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我が国は、貴国の脅迫に決して屈しない‐11

………ほんとね、ベルゲン以外滅んでくれないかしら。


 俺がこんなアレな感じの思考に陥っているのには訳がある。

今回のね、戦費など損害について。


 え?戦争について詳しく話せって?

無理だよ。だって俺、戦場に行ってないもん。

部下から上がってきた報告に目を通して、それを承認するお仕事しかしてないんだもの。


 え?それでも知りたいって?

しょうがないにゃぁ。

部下から上がってきた報告を、面白おかしく伝えるしか出来ないけど堪忍してね!


 まずは時系列順に話そう。

今回の戦争、一番最初に攻めてきたのはある意味予想通りのボルストでした。

ボルスト神聖帝国ってあれだもん。

ボルスト教って自分達の倫理に従って動いているせいかフットワークが軽い上に、この世界の認識では謎の新興国である『日本国』とその活動領域が被ってないからね。

三国のなかでは一番早く足並み揃えられて、一番リスク少なくウチを攻められる訳だもの。

他二国を出し抜いてベルゲンを支配下に千載一隅のチャンス、これを逃す手はないでしょう。

これを逃すとボルスト国内のタカ派がハッスルして内乱の火種になりかねないとか、色々理由はあるだろうが。

 三国は………と言うか国家ってのは、基本何処も一枚岩とはいかない。

ベルゲンは周辺国の脅威がデカイから比較的マシではあるが、ウチにもやっぱり派閥あるしね。

国内のまとまり具合は

ベルゲン>ボルスト>フェールデン>ダイアス=ロングランド

こんな感じになっております。


 でだ、まずはボルストが送り込んだ200万に対してベルゲンは各村を防衛拠点としてゲリラ的に抵抗を行った。

この抵抗は敵の先鋒に対する嫌がらせの意味合いが大きい。占領した筈の村で夜中に不審火とか起こしちゃう。

 あれだ、敵に対してベトコン的な嫌がらせをしているわけだ。

この時点では、ベルゲンは良いようにやられている形に見える。なにせ初期対応の段階で、国境から恐らく50キロほど敵に押し込まれている。

数字が正確でないのは、この世界の測量技術があまり発達してない為である。

そして、確保された地域を中心にボルストが物資の集積所を作る。

先鋒に関しては現地調達で何とかなるけど、更に侵攻するための後続部隊を維持するには足りない。

この時点で、時間的には2週間ほど。

人的被害に関しては、ベルゲン人150万ほど、ボルスト人がおおよそ30万がバルハラに旅立っている。


 次の段階として、ボルスト後続の200万が更にやってくる。

ここまでは大体予想できる何時ものパターンなのだが、ここから多方面に兵力を展開するか、戦力を一点集中させてこちらの首都を狙うかは毎度違ってくる。

今回は、首都を目指しての進軍だったようだ。

何せ、ベルゲン王国のトップに立っているのはこの俺!ついこの間即位した若干13歳の若造である。

そりゃ、速攻で勝負すれば状況の変化に対応しきれないと予想してこんな手段にも出るだろう。

だが、ベルゲンにはお前らが殴り続けてきたお陰で出来上がった信頼と実績の非常事態対応マニュアルがある。

この時点で、俺は軍部の行動の追認しかしていない。


軍務卿の

「陛下、ボルストが東部タルシア地方を占領しました。これに対応するため、タルシア以西の地域に即応通知の伝令を派遣。並びに常備軍を南北に配置致しました。」

という報告に対して、

「うむ、ご苦労。」

と答える。

このくらいしか仕事してない。


 いやぁ、頼れる仲間が居るってのは良いねぇ(強がり)!

まぁ、専制君主制のわりに王様の権力小さすぎないかなとは思うが、だからと言って俺が口を出せる事は少ない。

よしんば中世の軍事に関して、詳しい前世を歩んでいたとしてもこちらの世界の軍事的な進化は色々違いますし。



 さて、ボルストの動きに話を戻そう。

追加の200万の兵力を足して進行軍370万に膨れ上がったボルスト軍はその圧倒的な数的優位を以って次々に首都への道を制圧………とは行かない。

その進路上にある町や村に関しては、徹底した焦土作戦の指示が出されているためだ。

現地調達を行えなくして、敵の進軍速度を遅らせる。

この時点では、敵の補給路はまだ生かしてあるが既に伸びきっている。

ここで、こちらの常備軍に南北から補給路を挟撃させて敵を締め上げる。

こちらの展開した常備軍の戦力は70万だが、補給路の分断に関しては可能である。

常備軍のうち、足の早い騎兵で構成された5万を既に占領された地域の奪還に向かわせ、他の65万を敵の背後へと向かわせる。

もちろん敵が散らないように、周囲の村や町から兵力の抽出を行って包囲する事も忘れない。

抽出兵力は、おおよそ120万。これを薄く広く配置し、包囲網を完成させる。

後は囲んで殴るだけです。

ここでポイントは、例え敵が白旗を揚げても無視して殲滅すること。

ベルゲン王国としては、ボルスト神聖帝国そのものにダメージを与えることなのでここで敵をボルストへ帰すことはできないのですよ。


国境地域についても同様に周辺地域から兵力を抽出。

こちらの方面へ向かわせた常備軍と共に奪還する。

敵が残している100万が、侵攻部隊の救助に向かう素振りを見せた段階で敵の兵が居ないボルスト領内へ襲撃を行う。

狙うはの国境付近の一般市民であり、決して軍ではない。

こうすることで初めて、敵の100万を5万で牽制する事が出来る。


………こんなことしてるから、お互いに印象最悪になって憎しみの連鎖とやらは断ち切られないのは分かっているが、もはや誰も止まれないのである。

戦争って悲しいね。

こちらから矛を収める気は全くありませんが。


で、敵侵攻軍のトップの首をボルストにデリバリーして、400万の兵士が居なくなったことを伝えた段階で相手から停戦要求の使者が来て、ボルスト方面の状況はおしまいになる。


で、俺を悩ませる今回の被害に関して。

ボルストの進路上にあった街や村が800、その内200は消滅しました。

その内、都市と呼べる物が8箇所であり軍事だけでなく流通的な観点から見ても重要な場所なので

戦費並びに戦災にあった地域の復興費が概算で30億ベルカ。この国の国家予算一年分になる。

死傷者は800万人で、そのうち死者が300万人。ベルゲンの総人口の5%に当たる。

一方面の戦線で、4ヶ月間での被害だ。300万のうちの40万が常備軍の戦死者数である。

確か、地球基準だと部隊の三割が戦えなくなった時点で全滅判定がを受けると聞いたことがある。

その基準で行くと、ボルスト方面の常備軍は全滅判定が出ちゃってる。


………しかも、死者数だけで見ればこちらの判定勝ちのように思えるが、あくまでこちらは防衛を行っただけであり相手に賠償金などを要求する手札がない。

そもそも和睦ではなくて停戦なのだから、賠償金とかそんな話でもない。

停戦期間についても、一応取り決められるがこれが守られたことは殆どない。


「殴るのを止めたのは、あくまで俺たちの都合だからだ。不服ならまだまだ続けて構わんがどうする?ん?まさか文句があるとは言わんだろうな?」

「こ、このくらいにしといてやる!覚えてろよ!!」

要するにこんな感じのやり取りが成されているんですよ。

もちろんベルゲンは後者の側です。


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