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現実

明日世界が終わるなら

明日世界が終わるなら、どれだけ良いことなのだろう。




今日私は振られた。小さい頃からずっと好きだった人に勇気を出して告白して、そして振られた。


振った時のその人の顔は酷いものだった。嫌悪感と憎しみをない交ぜにして、その上から疑問を塗りたくったような怪訝な顔。


そんな顔を人に向けられたのなんて生まれて初めてだし、何より向けてきた相手が悪かった。


私は半ば自暴自棄になってぶっきらぼうに振る舞い、ついには家族や友人とまで喧嘩して、今は一人でいつもの場所に居る。


いつもの場所。私は静かに過ごしたい時に、よくここに来る。


だけどここには沢山の思い出もある。ここには、私を振ったあの人ともたまに来ていた。


一人で夜空に寂しさを投影する。真っ暗な空できらきら輝く星々は、まるで私の心の中のようだ。


真っ黒な私の気持ちの中で、あの人との思い出が疎らに光っている。


あぁ、嫌だなぁ。明日世界が終わればいいのに。




「…本当に自分でいいの?」




ふとそんな声がして振り向くと、そこには私が思いを伝え、そして振ってきた人が息をきらしながら立っていた。




「走ってきたの?」

「だって時間が無いから…」

「もうこんな時間だもんね。別に慌てて来なくてもいいのに…。」

「慌てるよ、こんな日だもん。…本当は家族と過ごすって決めてたのに、いきなりあんなこと言い出してさ。…困ったよ。すごく困った。」

「あれ、今日はなんかあったっけ?」

「ううん、今日は何もないよ。」

「そっか。」

「…好きだよ。君と同じ気持ち。」

「…うん。」

「…居てくれて良かった。」

「こちらこそ。来てくれて良かった。本当なら大声をあげて走り回っていたいくらい。」

「そっち行っていい?」

「喜んで。」




私の好きな人はそっと隣に腰かけて、寂しげな瞳で空を見上げた。

大好きな横顔だ。まさかまたこんな風に眺めていられる時が来るなんて、思ってもみなかった。

明日世界が終わればいいなんて嘘だ。前言撤回、世界はずっと続いていい。




「…明日、世界が終わるんだよね。」

「え?」

「いまいち実感わかなかったけど…ほら。」




指差した先を目で追うと、大きな星がこっちに向かって飛んできている最中だった。

わかってます。クソです。無駄に時間を使わせて申し訳ないから、こんな世界は明日にでも終わればいいです。

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