表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/53

我が国の内情を鑑みるに、その提案は受け入れられない-3

ちょっと日本の視点。

ベルゲン王国王都迎賓館にて、頭を抱える一人の日本人がいた。


丸山恭太郎。


日本国遣ベルゲン王国使節団長である。


彼は本来、こうした使節団をやるような立場ではない。

こうした役職は本来彼よりももう少し上の立場の者がやるはずだった。

ベルゲン………と言うよりはこの世界とのファーストコンタクトとなった各国への使節団第一陣において、なんの因果か単身国王と謁見。

他の国と比べて、多くの情報を持ち帰った事から評価が上がり、特例で出世。

部下と給料と負担が増えて増えて困っちゃう状態だ。

しかも、ベルゲン側は彼が来る度に大きな案件の提案をしてくる。必要なのはわかるが、ちょっと手加減して欲しいなって思っちゃう訳で………


大体、準備がいまいち出来ていないのは彼だけの話ではない。

日本国内も絶賛混乱中なのだ。


つい最近、ようやく食糧自給の目処が立ったとはいえ、そこに以前の様な豊かさはない。

飲食店のメニューには、「材料が無いのでお出しできません」とかかれた者が多く見られる。

喫茶店からはコーヒーが消える。

と言うか、大手チェーンは軒並み店をたたんでいたりする。


国外に工場がある企業も大打撃を受けて再建の目処が立たない。

100円ショップとかは、瞬く間に消えて言った。

外資系の企業も青息吐息。

製造業も、材料がなくて仕事が出来ない所が多い。

農家さんは増産増産また増産と国から言われて、超絶ブラック企業の様相を呈している。


とまぁ、そんな状態で国民の不満が溜まらない訳がなく、内閣の支持率は日々下がり続けめでたく政局は不安定になっている。

極左極右政党がそれぞれ勢いを増し、既存の大きな政党内部でも内ゲバの真っ最中。

今、内閣解散から総選挙とかなったらもう衆議院参議院ともにねじれまくって何も出来ない内閣が出来るんじゃないだろうか。

きっと「何も出来内閣」とか呼ばれちゃうに違いない。


それを何とかするべく、日本も割と駆け足で色々なことを進めている。

とにかく、現内閣も全力で国内状況の安定を図っていますよと言うアピールが必要だったりするのだ。


その皺寄せが、丸山のような現場の人間に大きな負担をかけているのだが………


「はぁ。」


丸山は、深いため息をついた。



因みに、もしもその溜め息と原因をベルゲン国王が聞いたら

「そんな状態で内乱も暴動も起きないとかズルい!」とキレるのだけれど。


とはいえ、ため息をついても何も変わりはしない。


丸山は今回の謁見に思いを馳せる。


確かに、あの軍務卿の言うことにも一理ある。

しかしながら、一理しかないとも言える。


確かに、見えている危険に対して思いきった決断を下せないのは、首脳部としてどうなんだ?

と言うのは分かる。


だが、日本にとって理の所はそこだけなのだ。

今思いきった決断すれば、国内の混乱に拍車がかかる。

そして、現状の日本にフェールデン全土をどうこうするだけの体力もない。

フェールデン、以外とデカイ。オーストラリアばりの面積と、推定4億の人口があるのだ。

極端なこと………例えば併合なんかして、日本のリソースをそちらに割けば、日本が沈みかねない。

傀儡化も不味い。現在フェールデンにおける対日感情はすこぶる悪い。

首脳部には、この状態で日本にすり寄ろうとするだけの強かさがあるのだろうが、末端の貴族達までそうでは無いだろう。

傀儡政権に反旗を翻す地方貴族、鎮圧するための軍も、本当に此方についてくれるか分かったものではない。

え?自衛隊が鎮圧担当?

人手が足りない。


最悪、日本の隣に軍閥だらけの常時内戦状態の国家が出来る。

それによって、フェールデンの国力を削ぐと言うのは、日本の国防からすると良いのかもしれないが、そこに手を突っ込むのは得策とは思えない。

異世界に第二の満州国が出来るだなんて、質の悪い冗談だ。


と言うか、一使節団長に国家方針の事を言われても………その、困る。


大体、今回の提案も提案だ。

テレビ頂戴?

代金はベルゲン持ち?

ほんとに払えるの?

電波が届かなかったら、唯の箱だぞ?

衛星打ち上げる必要があるとかなったら、絶対に払えないだろう?

と言うか、ついでのように、条約草案を提案してるんじゃない!

どう考えてもこっちが本命だろう!

まぁ、内閣にぶん投げるけどね!

俺はメッセンジャーでしかないわけだから、ぶん投げるけどね!


………と、丸山さんが悩んだところでどうしようもない。


「………はぁ。」


丸山恭太郎32歳。

帰国してからの己の業務を想像し、再び深いため息をつくのだった。

PVが29000ぐらい行きました!

ありがとうごぜぇます、ありがとうごぜぇます!

今後も本作をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ