事件発生
翌朝。
まだ登校している生徒がほとんどいない時間に、1年1組の男子生徒の下駄箱に女子生徒が佇んでいた。
緊張した面持ちで周囲を見渡す。
意を決したように鞄から可愛らしい柄の描かれた封筒を取り出し、ある生徒の下駄箱に手をかけようとした……。
「おはようございまーす!!」
少し離れた場所から聞こえる大きな声に驚き、手を鞄に戻す。
どうやら自分にかけられた声ではないようだ。少し安心してふうっと息を吐く。
ただ、足音がこちらに向かっているような気がする。
慌てて目の前の下駄箱を開けて封筒を入れ、駆け足で去っていった。
少し後、徐々に生徒が登校し始めたころ、1年1組の男子生徒の下駄箱に坊主頭の人相の悪い3年生が佇んでいた。
「確か、この辺だったような……」
前日の下校時にしばらく観察していたときの記憶を蘇らせる。
目的の生徒が来る前に済ませなくてはならない。
少し焦った様子を見せながら、意を決したようにズボンのポケットから無骨な封筒を取り出し、ある生徒の下駄箱に手をかけ開いた。
「!!」
既に何か入っている。
取り出してみると、かわいい柄の封筒だ。
フンと鼻を鳴らし、取り出した封筒を下駄箱に入れる。
もう一度場所を確認しようとしたが、視界の端で学年主任の先生が通るのが見えた。
急がなくては。
「いや、確か、こっちか」
かわいい封筒の入った下駄箱の隣に無骨な封筒を叩き込み、走り去っていった。
佐藤が登校すると、前日とは違う意味で大臣の様子がいつもと違うように見えた。
「ヒロオミ、どうしたんだよ? 大丈夫か?」
朝礼前は「別に」とはぐらかされたが、休み時間に問い詰めたら白状した。
「実は朝来たら、下駄箱にこれが入っていたんだ」
大臣は机から封筒を取り出し、佐藤に見せる。
「まじかよ……」




