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我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない-6

ちょっと増量中です(あくまでも当社比)

あぁ!素晴らしきかな文明!文明のかほりがするわぁ!


えー、端的に何があったかをお話するとですね。

僕の家にテレビが来たよ!

と言うことでして。

以前、日本に持ちかけたテレビを見れるようにしてください!

と言うお願いが、一部叶えられたわけです。

まぁ、流石にリアルタイムの放送を見られるようにはこの短期間では出来なかったから、一部が叶えられたと言う表現になっとる訳ですが。


今回はテレビ(かなりでかいやつ)と記録媒体の再生機器(多分最新)、後はちょっとした発電機その他必要そうなあれやこれやを日本に貰ったと言う話な訳です。

そう、貰ったんです。タダなんやで!タダ!


タダでくれたのは、

「日本は別にベルゲンの事を忘れてる訳じゃないんだ!でも今ちょっとお家の事情で忙しくってね!ちょっと、ちょっと待ってね!取り敢えずお土産置いて行くから!」

と言うメッセージも含んでるんじゃなかろうか?

ま、日本も今メチャクチャ忙しいだろうし、ウチとのあれこれにも混乱が波及するのは想定内。

放って置かれるのは、多少………いや、結構不味いけど、流石にこれは仕方ないだろう。

例の日フェ戦争によって、日本は戦後初めて国外に領土を持ったわけで、これによって初めてこちらの世界の民間人同士の大々的な接触が始まる訳で………。

そら、忙しくもなるわな。

まぁ、それはそれとして、ベルゲンは日本に事の進展についてせっつきますが。

あわよくば、日本の混乱に乗っかってベルゲンに有利な案件を飲んでもらったり出来たら良いなと言う下心のでげす。

まぁ、それも外交と言うものなのでは無かろうか?

日本国外務省や、議員の方々のはしばらく丸の内辺りから出られなくなるだろうが頑張って頂きたい。

ウチも王宮で似たようなことが起きてるから。

と言うか、王様も似たような状況になるだろうから。

未成年にんなことさせて良いのかよ!

と思わないでも無いが、ウチは日本ほどでかくて強力な官僚機構がある訳じゃないのでトップの負担も増えてしまうのだ。

欲しいなぁ、官僚機構。

皆さんだって欲しいでしょ?

勝手に仕事してくれるシステム。


と、話が逸れたが兎に角テレビである。

実は、テレビが来ると決まった日から、国内の有力者にあれやこれや御触れを出しまして、ベルゲンと日本との友好の証のセレモニーのお披露目のダンスパーティーの………まぁ、要するに有力者向けのちょっとしたイベントにしてしまったのだ。

もちろん『ベ日友好』のイベントなので、日本側の人も呼んであります。

やっはろー、丸山氏。そして、その他の外務省の方々。

出来れば、外務大臣さんをお招きしたかったけど、フェールデン関係で都合がつかなかった様ですね。残念。


それに関して、軍務卿が日本がベルゲンを蔑ろにしてる!

と、騒いでおりましたが例の如く内務卿に突っ込まれ、外務卿に宥められ、何故か外務卿が怒られておりました。

それを、ベルゲン側の参加者の前でやってくれたので、今回のイベント中に

「日本がベルゲンをテキトーに扱ってる!許せん!」

とか言い出すアホが出る事は無いでしょう。

………無いよね?頼むで、ほんまに。


と、そろそろかな。

一応この場で一番立場が上の人間が挨拶して、今回のイベントは始まる。

要するに俺が仰々しい言葉で

「ベルゲンと日本はズッ友ダになれるよ!よろしくね!」

ってやって………はい、開始です。

カンパーイ!


………ってお前ら!テレビが珍しいのは解るけど、日本側の人達放っておいたらいかんじゃろ!

その様子を見た外務卿が慌てて奥さん連れてすっ飛んでいったから一安心だけどさぁ。


所で、このベルゲン王国、多民族国家だと言うのはお話ししただろうか?

この国の成り立ちは、要は迫害された人間が流れ着いて生き残るために建国と言う運びなのだが、別にどこぞのちょび髭総統がガス室に送り込んだ民族のように、単一の民族が槍玉にあげられた挙げ句建国したわけではない。

それぞれが、異なる国や地域から逃げてきた人達やその末裔なのだ。

なので、このダンスパーティー、ベルゲン側だけを見ても参加者の毛色がかなり違っている。

ヨーロッパ的な服装の人間がいれば、なんとなくオリエンタルな雰囲気のゆったりした服装の一団が居たり、顔に刺青が電子回路の如く彫り込まれている一団が居たりする。

と、なるとそれぞれの文化等々は違って当たり前。

それを無理やり一つに纏めようとすると、かなりの軋轢が生まれてしまうので、余程相手を不快にさせるようなもの以外はそのまま放置でそれぞれがありのままの姿でパーティーに参加する。

要するに何が言いたいかって言うと、ベルゲン社交界には厳しいマナーなんてありゃしません。

全裸族は流石に一部を隠して貰ってるけど、一部以外はさらけだしてます。

彼らは飲みすぎると、ポロリします。

王様主催の懇親パーティー、ポロリもあるよ。

字面だけでも大概アレなのだから、その実情足るや目をおおわんばかりである。

俺の即位式も、二次会的にパーティーがあってそれはそれは酷いことになった。

だがまぁ、俺はこの光景が好きなんだけどね。

中世貴族風の男性が、中東風の一団がいつの間にか床に敷いた絨毯に胡座をかいて座り込み、ガハガハ下品に笑いながら酒を飲む。

ちょっと他ではお目にかかれないのではなかろうか?

(前世の)常識的に考えれば、このように価値観が違う集団が共に暮らすと言うのは中々に難しい。

隣の集団が何がしたいのか、自分はいつ彼らの地雷を踏んで、それが元で彼らがこっちに殴りかかってくるかがさっぱり解らない。

そんな状況でお互い仲良くだなんて、怖くて出来ない。

それでも、このベルゲンが一つの国として纏まっているのは一重に皆殺されたくないから。

和気藹々とやってる裏側にそんな重たい背景が見え隠れして、少し憂鬱にもなる。


と、そんな顔した俺に向かって日本の皆さんがやって来た。

「これはこれは、ユーリ陛下。本日はお招き頂き、

ありがとうございます。」

「なに、あのような重要なものを貴国に頂いたのだ。返礼の品はまた贈るとして、日本国の者に直に礼を言う場を設けるのは当たり前だろう。して、どうだ丸山殿、ベルゲンの宴は中々に賑やかだろう?」

「ええ。こういった場にお邪魔させていただく機会はそう多くないものでして、粗相をしでかしはしないかと戦々恐々としておりましたが、驚くほど開放的な雰囲気で、私どももしっかり楽しませて頂いて………」

と、言った所で俺達のすぐ側を裸族の一団が、踊りながら通りすぎていった。

「………うむ、文字通り開放しておる者も居るからな。」

「えぇ、驚きの連続です。でも、私はこの国の、この在り方は素晴らしい物だと感じておりますよ。」

「ふふ、そうか。それは光栄な事だ。」

リップサービスなのかもは知れないが、やはり自分の国を誉められると嬉しくなるもんだなぁ。

「おぉ、ちょうどテレビの方も動画が終わったようだな。しかし、やはり素晴らしい技術であるな。あのように鮮明に過去の光景を記録できるのは。此度の、貴国からの贈り物は、ベルゲン人が日本と言う国を知るための大変貴重な機会をもたらしてくれた。改めて礼を言う。」

「ははっ。ありがとうございます。陛下のお言葉、本国の者達へも確りとお伝えします。」

「うむ、頼んだぞ?」

かくて、宴の夜は賑やかに過ぎて行った………






実は、このテレビが来たよパーティーにはちょっと洒落にならない後日談がついてきた。

折角貰ったテレビをただただ置物にしておくのも勿体ないと思い、時折王宮務めの者に対して日本への理解を深めさせるために、ニュースやらアニメやら映画やらの上映会をやっていたのだが、見ていた彼らを非常にギラつかせるものがあった。

外人さんを、日本びいきに走らせる物の代表例のアニメ………ではない。

むしろそうだったらよかったのだが、ウチの人間が食いついたのは、映画の方だった。


侍が七人出てくる、古典映画の傑作たるアレとか。

ゼロ戦で永遠にゼロする特攻隊員の映画とか………。


前者は、平和な村に乱暴狼藉を働くならず者達がやって来るシュチュエーションが、ベルゲンのトラウマにダイレクトヒット。

後者に関しては、国やそこに暮らす家族に何かを残すために自ら死地に赴く主人公の姿がベルゲン人の琴線にダイレクトヒット。


最終的に、内務卿から多少内容を改編して国内向けのプロパガンタに使う計画が提出された。


以外、俺と内務のやり取りのダイジェスト版をお送りします。


「………著作権とかの利権の問題があるやろ?」

「だったら、正式に申し立てたら良いのでは?むしろ、これを両国の交易物の第一歩としても良いのでは無いでしょうか?」

「………国民にとって有害な創作物だってあるよ?今のウチみたいな多民族国家で、民主主義行けるやん!とかなったら国が割れるよ?」

「ええ、わかっております。あのシステム、あくまでも多数派の意見を国に反映させるためのもの。そのようなシステム、我が国にとっては劇薬でしかありません。」

「………何でこのタイミングなの?」

「実は、軍務卿からの報告によりますとフェールデンが準備していた国境の部隊が解散する様子を見せないそうでして。」

「日本に負けといて、こっちに攻め込む動きがあるの?………あぁ、フェールデン国内向けの国威発揚かぁ。負けっぱなしだと、国民が黙ってないから、ウチを殴ってお茶を濁そうとしていると。日本に攻め込んだ国が直後に軍事行動起こすとか、流石に日本も黙って無いと思うよ?」

「しかし、先の戦争において、日本はフェールデンの内政には干渉しない姿勢を見せております。日本側も、フェールデンの行動を実力で妨害するには大義名分が立たないかと。」

「ウチと日本が安保条約でも結ばんと向こうさんは動けないか………」

「この状況でフェールデンが動くとなると、彼らに負けは許されません。ベルゲンと日本との安全保障がフェールデンが動き出す間に結ばれる可能性は非常に低いかと。」

「こちらは、日本との関係を強化しつつ自力で防衛できる時間を少しでも稼がんといかん訳だな。とはいえ、プロパガンタのみで劇的にウチの防衛力が上がる訳じゃないだろ?」

「その点は、今回の件を事細かに日本に伝えて、ベルゲンがプロパガンタにすがらなくては国がなくなる状況下にあると、日本の国民の情に訴え、安保締結迄の時間を稼ぎます。」

「え?いつの間にそんなパイプ持ったのよ?」

「その点に関しては、外務卿の手腕によるものが大きいかと思われます。彼は今まで、三国から外交と言う仕事をさせてもらえなかっただけの様ですよ?」

「すげぇな、外務卿。」

「全くです。………兎に角、フェールデンが動き出すまでにそう時間は無いでしょう。事は一刻を争います。陛下、ご決断を。」

「………確実に安保が結ばれる訳では無いのが辛いところではあるが、今は他に打てる手も無いと。解った、内務卿、そなたの提案をベルゲン王国国王として承認する。」

「はっ。ありがとうございます。」


かくて、状況は慌ただしく動き始めた。

あの日の宴会の光景を、俺達は未来まで残せるのだろうか………

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