我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない‐9
「緊急召集だ、内務卿と外務卿を呼べ!」
俺は近くに侍る近衛に名を下す。
「して、軍務卿。フェールデン国境の状況は?」
「はい、陛下。フェールデンは、以前から国境に展開した100万の兵力、その全てを動かしております。」
「相変わらず多いな………たしか、前回は50万をフェールデン側に残した状態で攻めてきていたな。」
ついこないだの三国の攻勢では、ボルストとダイアス=ロングランドに関してはその攻撃を退け、敵を祖国にキッチリ送り返している。
しかしながら、フェールデンに関しては敵の足止めをしていたに過ぎない。
だって、強いんだもん。フェールデン兵。
まともにこちらの常備軍をぶつけると、溶けて無くなっちゃう。
だから、会戦とかせずに、国境の皆さんに自爆テロじみた抵抗で足止めをしてもらって居た訳で。
そいでもって、そうこうしている間に日フェ戦争が開始即終了!!となった影響もありフェールデン側も国へ帰った。
本来なら、常備軍にボルスト戦後返す刀でフェールデンに相対してもらう予定でした。
いや、良かった良かった、これで戦争が終わったわぁー!
とか思っていたのだが、フェールデンは兵を自国内へと交代こそさせていたが、解散させることはなかった。
………故郷へ帰れよ!お前らにも家族が居るんだろう!?
で、結局ベルゲンとしては戦闘の終結を宣言しつつ国境に監視の兵を張り付けると言う不本意極まりない状態となっていた。
んで、そのフェールデンが動き出したと言うわけでして………
「軍務卿、こちらの動きは?」
「こちらは相手を迎え撃つ準備を整えておりましたからな。防衛線は万全の状態で敷いております。兵達は連戦となりますが………それは何時もの事です。」
「しかし、何故このタイミングなのだ?フェールデン国内の混乱の隙をついてボルストが攻めてくるとは考えないのか?軍務卿、此度の侵攻、何かがおかしいぞ。」
「………陛下、その事なのですが、フェールデンと日本は手を組んでいる可能性を考慮して頂きたい。」
………え?
「大体、おかしいのですよ。日本はフェールデンの皇帝を排除まで行っているにも関わらず、その体制については手をつけておりません。国家防衛を唄いながら、根本の原因を排除出来たのにしておりません。」
いや、それは多分、「大陸の傀儡国家」なんて言葉にトラウマがされてるだけなんだと思うの。
「いや、軍務卿。日本は明確に我が国の友好を宣言しておる。例え首脳部がそう考えていても、国民が納得せんだろう。」
「ええ、ですから可能性と申し上げておるのです。」
「陛下、お待たせいたしました。」
「陛下、只今参りました。」
そこへ、内務卿と外務卿が連れだってやって来た。
「二人ともよく来てくれた。フェールデンが侵攻してきたことは聞いたか?」
「ええ、聞き及んでおります。」
「はい、陛下。」
「今回は、軍務卿が抜かりなく準備をしてくれていたから初動は理想的な形となっている。軍務卿、大儀であった。」
「何、この程度は当然です。」
ここで軍務卿のドヤ顔。
イラッ!とするわー。顔には出さんけども。
だって、おっさんのドヤ顔だからね。
仕方ない仕方ない。
「で、だ。此度のフェールデンの動きがあまりに不自然でな、軍務卿と話しておった所よ。」
そう前置きをして、俺は今来た二人に軍務卿と話していた事を伝える。
「成る程、確かに軍務卿の言う通り日本の行動に不自然な点は見えますな………戦争をした段階で無かった領土欲が、実際に土地を手に入れたことで鎌首をもたげたのかもしれません。何せ、日本が押さえたのは主だった港湾都市。そこから上がってくる利益は莫大なものとなりましょう。………ふむ、その場合こちらの外交方針を変更する必要が出てきますな。」
と、日フェ結託説を支持する内務卿。
いやいや、流石にこんなに早く利益は上がらんだろうよ。
略奪でもせん限りは。
常識的に考えて日本でなくても今後統治する場所でそんなことは………あ、三国がベルゲン占領したらするじゃん。
そっか、ベルゲン基準で考えてるのか。
「まぁまぁ、お二方。そのように結論を急いで出さずとも良いのでは無いですかな?」
「ほう、外務卿。ではそのご高説を聞かせてもらおうか。」
内務卿が若干眉を吊り上げて、外務卿の発言を促す。
内心、
(俺の考えを否定するとは良い度胸をしてやがるぜコイツ。)
とか、考えてそう。
君らホント隙あらば喧嘩しようとするなぁ。
と言うか、結論を急ぎすぎてないか?
一気に悪くなる場の雰囲気。
外務卿の額にうっすら浮かぶ冷や汗が!
俺なら禿げるわ。
「その、ですな。確かに、日本とフェールデンが組んでいた場合には我が国も外交方針を変更する必要がありますが、陛下と軍務卿も仰る通りあくまでも可能性の話しですから、先ずは真偽の確認を取ることが先決かと。」
「む。それはまぁ、そうだな。すまん、些か焦っていたようだ。」
あー、まぁ、殴られている最中にそんな話しになれば、焦りもするか………。
「後はですな、我々がこうして生きていることが、日本国とフェールデン帝国が結託していない証拠ではないかと。」
ん?
「どう言うことだ?申してみよ、外務卿。」
「はい、陛下。日本が真にこのベルゲン王国を欲しているのならば、フェールデンの手を借りずとも事が為せてしまうのですよ。フェールデンの皇帝を害した時と同じように。」
あぁ、成る程。
「どうですかな、軍務卿。例えば、先日見た日本の映像にあった自衛隊、彼らのヘリコプターから降りてくる兵士を、我々は撃退できますかな?」
「………悔しいが、難しいだろうな。あのヘリコプターとやらを止める手立てが我らにはない。」
ふむ、確かにその通り………とは言え、日フェ結託の可能性を排除しきるにはちと根拠が弱い。
弱いが………先ずは確認が先と。
「………結論は出たようだな。では、外務卿。日本のものにそれとなく探りを入れてくれ。」
「かしこまりました、陛下。ただ、情報を少しでも多く得るために陛下にもご協力頂きたい事がございます。幸い、件の著作物の取引の件で、日本の丸山殿が謁見を行う予定となっておりましたな?」
「うむ。その通りである。」
「では、その際にですな………」
………外務卿が珍しく悪どい顔をしている。
コイツ、怖いわー。




