我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない‐7
さて、日本の物語をベースにした『ベルゲン国防フロパガンダ計画』。
これについては、内務卿から提案が出されたその日のうちに成果物が俺に手渡される。
ベルゲン向けに手直しされた、物語である。
今回の計画は、表向きは国境に配備されている兵士(田舎に居る普通の国民)の士気高揚、後は軍部ひいては国そのものの権威を高めることが目的だ。
その真意は、
「少しでも日本との交流の足掛かりをもって、何とか国防への流れに持っていこう!………行けたら良いなぁ。」
という、ヒジョーに希望的観測だらけのガバガバ計画です。
まぁ、やらんよりマシだし、こっちの懐もそこまで痛まないからオッケー出したのだけど。
………日本との繋がりでフェールデンが二の足踏んでくれたら良いなぁという思惑もあったり。
やっぱり、希望的観測なのだけどね。
実際問題、
「ベルゲンを守らなきゃ!」
という意識は国民の皆さま方も持ち合わせて居るし、彼らはいざ事が起これば手に武器を持って敵に立ち向かってくれる。
だが、それはそれとして、色んな形でテコ入れは必要なのです。
放置すると、そこら辺の意識というか意気込みはどうしても劣化しちゃうからね。
「敵を退けるために、敵に立ち向かう」ことに抵抗や疑問を覚えてもらっちゃ困るのだ。
………こうやって見ると、悪の枢軸国家みたいなことやってるなぁ。ウチの国。
そうしないと他国に殺されるから、仕方ないのだけれども。
勿論、俺個人や国の首脳部の人間にその状況を変えたいかと聞けば答えはイエスだ。
では何故変えないのか?と聞けばこう返させていただこう。
「そんな余裕があるわけないじゃん!」
正直、ベルゲンの処理能力は現状で割りとカツカツなんです。
内政や国防体制に大鉈振るうなんてムリムリ。
今回の計画だって、そこにつぎ込むリソースがそこまで大きくならないだろうから内務卿が提案が上がってきたからね。
さて、ではプロパガンダの内容は揃ったとして、どうやってそれを国民に伝えるかをご紹介しましょう。
えー、テレビやラジオで大々的に!というのは技術的にも財政的にも難しいので無し。
書物で伝えよう!と言うのも、識字率の問題から無し。
これは、中世的に考えて識字率が低いと言うのもあるけれど、この国がかなりカオスフルな多民族国家だということも問題だ。
勿論、共通言語とその文字や文章と言うのは存在する。
けれど、文字や文章はあくまでもこの国でもエリートの人間が操れるもの。
国境の集落などでは、あまり一般的ではない。
話すだけならしばらく生活していれば大体何とかなるんだけどね。
言文一致もしてないし。文字言語の修得は、ちょっとハードルが高い。
だから、書物で広めるのも無し。
後は、舞台化して上演するとかいう手もあるけどこれは国中に広めるのは難しい。
この国に劇場の数は多くないし、勿論各村に劇場が有るなんて訳がない。
まぁ、日本に向けて
「あなた達から輸入したお話は、こういうもので、こうやって使ってますよ!」
というのを解りやすく伝える(予定)為に、一部では作って上演されるだろうけれど、やっぱり国境の住民に大々的に伝えるのには向いていない。
んでとる(というか、とれる)手段は、
『国中を回る行商人や各村の村長に、語ってもらう。』
という口コミ頼りの方法です。
彼らなら、文字も読めるので書物を渡してそれを伝えてもらうという手段がとれる訳ですよ。
まぁ、彼らに手渡すために作る書物は結構な数にのぼるけど。
さて、後は日本との交渉ならびにその結果待ちですねぇ。




