我が国は、貴国の脅迫に決して屈しない‐14
唐突に連投。
日本より、日本とフェールデンの戦争(長いから日フェ戦争って呼ばれてる)開戦の報が入ってすぐ、俺は三卿たちとの会議を開いた。
まだ、日本からの使者は宮廷に居る。
「さて諸君に急遽集まってもらったのは、今回の日本からの報告についてだ。これについて、我が国はかの国と国交を結んでいる為、何らかの生命を出す必要があると考える。肯定的であれ、否定的であれ、な。これについて異存はあるかね？」
「「「いえ、異存はありません陛下。」」」
良かった、ここでガンスルーしたいとか言い出す奴は流石に居なかった。
ここで完全なノーアクションを取ったら、わざわざ国交樹立した意味が無いもんね。
「よろしい、であればどの様に対応するべきか、各々の意見を聞きたい。」
「では、先ず私から。」
と言って外務卿が話し出す。
「私は、この件について日本の側にたち、派兵等の積極的な支援を行うべきと考えます。」
やだ、普段地味な君がトップバッターかつ、積極策とか意外。
「ふむ、理由を聞かせてくれ。」
「はい、陛下。まず、今回の日本側の防衛戦ですが、彼らは我々の予想より遥かに上手くフェールデンを退けています。それをかんがみるに、かの国の国内ではフェールデンへの侵攻論に大きく傾いている事でしょう。ここで日本の心象を良くしておいて、来るべき条約締結時に、我々の利となるカードとするべきです。」
まぁ、日本の内情とかに今一番詳しいのは、当たり前だけど外務だもんね。
技術力なんかの差も少しは理解しているだろう。
だけど………
「ふん、これだから軍事の素人は。陛下、軍部としては今回日本の側に立つのは反対であり、この度の逆侵攻をについては否定的な声明を発表するのが良いかと存じ上げます。」
軍部はそうだろなぁ。
下手な支援の中に、海外派兵とかなったら負担が増えるし。
「ふむ、続けたまえ、軍務卿。」
「はっ。そもそも、日本は今回の戦争、本当に勝っているのでしょうか？いや、例え勝って居たとしてもそこまで余力が有るのでしょうか？確かに彼らは驚異的な技術力を保有しているのでしょう。しかしながら、かの国の軍は長らく侵攻を行って居ないと言うではないですか。守りには強いかもしれませんが、攻めることに関しても同様に強さを発揮できるかは甚だ疑問であります。何にせよ、未だ不透明な部分が多いのです。其よりも、気にすべきは、フェールデンであります。」
うん。まぁ、そうね。それも分かる。
「未だ我が国の国境に展開するフェールデン軍は健在であり、ここでフェールデンを刺激すれば国境の軍が更に増強されかねません。ボルストから受けた被害の回復も必要なのです。予測される被害を悪戯に増やせば、我が国の存続に関わる事にもなりましょう。」
「ほう、ではどうする軍務卿？」
「はい、閣下。我が国は、両国に対して軍事的活動への不介入並びに非難声明を発表すべきであります。」
軍部は、あんまり関わりたくない、と。
「こうした声明であれば、恐らくフェールデンは今まで以上に此方を侮り、我々には牙を磨く余裕が生まれます。陛下、何卒ご一考の程を。」
まぁねぇ、実際俺も日本の侵攻が成功するかは半信半疑だ。
侵攻っても、今回のは軍を撃破して「はい、お仕舞い」とはなるまい。
日本にとっての驚異を取り除くのが目的なんだから。
となると、占領地の統治はやる気だろうし。
その統治が上手くいくのかは………ねぇ？
占領地にフェールデン人を残せば、反乱なんかもバリバリでしょうし、占領地の人間を丸っと日本人に入れ換えるとかも現実的に考えて難しい。
例え、コスト的に何とかなってもよく分からない異世界で異国の土地に行って一旗あげたがる日本人がそんなに多いとも思えない。
「………陛下、宜しいでしょうか？」
「内務卿、貴殿の意見を聞かせてくれ。」
「はい。私としては、概ね外務卿の意見に賛成であります。」
「ふむ。」
「しかしながら、ここは、日本の行動を支持する声明の発表にのみ留めるべきです。ここで、日本に付いて派兵を行えば、周囲三国全てが本腰を入れて我が国に剣を向けるでしょう。声明の発表のみを行うことで、周辺国に我が国の内情がそれどころではないことを印象付けつつ、今後の日本との関係についての布石を打つべきかと。束の間であれ、我がベルゲンが力をつける時間を稼ぎ、そこに更に日本から得られる財貨や技術を取り込み安い地盤を構築するべきです。」
ふむ、日本の力を取り込み安くしつつ、時間稼ぎかぁ。
………取り敢えず、日本を支持する声明は出すかなぁ。
軍務卿の意見は、国交樹立直後と言うことを考えると日本に与える負の影響がデカイだろう。
んで、実際の支援となると………流石に派兵も難しい。そもそも、独力でフェールデン沿岸に兵力を送る手段がないし。
かといって、声明だけだと効果が小さすぎる。これじゃ、今まで通りのじり貧だろう。
………何か良い手は無いものか。
