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体育館の裏ってどこですか?  作者: 佐々木コジロー
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序章

「ヒロオミ、中間テスト前だし早く帰ろうぜ」

「うん」

 都心にある普通科高校、その1年1組の最後部、窓際の席でぶかぶかの制服を着た小柄な生徒、財津大臣ざいつひろおみは唯一の友人、佐藤翔さとうしょうからの誘いを快諾した。

 中間テスト1週間前になり、学校の方針で部活も休止であるため、佐藤も写真部に行かず下校モードだ。大臣はそもそも帰宅部なので通常モードだが。

 鞄を肩にかけて教室を後にする。

 階段を降りようとすると教室を挟んで反対側の廊下から十数人の男子生徒が我先にとお互いを制しながらも、群れとなって押し寄せてきた。

「ミオさーん! 一緒に帰りましょー!!」

 男たちは口々にその子の名前を呼んで教室に入ろうとする。が、お目当ての女子生徒は教室にはもういないようだ。

「もう! あんたたち本当に懲りないわね。ミオはピアノのレッスンがあるからもう帰ったわよ」

 別の女子生徒に一蹴される。

「なにぃ! 一歩出遅れたか!? とはいえ、まだ帰り道のはずだ。おまえら、追うぞ!」

「へい!!」

 有象無象の男たちはリーダー格の一声に従い、また群れをなして走り出す。

 大臣は階段の踊り場で彼らに道を譲った。

「しかし、どう考えてもチャンスがないのに、毎日懲りないねぇ……」

 佐藤が下駄箱で靴を履き替えながらボソッとつぶやいた。

「え? 何でチャンスがないと思うの?」

 近くで聞いていた大臣が聞き返す。

「何でかって? そりゃ簡単さ。

 もはや学年どころか学校でも知らない人がいないといっても過言ではない美女、月下美桜げっかみおだけど、彼女は前に『強くて守ってくれるような人が好み』とか言ってたそうじゃないか。

 あんな輩どもは自分のことをただ追い回すだけで、好みの対象には入らないだろ。

 そう考えると、一途に見守るどこかの男子の方がまだ見込みがありそうに感じるけどな」

 佐藤は意地悪な表情を浮かべながら大臣の方を見る。

 大臣は顔を赤らめながらキョロキョロと周囲を見た。

「ねぇ! それはっ!」

 声を殺して佐藤に反抗する。明らかな焦りようだ。

「ははは。大丈夫。周りにお前を知っているような関係者はいないよ。

 さて、帰ろう。帰ろう」

「う、うん……」

 承諾しながらも大臣はまだ周囲を見回していた。


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