我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない‐13
さてさて、日本からの取材打診の報告が外務卿から上がってきた日から数日が経過した。
勿論その間、こちらはフェールデンと戦争である。
俺は国のトップとして、そらもう大忙し。
ま、俺がどんなに働いても、敵さんはじわりじわりと支配領域を広げてくるんですけどね?
大体、更に20キロメートルほど押し込まれている。
………そういえば、つい最近俺が勝手に動かせる労働力………近衛騎士団とかいかうエリートさん………彼らを使って、最近作ったものがある。
その答えは、ヘリポートさんです。
王宮ではなく、迎賓館に作ったのだ。ヘリポート。
ベルゲン王国史上初の現代建築(?)がヘリポート。
………え?地味すぎるって?
ご安心ください、賓客を迎える玄関口なのだからそれなりにお洒落風味である。
地面は全面レンガで、あのHのマークもレンガの色を変えて描いている。
他にも、周囲を花壇で囲んで季節の花を愛でられるように………
………うん、やっぱり地味すぎる。
ともあれ、これまでは陸路でいちいちここまで来てもらっていたりしたが、これで空路による移動時間の短縮ができる。
いや、多分これまでは車ごとヘリで郊外までやってきたりしてたんだろうけどね?
流石に王都に空からやって来るのはあれだ、ベルゲン人には刺激が強い。
日本側がそこら辺に配慮してくれた結果、彼らは車でいつもここまで来てくれる。
ヘリに比べれば、車はまだこちらの人間にも理解できる代物ですので、非常に助かってます。
しかし、いつまでもベルゲン国民が日本を『怖い、解らない』では困るし。
ちょっと荒療治じみたやり方だが、次に来るときはヘリで来てもらうことにしている。
ヘリポートは此方側の用意したサプライズ的なあれである。
誘導員とか居ないから、ガワだけ真似たなんちゃってヘリポートですがね。
実際ヘリの離発着にどれ程役に立つかは解らないが、きっと無いよりもましでしょう。
後は、長距離無線機でも購入して日本とのやり取りにかかる時間を短縮出来れば良いのだが………ま、今は空路の許可で我慢かな?
いや、国防に直結する所があるので、軍部を中心に反発が物凄かったからね。
これ以上は、今はムリだ。
んでんで、何故こんな話になっとるかと言うとですね、今日初めてこのヘリポートが使われる予定なんですよ。
一応、王宮関係者には画像と共に通達はしてあるし、王都民にもお触れを出したけど………混乱はあるでしょうね。
日本でも頭上にUFO的サムシングが出現したら、お知らせがあってもパニックになる………んじゃないかなぁ。いや、皆携帯でパシャパシャやったり呟いたりするだけで済むかもしれないぞ、日本人。
まぁ、少なくともネットはパニックになるでしょう。サーバーが落ちたりして。
「陛下、お時間です。」
「うむ。では行くとしようか。………時に侍従長、王都の様子はどうだ?何か問題は起きておらんか?」
「いえ、私の方には何も報告は上がっておりません。」
……そりゃそうか。彼とその部下の仕事場はこの王宮内に限られるのだ。
その日の王都の情報なんかは入ってくるわけがない。
「よろしければ、お調べして報告いたしますが?」
ふむ………お願いするとしようかな。
「では、侍従長。頼むとしよう。出来れば、庶民の話が知りたい。」
王都住みの貴族相手なら、話を聞く機会もあるだろうが、庶民となるとね。
彼ならば王宮にも、下層階級の人間はいる筈だからそこから話が聞けるんじゃないかな?
いやまぁ、俺も元は農村出身だけどさ。
それから、この件に関して彼といくつか打ち合わせて、丁度良いタイミングで謁見の間に到着。
後は、またいつも通り丸山さんとのご対面である。
今日は一体何があるんでしょうね?
「陛下。ユーリ陛下。我が日本国は、この度のフェールデン帝国による貴国への侵略行為を周辺国の安定を著しく損なう行為であると位置づけ、このような行為に及んだフェールデン帝国に強い懸念を抱き、遺憾の意を表する事となりました。」
「………ほう。」
「また、今回の一連の騒動に関して当事国の要請があれば、問題の仲裁を行う用意があります。」
「…………ほう。」
うん、これ下手な手は打てんぞ。




