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体育館の裏ってどこですか?  作者: 佐々木コジロー
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果たし状?ラブレター?

 昼休み、大臣は悶々としながら周囲を見回していた。

 佐藤は構ってくれなかった。

「放課後に話をしよう」

 そういわれていた。佐藤以外に話し相手もいないため、ひたすら放課後を待つしかなかった。

 一方、佐藤は、クラスでもう1人いつもと様子が違う人物を追っていた。

 トイレに入ったところを狙って追いかける。

 相手が個室に入った後、自分も隣の個室に入った。

 今は他に人はいないようだ。

「やっぱりお前だったのか」

 トイレの仕切り越しにも相手が緊張したのが手に取るようにわかった。

「イケメン様は大変だねぇ……。檀上」

「な、何のことだ」

「例のあれ、果たし状が入ってたんだろ?」

「!!」

 声はしなかったが、佐藤は図星だと確信を持った。

「返り討ちにしてやるんだろ。がんばれよ。あと、お前の変化に気づいているのはオレくらいだろうから安心していいぜ」

 佐藤はそういって、トイレから出た。

 檀上は持ってきた封筒を開け、もう一度中を見る。


放課後、体育館の裏に来い

来なかったら、俺の方から出向いてやるから覚悟しろ


 ゴクリと唾をのんだ。

 メールやらSNSが存在するこのご時世、こんなことやる奴いるのか? と笑う余裕すらなかった。


 最後の授業終了のチャイムが鳴り響く。

 担任の先生がすぐに入ってきたが、特に周知もないということで、すぐに解散になった。

 そそくさといなくなる月下美桜。

「ミオさーん!!」

 その後やってくる追っかけ軍団。

「だ! か! ら! もうミオは帰ったわよ!!」

 一蹴される追っかけ軍団。

 そんないつもの光景を見送り、10分後にはクラス内は大臣と佐藤だけになった。

「さて、もう一度見せてみろ」

 佐藤は大臣に例の品を要求した。

「う、うん」

 大臣は机からかわいい封筒を取り出し、佐藤に渡した。

 封筒を開け、中の便箋を取り出す。


入学してからあなたのことがずっと気になっていました。

同じクラスになって2か月経つのにまだ一度も話せていないけど、できたらお付き合いしたいです。

一度2人でお話できますでしょうか。

緊張するので、誰も来ない場所がいいです。

今日の放課後、体育館の裏で待っています。

来てくれるとうれしいです。


「名前を書き忘れるという大ポカをやらかすとはな……」

「うん」

「しかも、なぜお前に……」

「うん」

「しかし……、オレ自身も驚きを隠せないが、これは……、月下美桜、だな」

「え!? そうなの!?」

 大臣が驚きと喜びと困惑が混在したような表情をした。右手が震えている。緊張しているのだろう。

「ああ。日直から日誌を借りて確認したが、この筆跡は彼女だろうな」

 ドクン、ドクン……

 大臣の心臓の鼓動が佐藤にもはっきり聞こえた。

「ヒロオミ?」

「う、うん……」

「せっかくのチャンスなんだ。行ってこいよ」

「う、うん……。

 でも、大丈夫かな?

 何かの間違えじゃないかな……?」

「何言ってるんだ。間違いなくお前の下駄箱に入っていたんだろ? それに、あんなに明確に下駄箱に名前が書いてあるんだから、よほどの馬鹿じゃない限り間違える訳ない。月下美桜がそんな人間に見えるか?」

「う、ううん。そんなことはないと思うけど……」

「だろ?

 大丈夫。行ってこいよ。

 しかし、うらやましいやつめ。後でちゃんと報告しろよな!」

 佐藤はそう言って大臣の背中をボン! と強く叩いた。

「う、うん。わかったよ。行ってくるよ」

 大臣は渋々教室を出て行った。

 佐藤はうんうんと頷きながら大臣を見送ったが、ふとある事実に気づき、眉間にしわを寄せる。

「っていうか、この学校の体育館、構造的に表も裏もないと思うんだが……」

 そうつぶやいて、しばらくうーんと唸っていた。


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