我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない‐8
拍子抜けです。
拍子抜けですよ、ええ。
日本に提案した著作物に関する商取引の件ですが、条件付きでオッケーが出ましたよ。
しかも、その条件というのが日本の現行の取引方法に合わせて取引を行う事。
………行けるんじゃないかな、これなら。
本来なら、著作物を二国間で取引するのには、お互いの国がそれぞれ定めている著作権法があってそこで齟齬が出てきて問題になったりするんだけど………
今回はそこら辺は、どうとでもできてしまうからなぁ。
何せ、ベルゲン王国に著作権法………というか著作権という概念が無いからね!
そんなものは、一先ず日本に合わせて制定してしまっても良いんじゃ無かろうか?
いや、まぁ国内で問題になる部分は出てくるだろうけどね。
例えば、ベルゲン人が日本に対して著作物を輸出した場合に、カモられるとか。
とは言え、現状ベルゲンに著作物を輸出出来るような人間は存在しておりませんので、ここは問題にはならない………少なくとも今は。
ベルゲンが豊かになって、ベルゲン人が日本に対してベルゲン制のブランド品なんかを輸出する段階になれば問題にもなるでしょう。
だが、残念ながら現在のベルゲンではそんな日が来ることを祈るしかないような段階だ。
まぁ、後はあれだ。
ベルゲンの一般国民に日本と言う国の知名度が幅広く知られれば、日本の著作物を勝手に使っちゃうでしょう。
日本の横にあった大陸国家のように、確実にパチもん商品が出てくる。
………てか、溢れかえる?
とは言え、そこら辺の法律は絶対に遵守させることは不可能だ。
違法ダウンロードやらなんやらあって、日本だって出来てない事をベルゲンやれって言われてもね。
勿論、明らかに法を犯した人間を罰するとか、ベルゲン王国として法を守らせる姿勢は見せるけど。
そんなこんなで、内務卿に相談だぁ!!
………オッケーが出ました。
拍子抜けである。1日時間を置いただけだ。
どうやら、日本の著作権法をみてベルゲンにとって致命的な所が無いかを精査してくれたらしい。
1日で済む辺り、こいつの能力はなかなかバケモノじみてるぜ………
んで、文面をベルゲン王国に合うものにいじった上でちゃっちゃとロールアウト!
ここまで3日!
早い、早いぜ専制主義!
怖い、怖いぜ落とし穴!
だが止まっている暇はないっ!
後は、国庫から日本にお代を渡して………うーんどうしよう。
考えてみたら、商人や村長に渡す物語の本って日本に作ってもらった方が早くて安く済むのではないだろうか………
ってか、済むだろうなぁ。
しまったなぁ。今回の件にはそこら辺は盛り込まれてないぞ?
失敗したなぁ…………
「へっ、陛下ァ!!」
そんなことを考えていると、俺の執務室のドアが勢いよく開けられた。
「う、うむ?どうした、そんなに慌てて………」
軍務卿………い、嫌な予感。
今、軍務卿が慌てて報告に来る案件なんて1つしか心当たりが無いぞ?
「フェールデンの再侵攻が始まりました!」
「バカな!早すぎる!」
かくして、ベルゲン王国に危機が迫る。
………本当に早すぎる。




