日本を誉めつつ、色々と司会者の質問に答えてゆく。
ベルゲンはどんな国だとか、俺が普段はどんなことしてるのか、とかまで。
因みにここで、ベルゲンの窮状を訴えたりはしない。
同情を誘って世論をベルゲン寄りに!とかしたら、下手すりゃ和平会議がぶっ飛ぶからね。
ベルゲンが殴られ放題国家とかいうデリケートなことは、やんわりと明言をさけたり、ベルゲン王国大本營発表でゴマカシタリシテイルノデス。
………これもやり過ぎると、実情と解離している所を後々突っ込まれるから、用法容量をキチンと守って使わないといけないけど。
こういった、ベルゲンの宣伝をしつつも問題ない範囲で和平の意思をぶちまけたりしました。はい。
唐突にできた空き時間は二日。あと一日あるのであります。
なので明日は、唐突に街中に出没する予定です。
これも宣伝ですよ?
公的には私的な行動だが、心情的には公的な行動なのです。
ホントだよ?




